立ち読み広告 2006.1・2/vol.8-No.10・11

軽やかで、よろしかったでしょうか?

 11月6日の朝刊を開くと、真っ赤なビックリマークが目に飛び込んできた。白抜きで、「日本語が、大問題。」とある。大修館書店の全ページカラー広告だ。
 2005年は同社の『問題な日本語』がベストセラーになった。取次店トーハンの年間ランキングでも第9位。
 
「おかしい」を受容する日本語本

 『問題な日本語』はいろいろな意味で現代を象徴している。まず、99年の『日本語練習帳』(大野晋著、岩波書店刊)以来ずっと続いている日本語ブーム。
 しかもこの本は、『明鏡国語辞典』編集部に寄せられた、全国の高校の国語教師からの質問と、編者たちの回答でできている。いま話題の『生協の白石さん』(講談社刊)は、大学生協への投書と回答を集めたものだが、『問題な日本語』はそれを先取りしているのだ。
 そして1番の特徴は、「おかしいな」と感じる日本語表現について、「これは間違い。使っちゃダメ」と硬直的でないところ。語源や意味の変遷を解説し、なぜこうした変化や誤用が生じたのかを考える。言葉は使う人のものであり、時代によって変化するものだ、という基本的なスタンスがある。
 なにしろ『問題な日本語』という書名からしてちょっと変。編著者の北原保雄は「味な使い方だと思うが、問題のある表現である」とまえがきで述べている。ついでにいうなら、第2弾である『続弾! 問題な日本語』の「続弾」も辞書にはない造語。こういうしゃれっ気は、今までの日本語本にあまりなかった。

微妙な気持ちをとらえた広告

 『問題な日本語』、『続弾! 問題な日本語』で取り上げられている「おかしな」言い回しや疑問の一部が、この全ページ広告の下の方に並んでいる。ファミレスやコンビニでよく耳にする「ご注文は以上でよろしかったでしょうか」「1000円からお預かりします」。新入社員がよく使う「わたし的には全然OKです」「普通においしい」。
 「この数年、新聞の読書欄や作家のエッセーなどでたびたび話題になる問題表現である。いちいち「キミの言葉遣いは間違っとるよ」と注意するのもなんだし、だけど聞き流したくもない。そのへんの微妙な気持ちを、この広告はよくとらえている。

国語辞典もイメチェンする

 ところでこの広告には、『明鏡国語辞典[携帯版]』、『問題な日本語』、『続弾! 問題な日本語』、『クイズ日本語王』の4点が載っているのだが、じつは〈『明鏡国語辞典携帯版』新装発刊記念「もっと明鏡」キャンペーン みんなで作ろう国語辞典! 辞書に載せたい言葉 大募集!〉という公募告知の広告でもあり、たんなる出版広告ではない。 ところでこの広告には、『明鏡国語辞典[携帯版]』、『問題な日本語』、『続弾! 問題な日本語』、『クイズ日本語王』の4点が載っているのだが、じつは〈『明鏡国語辞典携帯版』新装発刊記念「もっと明鏡」キャンペーン みんなで作ろう国語辞典! 辞書に載せたい言葉 大募集!〉という公募告知の広告でもあり、たんなる出版広告ではない。
 この公募もしゃれている。国語辞典に載せたい言葉の公募ならありそうだが、意味と例文も募集しているのである。しかも、まだ辞書に載っていない言葉だけでなく、すでに載っている言葉に、新しい意味や用法をつけ加えるのも可だという。
 国語辞典というと古くさいイメージがあるかもしれない。しかし、言葉は常に変化し続けるし、言葉に対する私たちの感覚も変化し続ける。つまり、言葉は生き物であり、常に新しい。この広告は軽やかだけど、示唆しているものは深くて大きい。  

11月6日 朝刊 大修館書店
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