立ち読み広告 2007.12/vol.10-No.9

“いい夫婦の日”発行号で「ありがとう」
 11月15日の朝刊第5面に『週刊文春』の全面広告が載った。総合週刊誌、女性週刊誌は毎週広告を載せるけれども、この全面広告はちょっと異色だ。
 まず、美しい! ふつう週刊誌の広告というと、見出しがぎっしりと並んでいる。以前、元『週刊文春』編集長の花田紀凱さんに聞いたところ、法則があるのだそうだ。右端に政治など硬めの記事を、左端に柔らかめの記事を配置する。このバランスがいいときは雑誌の売れ行きもいいのだとか。ところがこの広告には、記事の紹介がまったくない。まん中にぽつんと11月22日号の表紙があって、その下に指輪の写真がある。表紙にはシャンパンのボトルが描かれている。
 「ありがとう、そしてこれからも…。」というコピーには何重もの意味がこめられている。
 まずこれは、和田誠が表紙を書き始めてちょうど30年という「ありがとう」である。「Thanks 1518 Covers」とも書かれているけれども、1518枚とはすごい数だ。描き続けてきた和田誠への「ありがとう」であり、読者に向けて、和田誠からの、そして編集部からの「ありがとう」でもある。
 もうひとつは、同誌が日本ABC協会の部数公査で7期連続総合週刊誌ナンバーワンに輝いたことへの「ありがとう」である。ちなみに07年上期の公査レポートを見ると、『週刊文春』は52万6744部で、2位の『週刊新潮』は47万3550部。

『週刊文春』らしいタイアップ

 さらにもうひとつの「ありがとう」は、11月22日、「いい夫婦の日」に向けての「ありがとう」である。もっとはっきりいうと、夫から妻への「ありがとう」なんだと思う。ヘッドコピーが「ありがとうございます」ではなくて「ありがとう」なのは、夫婦だからである。よく見ると表紙のシャンパンのボトルには、正装したつがいの鳩が描かれている。
 この広告はプラチナ・ジュエリーとのタイアップになっていて「特別な日に、これまで支えてくれた奥様に“ありがとう”の気持ちをこめて、プラチナ・ジュエリーを贈りませんか」なんて書かれている。和田誠・平野レミ夫妻といえば「いい夫婦」の代表みたいな存在だけど、和田さんはレミさんに指輪を贈っただろうか。
 出版業界的な見方をすると、『週刊文春』と「夫婦」の組み合わせが秀逸だ。というのも、総合週刊誌のなかで同誌が伸びたのは、女性読者を意識した誌面づくりをしたからだと言われる。男性ビジネスマン向け週刊誌はヌードグラビアやゴルフ記事、漫画が定番のように並ぶが、『週刊文春』にはそれがない。表紙はイラストだけで、記事の見出しが並んでいない。女性が抵抗感なく手に取れるつくりである。
 ABC公査レポートによると、いま週刊誌は厳しい環境にある。それは『週刊文春』だって例外ではない。複数の週刊誌の幹部が「スクープが部数につながらない」と嘆いていた。10年前、20年前とは、記事に対する読者の反応が違う。速報性や他メディアとの競合という問題は大きい。「夫婦」で、あるいは家庭の中でどう読まれるかを考えていくことは、状況を打破する糸口となる。

11月15日 朝刊

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