特集 2006.9/vol.9-No.6

今、なぜ、企業広告なのか?
新聞社との共同事業を通じて企業の取り組みを紹介する

 総合商社である三菱商事は、典型的なBtoB企業だ。企業の知名度の高さは、言うまでもない。三菱商事が取り組む企業広告とは、どんなものなのだろうか。


――三菱商事が一般紙で企業広告を始めたのは2003年からと聞いていますが。
 一般的にBtoB企業は最終消費財を持っていないため、生活者とのつながりが直接なく、一般向けの広告とは縁遠いところがあります。総合商社である三菱商事も、生活者とのダイレクトな接点は少なく、大半が事業投資先を介した結びつきとなっています。KFC(ケンタッキーフライドチキン)やLAWSON(ローソン)などがその代表的な例です。
 しかし、個人投資家のすそ野が広がってきましたし、CSR(企業の社会的責任)が問われてきているようにステークホルダーも生活者の視点で企業をとらえ始めています。三菱商事はどのような社会的存在であるのか。企業の守るべき価値観を伝えることが大切な時代になってきたと思います。それが、一般紙に広告を出稿し始めた理由です。

「そこはかとない共感」を得る


――個人投資家のすそ野が広がったと言われましたが、IRが目的というわけではない?
 新聞紙上で財務関係の記事はよく紹介されていますし、IR情報が必要な方にはホームページでも公開しています。
 1人1人のステークホルダーは、生活者としての価値観をより大切にしてきています。ステークホルダーには、株主や投資家はもちろんですが、取引先や社員も含まれます。こうしたステークホルダー全体に、生活者目線でメッセージを届けることが、無形の資産であるコーポレートブランドの価値を高めるためにも重要になってきていると思います。こうした地道な活動の積み重ねによって、社会から「そこはかとない共感」が得られれば喜ばしいことだと思っています。自己主張の強い表現は、三菱商事の企業体質にも合わないと思います。

ブランドシンボルは社員


――企業広告で使われているメディアは?
 新聞媒体が中心です。最近、「地球環境」にテーマを絞ったタイアップ広告を、ナショナルジオグラフィックやソトコトといった雑誌で展開しています。幅広いステークホルダーに訴求する企業広告とは異なり、影響力のあるオピニオンリーダーを対象として、周囲への波及効果を狙っています。

――印刷媒体で企業広告を展開しているのは、なぜですか。
 三菱商事の場合、知名度はおおむね築かれているので、広告に即効効果は求めていません。地道に「三菱商事らしさ」が伝わる広告で、好意的なイメージや評判を醸成し、企業活動が円滑に進められる環境を整備することを目的としています。そのためには、メッセージをきちんと伝えられる印刷媒体が適していると思います。
 また、各媒体の特性や掲載する時期を考慮して、訴求テーマを変えて企業広告を展開していますが、共通しているのは社員に焦点を当てることです。生活者と直接つながる商品を持たない三菱商事は、社員がキープレーヤーであり、商品に代わるコーポレートブランドのシンボルだと考えています。また、広告に登場する社員は、取材を受けることで自ら取り組んでいるプロジェクトの意義を振り返るきっかけにもなっています。ですから、取材も会議室ではなく、仕事の現場で行うよう心がけています。

新聞社との共同事業という形で

――三菱商事では、「海外プロジェクト探検隊」という読売新聞との共同事業を展開されていますね。
 高校生が三菱商事の海外プロジェクトの現場を訪問するという新聞社主催の体験プログラムですが、三菱商事の理念や企業活動を、言葉だけではなく身をもって体験してもらう、BtoB企業である三菱商事の社員が生活者と直接対面するユニークな企画だと思います。
 総合商社の事業は全世界を相手にしていますし、ラーメンからロケットまでと言われるように事業領域も幅広い。プロジェクトの内容もさまざまで、一般の生活者には理解しづらい面を持っています。そのため、中長期視点で、三菱商事の取り組みが浸透していくような活動ができないだろうかと考えていました。そのような時に新聞社と共同で立ち上げたのが、この「海外プロジェクト探検隊」です。
 社会に出て働くことを意識しはじめる年代の高校生たちが、三菱商事の海外プロジェクトを訪問して、自分の目や耳で見聞きした体験談をヨミウリオンラインで発表。また、同行取材した新聞社の記者が、ニュートラルな視点から本紙の記事広告で、高校生たちが体験してきたことを報告する。一方的な情報提供だけでなく、高校生たちの体験談を通じて、生活者に三菱商事が海外でどんなプロジェクトに取り組んでいるのか感じ取ってもらえればと思っています。
 プロジェクトを主管する営業グループと広報部の社員が体験プログラムを企画して、現地社員が案内役として、実際の体験プログラムを取り仕切っています。ブランドシンボルである社員が、三菱商事の理念や企業活動を、身をもって体現する活動に取り組んでいます。
 第1回はブルネイだったのですが、現地社員の提案で大自然を体験するツアーも実施しました。こうした社員の参加意識を促すインナー効果もあり、年2回行われる恒例のプログラムとして社内でも浸透していって欲しいと思います。総合学習という点で、社会貢献としての色彩を持った意義のある企画だと感じています。
 この8月の上海で、3回目の実施となりましたが、こうした活動は、長く続けないと意味がありません。その中で、三菱商事のファンが少しずつ広がっていってくれたらと思います。

2005年9月30日 朝刊 ブルネイLNGプロジェクト 2006年3月6日 朝刊 タイ自動車プロジェクト 2006年6月12日 朝刊 中国繊維・物流プロジェクト(募集紙面)




B to B 企業に企業広告が必要な理由
村田製作所 広報部部長 大島幸男氏→


お客様と社員の意識を変える企業広告
トンボ鉛筆 代表取締役社長 小川晃弘氏→


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東京経済大学 コミュニケーション学部助教授 駒橋恵子氏→


「会社の値段を高める」という企業広告の役割
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