Creativeが生まれる場所 2007.5/vol.10-No.2

桑田佳祐を起用して日本独自の広告展開
福島 慶一郎氏 斉藤 佳津枝氏 加藤 聡氏
福島:1967年生まれ。東京学芸大学卒業後、マッキャンエリクソン博報堂入社。2003年からオグルヴィ・アンド・メイザー・ジャパン。ACC、NYフェスティバルなどを受賞。
斉藤:1972年生まれ。化粧品メーカー制作部、広告制作会社を経て、2004年オグルヴィ・アンド・メイザー・ジャパン入社。2003年度TCC新人賞受賞。
加藤:1970年生まれ。武蔵野美術大学卒業。2000年オグルヴィ・アンド・メイザー・ジャパンに。ノースウエスト航空、Big issueなど担当。読売広告大賞、朝日広告賞など受賞。
 アメリカン・エキスプレス(アメックス)は、今年3月から「MORE THAN JUST A CARD」キャンペーンを世界に先駆け日本で開始した。ミュージシャンの桑田佳祐氏を起用して、新たなアメックスの世界観を打ち出している。テレビCMでは南の島で開放感にあふれる桑田氏を描き、新聞広告とは対照的な表現だ。ビジュアルやコピーに込められた思いは何か、3人のクリエイターに聞いた。

――アメックスの広告キャンペーンは前回は渡辺謙さんでしたね。今回桑田佳祐さんを起用したというのは?
 福島 渡辺謙さんは「MY LIFE MY CARD」キャンペーンの流れでのキャスティングだったんですね。クリエイティブは日本と本国の共同でアイデアを出し合ったのですが、キャスティングや制作自体は本国主導で進めたものでした。
 今回、新しいキャンペーンが始まるに当たり、桑田佳祐さんを起用して、制作自体も日本主導で行いました。クライアントも含めて、やっぱり日本独自の表現でやっていきたいという思いがあったんです。
 桑田さんは非常に才能のあるトップミュージシャンで、幅広い年齢層に愛されている。その親しみやすいキャラクターが今回のコンセプトにぴったりだと思ったんです。

――「MORE THAN JUST A CARD」キャンペーンは日本独自のものですか?
 福島 「MORE THAN JUST A CARD」というコンセプトは世界共通のもので、キャンペーンは世界に先駆けて日本で最初にスタートしました。
 前回の「MY LIFE MY CARD」キャンペーンではプロゴルファーのタイガー・ウッズやサッカー監督のホセ・モウリーニョなど世界の著名人も起用して、こだわりのある人たちのためのカードだというブランディングの要素が強かったんですね。渡辺さんもハリウッドで活躍する数少ない日本人俳優というのが起用の一つの理由でした。
 それに対して、今回の「MORE THAN JUST A CARD」キャンペーンでは、実際カードが何をしてくれるかという点に着目しています。アメックスには、例えば、空港からの手荷物無料宅配サービスや保険についてのサポート・サービスなど、カードメンバーしか受けられない優れたサービスや特典があるんですが、そういうことを「特別」というキーワードに込めて、より消費者に近いところでコミュニケーションしていきたかったんです。

広告表現へのこだわり

――今回のキャンペーンの「MORE THAN JUST A CARD」というタグラインですが、日本語では「この一枚だから、できること。」となっていますね。
 斉藤 直訳すると「カード以上のカード」になるわけですが、それだと伝わりにくいですよね。意外と英語がわからないという前提で考える方がよかったりするんです(笑)。ただオリジナルからあまり離れないように意識はしました。
 加藤 英語的には「JUST」っていうところに意味合いがあるんですね。だけど、それは日本人にはなかなか理解しづらいニュアンスだと思うんです。言語の違いなので、それをどういうふうに日本語に置き換えて表現するか。
 斉藤 英語の表現の中から最もコアな部分を抽出して、それをどうやって柔らかい言葉で表現するか、という点が一番苦労したところです。

――テレビCMは映画監督の市川準さんが撮影されていますが、新聞広告とはイメージが違いますね。

 加藤 前回の渡辺謙さんの時のビジュアルは絵画的な作りだったんですが、今回のビジュアルに関してもそれはすごく意識しましたね。
 桑田さんが、旅行先の南国で、特別なもてなしを受けてインスピレーションがわく世界を描いている。新聞広告も、そのインスピレーションがわく瞬間を描いたものなんです。媒体が異なるので、表現が違いますが、基本的な考えは同じなんです。
 ただ、CMの世界観であれば、バックはもっとスカッと青空が抜けていて、海はエメラルドグリーンという美しい世界になると思うんですけど、それをプリントにするとあまりに普通過ぎてしまう。少し違うビジュアルにしたかったんですね。写真も合成したのは水しぶきだけで、背景も含めて一発撮りなんです。
 福島 CMの表現は、ムービーだからこそ成立する世界観だと思うんです。ですからCMの世界観をそのままプリントに持ち込んでも、目をひかないと思いました。いつもの桑田さんなんだけど、少し違うものにしたかった。そこであまり説明的なビジュアルよりも、広告を見た人に何かを感じてもらって、なおかつブランドスケールとか、プレミアム感をだしていきたかったんです。

九州版では機能訴求も

――九州地区ではクリエイティブの違う広告を掲載していますね。
 福島 はい。九州地区では先行して別のメッセージを訴求しました。新聞だけではなく、テレビCMも同時に制作しているんです。
 全国版では、「一枚のカードが、僕を「特別」にしてくれる。」というキャッチフレーズにあるように、桑田さんの体験を通してアメックスのカードメンバーだからこそ手に入れることのできるサービスやステイタスを表現しました。
 一方、九州版ではカードが持つ機能を訴求しました。消費者の中には、アメックスは、海外には強いけど、使える場所が限られている、と思っている人もいます。実はそんなことはなくて、幅広く使えるんですね。そういう消費者の利便性を訴えていきたかった。「僕は日本中どこへ行くときも、この一枚。」というキャッチフレーズにはそういう意味が込められています。
 CMでは京都の旅館や秋田のきりたんぽ屋さんを訪れて、桑田さんと現地の人との温かいコミュニケーションを描いているんですけど、やはりそれをプリントに持ち込んでも、普通のビジュアルになると思いましたし、全国幅広く使えるという訴求性が希薄になってしまうと思いました。
 加藤 九州版の新聞広告では、日本全国のランドマークを使ってアートを意識した作品を心掛けました。北は北海道の時計台、南は沖縄のシーサー。東京タワーや横浜中華街、五重の塔や道頓堀などなど。桜や紅葉もあって四季も織り込み、インパクトのあるビジュアルを意識しました。

――今後、どのような展開を考えていますか。
 福島 今回の「MORE THAN JUST A CARD」キャンペーンは日本で始まったばかりです。
 今後は、各国の展開などから刺激を受けて、よりいいものを生み出して行きたいと思っています。

3月8日 朝刊(東京・大阪本社版) 3月8日 朝刊(西部本社版)

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