Creativeが生まれる場所 2005.6/vol.8-No.3

JT “効き目”にこだわるマナー広告
會澤 浩 氏  JTの緑色の広告「あなたが気づけばマナーは変わる」キャンペーンは昨年春からスタートした。車内づりやポスター、喫煙所でのステッカーなどを中心に展開されたマナー広告、その1年間のキャンペーン結果の報告が4月、新聞広告として掲載された。このキャンペーンを手掛けたのが、日産自動車の「RENAISSANCE」キャンペーンでもクリエイティブディレクターを務めた會澤浩氏だ。

――新聞広告は、1年間のキャンペーンの報告という形で掲載されましたが。

 最初の「ちょっと変わった広告」は、この1年間、車内づりや屋外広告で1個1個取り上げてきた「マナーの気づき」の集合体です。「歩道などに吸いがらを捨てない」が58.6%で1.6%アップ、「人通りが多い歩道で歩きながら吸わない」が74.8%で2.6%アップとありますが、これはキャンペーンを始める前の昨年3月と9月の調査との比較です。フィードバック広告と呼んでいますが、マナー広告キャンペーンを実施するだけではなくて、その結果がどうなったのかを知らせる必要があると思ったのです。
 実は、「歩道で吸うときも煙の行方に気を遣っている」は41.5%とキャンペーン前より2.9%下がっています。それも包み隠さず出しています。

――広告に説得力を持たせたかった?


 というより、広告は話題になったからよかったで済んでしまう場合が多いのですが、このキャンペーンでは、たばこを吸っている人の意識を変え、行動を変えるところまで行きたかったんですね。今までのマナー広告は、“効き目”まで考えていないところがあったと思うのです。
 世の中は、喫煙に対してアゲンストな流れになっています。その中で、単に「たばこはマナーを守りましょう」と言っても、言い訳や免罪符ととらえられがちです。本気でJTが喫煙マナーに取り組んでいることを示す意味でも、マナー広告の効き目にこだわることが大事なんです。

自ら気づいてもらう広告

――交通広告や屋外広告でマナーを1個1個取り上げたのは、なぜですか。

 実際に効き目があるのは、たばこを吸う現場に近いところです。だから、車内づりやポスター、喫煙所のステッカーが大事なのですが、例えば、子供のいる人は「たばこを持つ手は子供の目の高さ」と言われると一番効く。「あっ、おれって火を持って、こうしてたんだ」と、この広告を見たことによって気づく。そういう「気づき」が一人にひとつあればいいという発想です。そういう意味では、普通のキャンペーンの逆です。普通はまず大きなスローガンやキャッチを考えて、これをテレビや新聞で流すという発想をする。
 マナー広告は結局のところ「マナーを守ってください」という話ですが、そういう浅く、広い言葉でいっても何も伝わりません。新聞広告の場合も、雑誌の読者に語るように、小さな声で、しかし、ちゃんと相手に届くようにしゃべることが大事です。

――新聞、テレビも併用した理由というのは?

 JTが今までのマナー広告と違うことを言い始めたと多くの人に知ってもらうためには、新聞やテレビといったマスメディアの力がどうしても必要です。マナー広告が一番効き目があるのは、確かにたばこを吸う現場に近いところですが、それだけでは世の中全体には広がりません。たばこを吸わない人も含めて、JTがたばこのマナーに関して一歩踏み込んだメッセージを発信し始めたということを知らせる必要がありました。

市民参加型のゴミ拾い

――2回目の報告のテーマはゴミ拾いですね。

 JTでは「市民参加型清掃活動」というのを自治体などと協力して継続してやっています。各地域で地道に行っている活動なのですが、やはり点でしかない。それが世の中的に、大きなニュースになるのは難しい。だから、一年間の活動をまとめて発表したかったんですね。

――「市民参加型」というのは?

 清掃活動はJT単独ではなく、地方の自治体やお祭り・催事をやっている方たちと連携しながらやっています。祭りが終わった後にみんなでゴミを拾う。若い人たちも「気持ちいいよね」と言って帰るんです。自分たちの町に対する接し方も変わるし、ゴミを拾った人は2度と捨てないと多くの人が言ってくれます。
 1回目の報告もそうですけど、この広告も基本は全部事実がベースです。広告はイメージだけで勝負する時代ではない。自分たちは何をしているかをきちんと世の中に対して発信していかないと、広告として全く効き目がないと思います。

――4月からは、「スーさん」という名前がついたキャラクターが新聞広告に登場しました。

 この1年はどちらかというと、「こういうことはやめましょう」という喫煙に関するネガティブな行動をゼロに戻す作業でした。今度はマナーをポジティブに使うとどうなるか。近くに人がいたら「吸ってもいいですか」と一言聞くことで、お互いに気持ちいい関係でいられる。少しポジティブにマナーの話ができないかということで、今までの緑一色の広告ではなく、グッドスモーカーのシンボルキャラクターとしてスーさんを登場させています。

クリエイティブディレクターの責任

――會澤さんが、広告の効き目や事実にこだわるのは、なぜですか。

 今は、企業活動の抱える課題をコミュニケーションだけで何とかできる時代ではないからです。実際のファクト、あるいは商品を通して世の中に何を提示していくか、その具体性が求められています。それを最大化して見せることが我々の仕事です。
 日産のほとんどのキャンペーンは、ゴーン氏に直接プレゼンテーションしました。ゴーン氏に直接「これで商品が売れるのか」と言われたら、「売れます」としかいいようがない(笑)。それは欧米型のやり方だとは思うのですが、権限を持った人にプレゼンをするということは、クリエイティブディレクターも当然「責任を取れよ」ということです。広告の仕事も、そういうやり方に今後は変わってくると思います。

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