From Overseas - NewYork 2005.5/vol.8-No.2

いま、ラジオが熱い
 インターネット系企業による買収など、最近の日本ではラジオを取り巻く話題が世間を賑わせているが、ここアメリカでも今、ラジオをめぐって熱い話題が繰り広げられている。
 衛星ラジオの加入者が爆発的に伸びている。聴取するには、端末のほかに受信料として年間で100ドル以上を放送局に支払わなければならない。聴取するのにお金がかかるのはラジオ80年の歴史始まって以来といわれているにもかかわらず、サービス開始からわずか3年半で加入者が500万人を突破した。今年末には800万人に達すると予想されており、普及のペースは携帯電話を上回るとさえいわれている。
 家電量販店のウェブサイトで調べると、端末は最も安いもので100ドル強、中には300ドル近いものもあり、ラジオとしては決して手ごろではないかもしれない。それにもかかわらず、これだけのペースで普及する要因は何か。
 最大の要因として考えられるのはコンテンツの充実ぶりである。現在、衛星ラジオ局は「XM」「シリウス」の2社しかないが、それぞれが120、もしくはそれ以上のチャンネルを保有し、音楽、スポーツ中継、ニュース、トークと様々なジャンルの番組を提供している。
 さらに、両社ともコンテンツを充実させるための投資には糸目を付けない模様で、「XM」は大リーグ機構との間で中継権をめぐって、昨年10月に11年間、総額6.5億ドルにのぼる契約を結んだ。一方の「シリウス」もカリスマDJといわれるハワード・スターン氏を総額5億ドル、5年契約で引き抜いた。これにより、聴取者はアメリカのどこにいても、ひいきのチームの中継やDJの番組を聴くことが出来る。
 衛星ラジオのサービスが開始されるまで、アメリカでも深刻なラジオ離れが進んでいたという。それに拍車をかけたのが96年に行われた放送局の保有に関する規制緩和だと考えられている。その結果、アメリカ各地のラジオ局は一握りの巨大メディアグループによって束ねられてしまった。
 彼らはウォール街の投資家たちを喜ばせるために、複数局の業務を統合することでコストを削減、さらに、CMの枠を大幅に増やした。その結果、業界全体での収入はわずか5年間で倍増したが、逆に聴取者のラジオ離れを一層進めてしまった。
 本来なら、他のメディアに比べてよりパーソナル、かつ、ローカルであるはずのラジオが、業務統合により番組が画一的なものとなってしまった。さらに、CM枠の増設により、1時間当たりのCM放送時間は大都市圏では半分を上回るケースも出たという。これでは、聴取者がラジオから離れていくのも無理はない。
 衛星ラジオでは受信料を徴収することで、チャンネルによってはCMが全くないものもあり、また、番組についても特定のアーティストやジャンルに特化したチャンネルもあり、聴取者の幅広いニーズに応えている。
 もちろん、衛星ラジオに全く死角がない訳ではない。「iPod」をはじめとするデジタル音楽プレーヤーやインターネット・ラジオといったものも着実に普及しており、衛星ラジオの独壇場とはいかない。
 とはいえ、いかに技術が進歩して、便利なものとなったとしても、そして、いかに効率的な経営を図ったとしても、利用者のニーズを無視してしまっては目も当てられない。金でニーズを買うことは出来ないのだから。

3月18日 NYタイムズ紙 4月5日 USAトゥデー紙

(4月11日)
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