From Overseas - NewYork 2005.6/vol.8-No.3

若者を新聞に呼び込むには
 先ごろ、アメリカのABC(新聞雑誌部数考査機構)が2004年10月から2005年3月までの6か月間にわたる日刊紙各紙の販売部数を発表した。それによると、アメリカ国内814紙の販売部数は平日版で前年同期比1.9%のマイナス、日曜版では2.5%のマイナスとなってしまった。ニューヨーク・タイムズ(前年同期比0.2%増)、ウォール・ストリート・ジャーナル(同0.8%減)、USAトゥデー(同0.9%減)の全国紙3紙は辛うじてプラス、もしくは若干のマイナスで止まっている。しかし、その一方でロサンゼルス・タイムズ(前年同期比7.9%減)、シカゴ・トリビューン(同4.7%減)といったローカル紙の状況は非常に深刻だ。
 新聞業界のアナリストによると、インターネットの普及が販売部数の減少に拍車をかけたことは間違いないようだが、販売部数の減少自体は1980年代の半ばから始まっていたことなので、インターネットの普及だけが要因ではないという。別のアナリストは販売部数が減少し始めておよそ20年の間で一貫して変わらないのは、若者が新聞を読まなくなったことだと指摘する。
 もちろん、こうした状況に新聞各社も決して手をこまねいている訳ではない。ニューヨーク・タイムズのように、教職員に対して特別価格で購読出来るプログラムを用意するなど、教育現場での積極的な活用を呼びかけている会社もある一方で、最近では大手新聞社自身がフリーペーパーの発行にかかわるケースも目立っている。
 ここニューヨークでも、ターミナル駅などでフリーペーパーが配布されるのは、すっかり朝のおなじみの光景となった。当地ではメトロ・ニューヨークとamニューヨークの2紙が配布されており、amニューヨークは配布員を採用するためのオーディションまで行っているという熱の入れよう。確かに各配達員の配り方には個性があり、ちょっとしたパフォーマンスを見ているようで面白い。
 実はこのamニューヨークを発行しているのは、シカゴ・トリビューンやロサンゼルス・タイムズなどを傘下に持つトリビューン社だ。20〜30代をターゲットに2003年から発行を開始し、今では発行部数も30万部に上るという。
 同じく2003年には、ワシントン・ポスト社がフリーペーパー「エクスプレス」の発行を開始した。前出のメトロがいずれはワシントンDCにも進出するのではという危機感も後押しとなり、地下鉄の平均乗車時間内に読めるような工夫をこらした結果、34歳以下が読者層の4割弱を占めるに至ったという。こちらも若者の新聞離れを食い止めるのには一定の成果を上げているといえよう。
 また、ニューヨーク・タイムズ社も今年の初めにボストンのフリーペーパーであるメトロ・ボストンの株式49%を取得し、フリーペーパーの発行にかかわることになった。とはいえ、ニューヨーク・タイムズ社は有料日刊紙ボストン・グローブの発行にも携わっており、ライバル社からはこれが広告スペースのセット売りにつながり、公正な競争が阻害されるとの声も上がっている。
 確かに、フリーペーパーが若者の新聞離れを食い止めるのに一定の成果を示していることは紛れもない事実かもしれない。しかし、大手新聞社がこの分野に進出したそもそものきっかけは、フリーペーパーで呼び込んだ若者を、自社の発行する日刊紙の購読につなげることのはずだった。しかし、ABCの販売部数を見る限り、相乗効果を発揮しているとはいえない。上記の広告セールスの問題も含め、今後も目が離せそうにない。

5月9日 amニューヨーク紙 5月9日 メトロ・ニューヨーク紙

(5月10日)
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