ojo interview 2008.3/vol.10-No.12

佐野研二郎氏
佐野研二郎氏

 「さあ、いくぜ!」とばかりに、11年勤めた博報堂を退社し、1月11日にMR_DESIGNを立ち上げた。真っ白な空間に大きなテーブルを一台置いたシンプルなオフィスは、仕事に集中するための環境をストイックにデザインしたものだ。
 「裕福な実家を離れて一人暮らしを始めたようで、新鮮な緊張感がありますね。シンプルでクリアでボールドな『男前のデザイン』を作るため、あらためて気合を入れ直しているところです」
 日光江戸村「ニャンまげ」、KDDI「リスモ」、TBS「ブーブ」など、企業やサービスをチャーミングなキャラクターで表現したかと思えば、日本ラグビーフットボール協会、日産「MURANO」など男っぽさを感じさせる仕事も多い。
 「デザインは人格を作ったり、決めたりする仕事だと思った瞬間から悩まなくなりました。佐藤可士和さんが僕の作品集に、『佐野研二郎はいいやつだ。』と書いてくれたんですけど、いい奴がいいモノを作るんじゃないかという自負もあります。やっぱりポジティブな人格を作れば、みんなが好きになってくれますから」
 常に誰もが共有しやすいツボを探して、世の中がリアルに反応するシンプルで強いアイコン作りを心がけている。
 「シンプルにするとは情報を削ることではなくて、情報を圧縮してギューって濃度を高くすることです。特徴がはっきりしていて簡単に言語化できるもののほうが、世の中に伝わりやすいと思います」
 異常な寂しがり屋で、人の中にいないとダメなタイプと自認する。多摩美術大学在学中には全身白タイツの「合格マン」に扮し、入試発表の会場で合格者を祝福したが、生来のサービス精神は健在だ。
 「僕は、ちょっと芸人的なところがあるかもしれませんね。デザインは世の中に出た時に初めて成立するサービス業だと思っていて、人に喜んでもらえないとつまらない。でも、一瞬面白くても使い捨てにされるのではクリエイティブエコに反するので、何年も続く骨太なコミュニケーションを作っていきたいですね」

文/横尾一弘  写真/清水徹

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