CURRENT REPORT 2008.1・2/vol.10-No.10・11

先端材料で多様な価値を創出 「社会の役に立つ」ブランドへ
 社名からは繊維のイメージが強い「東レ」だが、この度、サウジアラビアの大型海水淡水化プラント向けに、海水淡水化用の逆浸透膜納入を受注した。この素材は海水における水の分子だけを通過させて真水に変えるというもので、世界規模で深刻化する水不足問題にも大いに貢献するものだ。このような高付加価値をもった素材の開発で、現在、同社の事業展開は多岐にわたるものとなっている。
 その事業領域とコミュニケーション活動に関する考え方について、宣伝室長の幼方聡子氏に話を聞いた。


東レ株式会社 宣伝室長 幼方聡子氏 ――東レの事業領域は非常に広範ですが
 もともとは1926年「東洋レーヨン」の社名で、化学繊維ビスコースレーヨンのメーカーとして創業した当社ですが、昭和40年代でレーヨンの製造はやめており、現在ではプラスチック・ケミカルや情報通信材料・機器といった非繊維分野の売上高が全体の6割を占める総合化学企業となっています。身近なところでは自動車の部材や携帯電話の液晶画面なども製造しており、そのほかにも、旅客機の機体に使われるカーボンファイバーや遺伝子解析などに使うDNAチップといった、炭素繊維複合材料事業や環境、ライフサイエンス事業も展開しています。
 これは繊維製品メーカーの特徴のひとつでもあるのですが、既存の素材や技術の応用範囲が広く、新たな事業が派生します。実例を挙げると、元々は衣料用だった「中空糸」というストロー状に真ん中に穴が開いている繊維の技術を応用して、微細な穴が開いた膜を開発し、人工腎臓などの医療分野や水処理分野へと拡大していったのです。

――研究開発も重要になりますね
 そうですね。繊維やフィルム、化成品を始めとする特定分野についての研究、技術開発はもちろんですが、将来の収益の柱となるような事業基盤を創出するために、バイオテクノロジーやナノテクノロジー、および両者の融合領域を中心とした先端的な基礎研究にも注力しています。近年の事例では、ナノ積層フィルムという複数の異なるポリマーをナノ単位で積層する製膜技術を世界で初めて開発しました。この技術を駆使したナノ積層フィルムは、従来のフィルムと比べ、非常に破れにくいという特徴を持ち、フラットパネルディスプレーや窓に張る防犯フィルムなどとして実用化されています。

――企業活動の実態を伝えるのはなかなか難しいのでは
 私たちは最終消費財というものをほとんど持っていません。皆さんがご存じの商品は、浄水器の「トレビーノ」や眼鏡ふきの「トレシー」くらいではないでしょうか。
 そういったこともあり、今までマス媒体を使った宣伝活動を大々的にはやってこなかったのですが、2006年秋に中期経営課題「IT-2010」が策定され、8つのプロジェクトのひとつとして、東レおよび東レグループのブランド力向上を目的とした「コーポレートブランド強化プロジェクト」が立ち上がりました。今までの広告宣伝においてはBtoBコミュニケーションがメーンとなっていましたが、高度な研究開発を続けていく上でも人材の確保が必要ですから、今後は一般の方にも我々の多岐にわたっている事業を広く知ってもらう必要があります。
 そこで、読売新聞を使って先端材料で「世の中に」新たな価値を生み出している事例を基に、当社の革新性と創造性を紹介する12回のシリーズ広告を掲載しました。朝刊1面の記事中の小さなスペースでしたが、コアな情報を端的に幅広く紹介できたのではないかと考えています。

――シリーズ広告では環境への配慮もうたわれています
 テレビCMでも同様に先端材料をベースとした東レの環境に対する姿勢や考え方を訴求していますし、今回の新聞広告の中には、より具体的な貢献を紹介しているものもあります。新しい価値の創造を通じて社会に貢献するという私たちの企業理念を、環境分野での取り組みを通じてきちんとお伝えしていくということです。
 もちろん環境にとどまらず、あらゆる事業分野で決して作り手の独りよがりにならない、真に社会の役に立つ素材をつくり続けていくという点は、変わらない私たちの姿勢です。

朝刊1面のシリーズ広告(3.3cm×7.4cm)


(梅木)
取材メモ
 チーム・マイナス6%の一員である東レだが、昨夏、社員の「社長のクールビズ姿が見たい」という一言をきっかけに、それまでネクタイを着用していた榊原定征社長も参加したという。
 それを機にカジュアル・フライデーも導入され、役員会であろうとビジネスパートナーとのアポイントであろうと社内では軽装がルールとなった。コーディネートに困った社員には繊維関連の部署との連携で百貨店、量販店とのタイアップを紹介するなど、トップの積極的な関与で大いに盛り上がったとのこと。
 「環境コミュニケーションには色々な切り口があり、時としてクールビズのような多大な経済効果も生むわけですから、一過性の、単なるスタイルやファッションでは終わらないと思います。また、当社は製造業ですので、図らずも環境に負荷をかけてしまう状況もあります。そういった点でもきちんと継続して考えていきたいですね」と幼方氏は語る。
もどる