立ち読み広告 2008.3/vol.10-No.12

本当の「愛」の意味を知っていますか?
 1月11日、『広辞苑』の第六版が発売された。前回から10年ぶりの大改訂である。今回の新収項目は約1万。
 どんな言葉が収録されるのかについて、発売前からずいぶん話題になっていた。たとえば「いけ面」「癒し系」「逆切れ」などの現代語、「クレーマー」や「スキミング」などのカタカナ語、「ICタグ」や「ADSL」「ファイアウォール」などのIT用語が収録された。
 なかでも「いけ面」について、「『めん』は『面(顔)』じゃなくて『men』だろう」なんて議論がネット等で交わされた。「めっちゃ」や「さくっと」「うざい」などが、『広辞苑』に収録するほど定着しているのかどうか、なんていう意見もある。いずれにしても、収録する・しないがこれだけ注目されるのも、『広辞苑』の権威を誰もが認めているからだろう。
 発売日、1月11日の朝刊第5面に『広辞苑』の全面広告。これにはうならされた。上半分あまりはドリームズ・カム・トゥルーの吉田美和がマイクを持って歌う横顔の写真。空間部分に大きく「愛」とあり、その下に「には、どういう意味があるんだろう。吉田美和」と続く。下段は「ことばには、意味がある。」のコピーと広辞苑の背表紙ほかのシンプルな構成。
 吉田美和の「愛にはどういう意味があるんだろう」というつぶやきが胸を打つ。
 2007年9月、吉田は事実婚のパートナーだった映像ディレクターの末田健を胚細胞腫瘍で亡くした。また、ドリカムには、大ヒットした『LOVE LOVE LOVE』という曲のほか、たくさんのラブソングがある。その吉田に「愛」という言葉を語らせている。
 読者はこの広告を見た瞬間、吉田と末田の「愛」について考えただろうし、ドリカムのこれまでの数々の曲について思いをはせただろう。写真の中の吉田の声が、読者の頭のなかで聞こえたはずだ。

健闘する紙の辞書

 それはさておき、『広辞苑』は売れ行きも好調だ。版元は初回30万部を予定していたというが、書店からの注文は34万部。ふだんはあまり岩波書店の本を置いていない中小の店でも、『広辞苑』だけは積んでいたりする。
 『広辞苑』第六版発売と前後して、紙の辞書に関する話題も多い。たとえば昨年、中改訂を行った平凡社の『世界大百科事典』全34巻は初版を売り切って重版待ち。新潮社の『新潮日本語漢字辞典』も昨年9月の発売以来、順調に版を重ねている。三省堂は『広辞苑』第六版発売の前日に『三省堂国語辞典』(通称「さんこく」)の第六版を発売したが、これも売れ行き好調。辞書はすっかり電子の時代のように思われていたが、どっこい紙の辞書も健闘している。
 そういえば「立命館メソッド」なるものをご存知だろうか。立命館小学校では1年生から児童に辞書を引かせる授業をしている。とにかくどんどん引かせる。引いたページには付箋を貼る。児童の辞書は付箋で膨らみ、あっという間にボロボロになる。それと比例して、児童の好奇心ややる気は上昇、学力も伸びるというのである。
 紙の辞書は衰退するという見方もあるが、共存共栄していくのではないか。いや、そうあってほしい。
1月11日 朝刊

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