立ち読み広告 2005.12/vol.8-No.9

必要なのは大人の読書再教育?

 私の朝は朝刊第一面のサンヤツ、サンムツから始まる。新聞受けから朝刊を取り出し、まず確認するのがここ。面白そうな本が並んでいると、1日じゅう気分がいい。
 10月27日朝のサンヤツは華やかだった。『まいごのマイロ』(あかね書房)から『天国からはじまる物語』(理論社)まで、8社が各1点、それぞれ表紙のカラー写真を載せている。
 よく見るとどれも児童書。カラフルでかわいらしい表紙が多い。そして真ん中には白抜きで「子どもたちの感性を育もう 10月27日は文字・活字文化の日」とある。  

10月27日は“モジカツの日”

 この日は初めての「文字・活字文化の日」だった。今年7月末に成立・施行された「文字・活字文化振興法」で定められたばかりの、できたてほやほやの記念日(というのだろうか)である。また、読書週間の初日でもある。
 「文字・活字文化振興法」(早くもモジカツ法などと略称を用いる人もいる)は、国語を文化の基本ととらえ、その振興のために国や地方公共団体が力を尽くすよう求めている。条文では学校図書館や公共図書館があげられているが、出版社や流通業者も含めての「振興」であることはいうまでもない。
 「文字・活字文化の日」は、ことさら児童書だけの振興をうたう日ではない(読書週間とは別に「子どもの読書週間というのが4月23日から5月12日まであり、4月23日が「子ども読書の日」となっている)。だが、この日の朝刊サンヤツに児童書を選んだのは、とても“正しい”と思う。児童書やヤングアダルト向けの本は、子どもたちだけでなく、大人も読める本だから。

現実世界を映し出す児童書

 今年の2月、東大生十数人を引率して、都内の書店めぐりを行った。大型店や専門店を見て回ったなかで、学生たちがもっとも目を輝かせたのは児童書専門店だった。
 「なつかしい!」「ぼく、この本を読んだことあります」「いまでも本棚に入れてあるよ」と秀才君たちが絵本や児童文学を手に取り、口々にしゃべっている。児童書は年齢・性別・学歴などに関係なく、誰にでも愛されているジャンルなのだ。
 もっとも、このサンヤツに並んだ8点をよく見ると、かつての児童書・ヤングアダルトとはいくぶん変化しているのがわかる。
 『ちいさなちいさな王様』(講談社)や『10このちいさなおもちゃのあひる』(偕成社)、『フェアリー・レルム3 三つの願い』(童心社)は大人も子どもも楽しめるファンタジー。一方、『あおぞら』(ポプラ社)は中学2年生でレイプされてしまった少女のノンフィクションで、著者は辛(つら)い現実を乗り越えてこの本を書いた。また、『ハッピーバースデー』(金の星社)は児童虐待を題材にしたフィクションである。子どもの本もまた、現実の世界を映し出す鏡となっている。
 ところで、翌28日の朝刊一面には「本離れ進む中高年」とある。読売新聞社が行った世論調査では、前年に比べて本を読まない中高年が増えたという。本を読まない学生が4割近くいて、たしかに若者の本離れも深刻だが、40歳代は44%、70歳以上は66%が本を読んでいない。若者を責めている場合ではない。これからは大人の読書教育、いや読書再教育が必要か?

10月27日 朝刊一面
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