From Overseas - London 2006.1・2/vol.8-No.10・11

「ベルリナー判」は「タブロイド」を超えるか
12月5日 イギリス高級4紙(右から「インディペンデント」「タイムズ」「ガーディアン」「デイリー・テレグラフ」)
 英高級紙の「ガーディアン」が9月12日に判型を変更してからおよそ3か月がたった。
 イギリス紙の判型変更の流れは、2003年の9月末に始まった。やはり高級紙の「インディペンデント」が、それまで日本の新聞の大きさに近いブロードシートだった判型を、半分の大きさのタブロイドに変更。従来、「タブロイド」という言葉はいわゆる「ゴシップ紙」を指し示す言葉でもあったため、読者に受け入れられるのか不安視されていたが、通勤者や女性を中心に好評を博し、タブロイド判発行開始時に218,567部だった部数は、1年後の2004年9月には264,594部と、20%を超える増加を記録した。これに2か月遅れで続いたのが「タイムズ」で、判型を切り替えた2003年11月に622,102部だった部数は1年で約10%増加し、翌年同月には682,109部となった。
 よって、「インディペンデント」が判型変更を断行してから、イギリス高級紙業界には「ブロードシート」と「タブロイド」の2つの判型が並存していた。これにもう1種類の判型を加えることとなったのが、冒頭の「ガーディアン」である。
 「ガーディアン」の判型は「ベルリナー判」と呼ばれる。大きさは縦約47センチ、横約31センチで、従来の判型より幾分縦に長い。従来の2判型の中間に位置するため、コンパクトさでタブロイドに、紙面のインパクトではブロードシートに劣る。よって、刊行開始前は否定的な予測も多かったが、いざふたを開けてみると、9月12日の部数は前月平均比40%の上昇で約46万部と、初日の物珍しさを差し引いても、予想を大幅に上回る数値となった。その後も高い部数を維持し、10月も平均部数が40万部を超えた。2003年4月以来、同紙の部数は36万部から39万部程度で推移しており、40万部突破は大きな成果と言えるだろう。この部数増加は、ベルリナー化だけによるものではなく、同時に現代的でインパクトを重視する方向に紙面デザインの変更を行った結果だと考えられている。例えば、判型変更以降、同紙のセンターには連日2連版で報道写真が掲載されており、息をのむような日も多い。
 さて、WAN(世界新聞協会)などが、イギリスの判型変更と部数上昇を大々的に伝えたため、この流れはイギリスに端を発したものと認識されている。しかし、実際はイギリスに先駆けて紙面の小型化を行い、成功を収めた新聞がある。スイスの「ル・マルタン」だ。
 この新聞は、ブロードシートだった判型を2001年にタブロイド化し、これに伴い広告料金の変更を行った。サイズを半分にしたことで、広告料金も半分にすべきかと葛藤したが、最終的に設定した料金はブロードシート時代の80%。「スペースが小さくなっても1ページのインパクトは変わらない」という信念と、「広告料金はスペースに応じるものだ」という考え方の折衷案だった。しばらくは広告収入が減少したが、読者数が増加し広告主が「慣れる」ことによって、売り上げは徐々に増加に転じ、2004年は対2000年比で約5%の増加を記録した。
 翻ってみると、判型変更をしたイギリス紙から「広告収入が大幅上昇」というニュースは聞こえてこない。新聞広告市場全体が上向かないことと無関係ではないだろうが、広告主も「慣れた」ころであり、そろそろ広告面のプラス効果も耳にしたいところだ。
(12月6日)
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