特集 2005.7・8/vol.8-No.4・5

ダイレクトマーケティングは広告を変えるか
 消費財メーカーやサービス業、金融、通信、医薬品業界などさまざまな業種がダイレクトマーケティングに参入し、新規顧客獲得を目的とした「ダイレクトレスポンス広告」がメディアを席巻し始めた。ダイレクトマーケティングという考え方によって「広告」の役割はどう変わるのだろうか。また、そこで「ブランド」はどのような役割を果たすのかについても探った。

ダイレクトマーケティングにとって、広告とは何か

 ダイレクトレスポンス広告とは何か。それは、これまでの広告とどのような違いがあるのだろうか。ダイレクトマーケティングの専業エージェンシーとして設立20周年を迎えた電通ワンダーマンの椎名昌彦氏に、その役割と現状、今後の展望について聞いた。

――ダイレクトレスポンス広告が最近増えていますが。
 広告費全体の15から20%、新聞広告では55%くらいが「ダイレクトレスポンス広告」と推定されます。大手広告会社もここ数年、次々とダイレクトレスポンス広告の専門部署を作っていて、我々のような専業エージェンシーだけでなく今や広告業界全体の取り組みになっています。
 ダイレクトレスポンス広告は、ダイレクトマーケティングの一部です。エンドユーザー、顧客と直接結びつくためのマーケティング手法をダイレクトマーケティングと言いますが、その手段は従来からあるダイレクトメールや電話だけでなく、データベースやインターネットを活用したものへと広がっています。
 アメリカの広告業界は、ブランドマーケティングのエージェンシーとCRMやダイレクトマーケティングを専業とするエージェンシーに分かれていますが、後者の売り上げはこの10年で3倍に増えています。

――ダイレクトレスポンス広告が、ダイレクトマーケティングの一部という意味は?。
 ダイレクトマーケティング上の目的を達成する手段のひとつだということです。その中で、特に顧客や見込み客の獲得手段として入り口を担うのがダイレクトレスポンス広告です。
 今までの日本の広告業界では、どちらかというと広告表現が主役になっていました。マーケティング課題を解決する役割を果たしているかどうかの評価よりも、作品としての“話題性”“自立性”が先に立ってしまった感があります。それに対してダイレクトレスポンス広告は、顧客獲得やレスポンスなどの具体的な機能と役割を期待しているわけで、そういう意味では広告表現の作品性は主役ではありません。
 ダイレクトマーケティングにおける広告は、最終的に商品が売れるか、カタログ請求やサンプル請求といった売りの前段階のレスポンスが取れなければ意味がないという視点で評価されます。

見込み客を顧客へ

――ダイレクトマーケティングとこれまでのマスマーケティングの違いというのは?
 まず、今までのマスマーケティングの前提にはお店、売り場の存在がありました。そういう意味では、顧客と企業は間接的にしかつながっていませんでした。お店に行ってくれることを期待して広告を打っているだけなので、結果が明確には分からない、ある種、一方通行のコミュニケーションだったのです。ダイレクトマーケティングはお店というプロセスを省いて、顧客と企業を直接結びつけます。
 これまでのマス広告の役割は、「潜在顧客」に商品を認知させ、好感や関心を持ってもらい、商品を理解してもらうことで「見込み客」にすることでした(下図)。商品の購入プロセスを考えると、見込み客は資料請求や来店などの行動を経て、商品を購入することではじめて「顧客」になります。この潜在顧客から顧客に至るプロセスすべてを担うのがダイレクトレスポンス広告です。ですから、広告に期待される役割が違うということです。
 さらにこの先には、顧客をその商品のリピーター、つまり「ロイヤル顧客」にするプロセスがあります。新商品を投入した場合には、ロイヤル顧客はその見込み客になる。このプロセス全体の仕組みを考えるのがダイレクトマーケティングです。
 別の言い方をすると、これまでのマス広告をベースにしたマスマーケティングというのは、商品が売れればそれでおしまいだったのです。しかし、ダイレクトマーケティングは顧客の育成、維持、活性化もやりますということです。それがわれわれのサービスで、見込み客を特定するための分析や戦略の立案、見込み客とのダイアローグ、顧客コミュニケーションもある。もちろん、その裏には大量の顧客データをハンドリングするデータベースのプラットホームがあります。

――そこがセールスプロモーション(SP)と違う点ですね。
 SPは店舗があることを前提にした販売促進です。SPの仕事も、以前は店頭のPOP制作や懸賞広告のキャンペーンが主流でした。しかし、最近はインターネットや携帯電話の登場で店頭を絡めないキャンペーンもやるようになり、ダイレクトマーケティング手法のポイントシステムやマイレージとの境界が見えにくくなっています。ただSPは、あくまでポイントオブセールス、購買時点の販売促進策が中心になります。

ダイレクトマーケティングの考え方


買いたい人に届く広告

――商品認知や理解もダイレクトレスポンス広告の役割ということですが。
 見込み客が明確でない場合は、認知、関心、理解から始めて、購入まで持っていかなければいけない場合があります。ただ、行動を起こさせることがレスポンス広告の肝です。見込み客から顧客へというプロセスが、本来の勝負どころなのです。
 それで、ブランド広告のように1万人に「いい商品(広告)だね」と言ってもらうのを目的とするのではなく、ダイレクトレスポンス広告では1万人のうちの100人の見込み客だけを見て、その人たちを行動に駆り立てることに専念します。買う気のない人を相手にしません。ダイレクトレスポンス広告が、興味のない人にとってはただスペックが書いてあるだけにしか見えないのはそのせいかもしれません。

――それが理由なのかわかりませんが、ダイレクトレスポンス広告にはあまりデザイン性が求められていない気がします。
 一つは情報量が多いことがあります。結局、商品認知レベル、理解レベル、それから個別の商品スペックも入れなければならないし、その商品があなたにどんなメリットがあるかも語らなければいけない。さらに、取引ですから法的な部分も言わなければいけない。フリーダイヤルやQRコードなどレスポンスさせる部分も目立つ必要があります。通常のブランド広告と比べ、入れなければならない情報量は3倍から5倍あります。
 広告自体がお店ですから、ここでアイキャッチして、商品理解をさせて、レスポンスまで持っていくという計算を元に作れば、それなりのスタイルが出てきます。ダイレクトレスポンス広告を機能するように作るために、デザイナーにはテクニックだけでなくマーケターとしての視点も要求されるのです。

――機能しているダイレクトレスポンス広告ほど、ターゲット以外の人の目に留まらない?
 レスポンス広告を作るときにマーケターとしてクリエイターによく言うのは、「ターゲットはだれか」ということです。通常の広告でもM1、F1のようにターゲットを特定しますが、ダイレクトレスポンス広告の場合はもう一段、二段深いのです。たとえばパソコンなら、どういう機種を持っていて、どれくらいの年齢層で、次に買いたいのはどういうタイプのパソコンで、お金はどれくらい持っているか。それぐらいまで明確に見えている。その人が今何を欲しがっているか、どういう部分をくすぐればいいかに集中してレスポンスを高める表現を考えていきます。
 新聞やテレビのマス媒体を使う場合は、それ自体でターゲットを特定できるわけではありません。ダイレクトレスポンス広告の場合は、クリエイティブの語り口として、スイートスポットの人に行動させるための表現に徹しているのです。

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