IT弁護士の法律ノート 2008.1・2/vol.10-No.10・11

電子メール広告はオプトインの時代へ
 我が国は、世界の中でも早い時期に電子メール広告に対する法規制を行いました。2002年のことです。携帯電話あてに一方的かつ大量に送り付けられる、「出会い系」関連の迷惑メールが社会問題化していたことへの対策でした。
 この時期から既に、迷惑メールが誘う「出会い系」サイトが、今では死語の「メル友殺人事件」など犯罪の温床となっていました。一度に数多く送り付けられてくる迷惑メールによって、携帯電話会社のメールサーバーが作動不能に陥るという事態も頻発していました。
 そのため、この法律では、オプトアウト(受信者からの再送信拒否通知に応じる義務)を義務付けるとともに、再送信拒否通知の送信先として、送信者の身元を表示させる義務を課しました。これと同時に、迷惑メールを判別しやすいように、件名欄に「未承諾広告※」の表示も義務付けています。
 ところが、法律が施行された後も、架空請求メール、ワンクリック詐欺メールなど、迷惑メールは悪質化の一途をたどる一方、送り付けられる量も減少する気配がありません。
 このため、総務省は2005年の法改正によって対策の強化を実施しました。身元表示を偽った送信者に対する罰則を新設するという内容が柱でした。しかし、残念ながら、この改正を活用した検挙は遅々として進められないまま、現在に至っています。
 それでも携帯電話会社やプロバイダーは、ユーザーからの要請に後押しされ、迷惑メールをフィルタリングすることで、押し寄せる迷惑メールをブロックして、何とか急場しのぎで持ちこたえてきました。
 この間、迷惑メールはさらに悪質化・巧妙化しています。コンピューター・ウイルス添付メールを送り付けてくるケースが激増しているからです。これに感染したパソコンは、あたかもゾンビのように、外部からネットを介して操られてしまいます。ボットネットと呼ばれる大量の感染パソコンを編成して、サイバー攻撃を仕掛けたり、さらなる迷惑メール送信の踏み台にされるケースも増加しています。これによって送信元が次々に変化するため、迷惑メールをブロックすることも、次第に困難になっています。迷惑メールの送信は、いわばプロ犯罪化しているのです。
 こうした状況を踏まえて、総務省では新たな法改正による規制強化に向けた検討作業が進められています。その柱となるのが、オプトイン方式の導入です。この方式は、受信者の事前同意をメール送信の条件とするものです。世界の主要な先進国は、既にこの方式に移行しています。まじめなメールビジネス事業者も、以前から会員登録制などの方法で、自主的に事前同意を取得して送信してきました。そのため、この方式が導入されても、まじめな事業者に大きな支障が生じるおそれはなさそうです。
 この方式の導入によって、迷惑メールがどの程度、沈静化するのか、現段階では未知数です。それにしても、迷惑メールが悪質化するたびにまじめな事業者が窮屈になるという悪循環を、そろそろ終わりにしたいものです。
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