IT弁護士の法律ノート 2008.3/vol.10-No.12

ネット上の違法・有害情報とフィルタリング
 ネット上の違法・有害情報といえば、従来はアダルトサイトや、ネット掲示板による誹謗中傷事件が中心でした。しかし、最近では多様化の一途をたどり、2007年だけを見ても、▽「闇職安サイト」仲間の男3人が愛知県で女性拉致強盗殺人事件を起こして逮捕▽「自殺系サイト」で知り合った自殺志願者3人を快楽目的で殺害した男に対し大阪地裁が3月28日に死刑判決▽「学校裏サイト」で裸の写真を流された上、メールで金品を強要されていた高3生徒が神戸市で自殺し、同級生3人を恐喝未遂容疑で逮捕といった事件が発生し、深刻化しています。
 とはいえ、最も関連事件が多いのは、やはり「出会い系サイト」です。警察庁の統計では、2007年上半期だけで計708人が被害を受け、うち604人が18歳未満の児童でした。検挙全体の76%が児童の性的被害事犯であり、他にも強盗など重要犯罪が発生しています。
 違法情報であれば法的責任を追及することができます。サイバーポルノや名誉毀損のような犯罪であれば処罰が可能です。犯罪とならない場合でも、プライバシー侵害のように、特定の他人の権利を侵害する違法情報については、プロバイダ責任制限法に基づき、発信者側のプロバイダに対し、権利侵害情報の削除を請求することができます。さらに発信者情報の開示を請求して、加害者たる発信者を特定し、損害賠償その他の責任を追及することも可能です。
 これに対し、有害情報でも、違法とまではいえないケースについては法的責任を追及することができません。先に述べた闇職安サイト、自殺系サイト、学校裏サイトも、それによって実際に犯罪が発生した場合はともかく、単に情報を流しているだけの段階では、法の網が及びません。かといって、現に深刻な事件が多発していることを考えると、特に青少年保護の見地から放置できない社会問題となっています。
 実社会の有害図書であれば、各自治体の青少年保護条例に基づく有害図書指定によって、本屋の店主が、有害指定図書にビニールをかけたり、アダルトコーナーに集め、青少年が近付かないよう目を行き届かせることができます。
 ネット上の有害情報も青少年保護の必要性は同じですが、ネットは国境をも越えますので自治体単位の条例では不十分です。それに加え、ネット上の情報は猛スピードで大量更新されますので、いちいち会議を開いて有害図書指定する方法では追いつきません。ネット上にも、青少年のアクセスをブロックする「本屋の店主」に代わる存在が必要です。こうした理由で総務省は違法・有害サイトへのアクセスをブロックするフィルタリングサービスの導入を提唱してきました。しかし、保護者の認知度が低いためか、遅々として普及が進みません。そこで、携帯電話各社は2月から順次、児童が使う携帯電話につき、保護者が不要とする場合を除き、フィルタリングサービスを設定することになりました。今後は過不足のない適正な範囲についてブロックできるようフィルタリング精度を高めること、誤ったブロックを是正できるよう苦情処理を充実すること、そして保護者が選択可能なサービスの幅を広げることが求められます。
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