IT弁護士の法律ノート 2007.10/vol.10-No.7

漫画やキャラクターの著作権とは
 携帯電話やネットが普及した現在でも、わが国の漫画には多くのファンが存在しており、これからのコンテンツ産業をリードすべき役割が期待されています。そこで今回は、漫画をめぐる著作権問題を取り上げてみます。
 一般に漫画そのものが美術の著作物に該当することは、今日、異論がありません。
 これに対して、具体的な漫画を離れ、登場人物のキャラクターそのものが著作権保護の対象になるかどうかについては、議論があります。
 ポパイ・ネクタイ事件の最高裁平成9年7月17日判決は、キャラクターとは「漫画の具体的表現から昇華した登場人物の人格ともいうべき抽象的概念」であると定義しています。この判決は、一定の名称、容貌、役割等の特徴を有する登場人物が反復して描かれている1話完結形式の連載漫画では、当該登場人物が描かれた各回の漫画それぞれが著作物に当たり、登場人物のキャラクターをもって著作物とはいえないとしました。キャラクターは具体的表現そのものではなく、それ自体が思想または感情を創作的に表現したといえないことを、理由としています。
 この判決は、連載漫画の各回の関係についても触れています。1話完結形式の連載漫画では、後続の漫画は、先行する漫画を原著作物とする二次的著作物となるとしています。後続の漫画は、先行する漫画と基本的な発想、設定のほか、主人公を始めとする主要な登場人物の容貌、性格等の特徴が同じで、これに新たな筋書きを付するとともに、新たな登場人物を追加するなどして作成されるのが通常なので、後続の漫画は、先行する漫画の翻案となるからです。
 二次的著作物の著作権は、二次的著作物で新たに付与された創作的部分のみに生じますが、著作権の保護期間は、個々の著作物ごとに独立して進行します。このため、前述の最高裁判決は、後続の漫画に登場する人物が、先行する漫画の登場人物と同一である限り、当該登場人物については、最初に掲載された漫画の著作権の保護期間によるベきであって、その保護期間が満了した場合には、後続の漫画の著作権の保護期間が満了前でも、当該登場人物について著作権を主張できないと判示しています。
 漫画と原作の関係が問題となった事例もあります。Aを原作者としてBが描いた漫画は一般に後者が前者の二次的著作物となります。原作者Aの権利は、二次的著作物全体、すなわち、原著作物の創作性に依拠してそれを引き継ぐ部分だけでなく、二次的著作物の著作者Bの独自の創作性のみが発揮されている部分にも及びます(キャンディ・キャンディ事件の東京高裁平成12年3月30日判決)。両者の区別が現実には困難・不可能なことが多く、この区別を要求すると権利関係が著しく不安定になること、二次的著作物である以上、厳格には、それを形成する要素(部分)で原著作物の創作性に依拠しないものはあり得ないとみることも可能であることを、その理由としています。同事件の最高裁平成13年10月25日判決も、これを支持しています。したがって、漫画の登場人物を利用しようとするときは、漫画家だけでなく、原作者からも許諾を得ておく必要があります。
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