From Overseas - NewYork 2007.7・8/vol.10-No.4・5

埋もれていた巨大マーケットの米団塊世代
 米国の「団塊世代」というと、あまりピンと来ない方も多いのではないだろうか。1946〜1964年生まれの彼らは、ベトナム戦争とそれに対する反戦活動、ヒッピー文化、エイズ問題といった社会現象を経験し、今や60歳前後のリタイア世代に差しかかりつつある。日本では、大きな貯蓄額と退職金が期待できる団塊世代をターゲットとした市場が拡大しつつあるが、米国では意外にも、つい最近まで彼らは全くと言っていいほど注目されてこなかった。
 米国におけるマーケティングでは、訴求の対象とするのは18〜49歳までとの考えが根強い。50歳過ぎ、ましてやリタイア世代は美容にも食事にも興味がなく、旅行や買い物にも出かけない、完全に「消費をしない層」ととらえられてきたのである。ダウ・ジョーンズ傘下の投資情報誌バロンズでさえ、「広告主にとって50歳以上の人々は、家族団らんのクリスマスディナーに飛び込みで訪れる、迷惑な伯父さん夫婦のようなものだ」と書いている。
 ユニリーバが2005年に「団塊世代リサーチプロジェクト」を立ち上げた時にも、広告会社の若いマーケターをはじめ、同社役員会からも大きな非難が寄せられた。しかし、データを蓄積し、団塊世代を4つのタイプに分類して消費行動を調べたところ(表参照)、有望な訴求対象であることが明らかになり、近年急に注目を集めつつある。また、再就職や再就学したり、ボランティア活動やスポーツを始めたりするなど、「それまでのリタイア世代とは間違いなく異なる第二の人生を歩む」(GfKカスタマーリサーチ)と見られるうえ、彼らの消費金額は年間1.7兆ドル(約204兆円)にのぼるとさえ言われている(アドエイジ誌)。
 しかし、団塊世代向けにマーケティングを行った経験がないマーケターがほとんどのため、様々な場面において試行錯誤が始まっている。雑誌「スモールビジネスサクセスマガジン」は、対団塊世代マーケティングにおいて、初歩ともいえる注意事項を以下のように紹介している。
●年齢を意識させるな
広告文にせよセールストークにせよ、少しでも中高年向けであることをにおわせると、彼らは拒否反応を示す。
●見やすく、読みやすいデザインを
広告やパッケージのデザインを見やすくする。彼らが瞬時に理解できないものは、意識の外に置かれてしまう。
●営業担当者に厳守させる点は
まず敬意を持って接し、時間をかける覚悟を持つこと。そして、若い介添者がいたとしても、その人物に対して説明を始めたりしないこと。常に最年長者と話すべき。
●広告メディアは慎重に選べ
彼らの生活にすでに密着したメディアを使う。ただし、インターネットは重要。外出せずに自宅で使えるため、間違いなく彼らにリーチする媒体である。
 意外だが、米国の団塊世代には、インターネットが有効である。米国退職者協会(AARP)とリサーチ会社カンターが共同で行った調査によると、団塊世代約7,600万人のうち、実に6,300万人が日常的にインターネットを使用し、4,400万人がオンラインショッピングを行い、2,500万人が購入前情報収集にインターネットを利用している。オンラインショッピングを行う割合は、なんと1965〜1988年生まれの「ジェネレーションX」とほぼ同じである。
 彼らは職場にコンピューターが初めて導入された80年代に第一線だった世代であり、インターネットを自在に使いこなしている。試しにAARPのホームページ(http://www.aarp.org/)をのぞいてみるといい。旅行や健康、各種学習に関する情報から、音楽ダウンロードやゲームまで用意されており、その充実ぶりに驚かされることだろう。


米国団塊世代の消費行動別分類(ユニリーバ)
分類 「賢い消費者型」 「スケジュール優先型」 「質実剛健型」 「質素で孤独型」
全体に占める割合 34% 28% 22% 16%
興味を示す消費対象 特別限定品 ちょっと背伸びした
高級品
ディスカウント品 コンビニ系商品
消費の特徴 裕福で、買い物上手 忙しい生活に合わせて ウォルマートで
まとめ買い
ブランドや値段を
気にしない
ライフスタイル スポーツや文化的イベントに興味がある
都市生活者
それまでの人生は
子供中心
環境への意識が高い
保守的で信心深い
アウトドアが大好き
収入が少なく、孤独
買い物の頻度 週末に加え、2日に一度 週末に加え、3日に一度 週末に1週間分買う 週末に加え、4日に一度
(ユニリーバの主力である)
パッケージ商品への消費額
年間3,510ドル
(約421,200円)
年間3,552ドル
(約426,240円)
年間4,055ドル
(約486,600円)
年間4,041ドル
(約484,920円)


(6月10日)
もどる