From Overseas - London 2007.9/vol.10-No.6

卵と広告は体に悪い?
 「卵はコレステロールが増えるから食べ過ぎちゃダメよ」と母親に言われた覚えがある。しかし、2007年9月に創刊60周年を迎える「英国栄養学ジャーナル」(2006年96巻)に掲載された論文によると、「血清コレステロール値を低下させ、心筋梗塞発症リスクを妨げるために、卵の摂取制限が推奨されてきた。(中略)総コレステロール値は確実に心筋梗塞発症リスクに結びついているものの、卵の摂取量と心筋梗塞発症リスクの間に関連性はない」そうだ。論文を発表したのは日本の厚生労働省研究班である。
 厚生労働省を信じるにせよ、私の母親を信じるにせよ、1日に1個や2個の卵を食べる分には何の問題もないというのが一般的な考え方だろう。ところが、6月下旬、イギリスで卵の広告のテレビ出稿が差し止められた。
 広告を出稿しようとしたのは業界団体の英エッグ・インフォメーション・サービス(BEIS)で、差し止めたのはテレビ広告の標準化機構である放送広告クリアランス・センター。同センターは、メディアと情報通信を監督する機関であるオフコムが設置したもので、すべてのテレビ広告はここの事前審査を通過しなければならない。
 広告は、「卵は安い」「朝食に卵を」「卵はたんぱく質がいっぱい」などのメッセージをユーモア交じりに伝え、最後は「卵を食べて仕事に行こう」というスローガンで終わる。1950年代に大ヒットしたシリーズ広告のリバイバルだ。今回のキャンペーンはこの広告と、卵の品質を保証する「ライオン・マーク」の誕生から50年を記念して企画されたもので、その意図にも広告内容にもまったく問題を感じさせない。
 「毎朝卵を食べることは、バランスの取れた食生活とは言えない」という差し止め理由には疑問の声が多いが、バランスの取れた食生活、塩分・脂肪を過剰摂取しない食生活の推進など、昨今導入および改訂された、健康に関するガイドラインに反するそうだ。
 もともとは、肥満人口の減少を目的とし、肥満を助長する食品をターゲットに導入されたガイドラインだが、想定されていなかった食品にも影響が出ることになった。つまり、食品広告にとって、テレビが窮屈な媒体になってきている。
 特に窮屈に感じているのは菓子や清涼飲料水など、主に児童をターゲットにしている業界だ。実際、今年の4月1日以降、9歳以下を対象とした番組の中での広告が禁止となり、同様の規制はほかのメディアにも広げられている。テレビについては、来年1月から対象年齢が16歳まで引き上げられる予定になっている。
 子供向けに広告をすることが難しくなっていることは、現在、イギリス広告業界における最大の関心事である。高級紙「ガーディアン」によると、ロンドンで行われた業界向けセミナー「親と子供両方に対して効果的でかつ道徳的なキャンペーンを作成する方法」には、マクドナルド、コカ・コーラなど世界を代表するブランドから100人以上の参加があった。参加費が、1日で600ポンド(約15万円)以上だったにもかかわらず、である。
 テレビから締め出されることになった広告費が向かっているメディアはインターネットだ。多くのブランドが、既に規制がかかっている広告ではなく、自社サイトの中でのマーケティング活動を開始している。対価を払って広告枠に露出をしない限り、広告とは見なされないためだ。
 特に多いコンテンツはゲーム。例えば、人気清涼飲料水「アイアンブル」のサイトには、のどの渇いた女性に「アイアンブル」をうまく飲ませるゲームや、テーマに応じた写真を投稿し、月間で最大得票数を集めた人に飲料1か月分が贈られるなどのサービスがある。また、グミ菓子「ハリボー」は、シューティング・ゲームのほか、CMを見ることのできるバーチャル劇場を設置するなどしている。
 「ガーディアン」の記事によると、小学生2,800人にインタビューをしたところ、43%が「インターネットで広告を見たか、その商品に関するゲームを行ったことがある場合、その商品を買うか、今まで以上に摂取すると思う」と答えたそうだ。つまり、効果があるということのようだ。
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