企業訪問 2005.5/vol.8-No.2

イメージング領域のトップブランドへ
 プラズマ・液晶に続く第3の薄型テレビとして今、リアプロジェクションテレビが脚光を浴びている。大画面の本命と言われるリアプロジェクションテレビを昨年投入したセイコーエプソン 広報・ブランド戦略部部長 山本宏紀氏に、今後の戦略を聞いた。

山本 宏紀氏  薄型テレビが売れているという。(社)電子情報技術産業協会によると、2004年の薄型テレビの国内出荷台数は液晶テレビが前年比73.9%増の266万台、プラズマテレビは42.3%増の34万台と、右肩上がりを続けている。
 画面の大きさにより30インチ台までは液晶、それ以上はプラズマテレビが販売の中心になっているが、画面の大型化が進行するにつれ、リアプロジェクションテレビに注目が集まっている。
 リアプロジェクションテレビとは、本体内部に投影機を備え、小型パネルに映した映像をレンズで拡大して画面に表示するテレビのこと。画質はブラウン管テレビに近く、消費電力が少ないのが特徴。他の薄型テレビと比べて若干厚みがあるが、半額程度で大画面映像を楽しめることから、アメリカでは液晶・プラズマテレビを上回る売れ行きで、メーカー各社はプラズマ、液晶に次ぐ「第3の薄型テレビ」と位置づけている。
 そんな中、47V型35万8000円、57V型47万8000円のリアプロジェクションテレビ「LIVINGSTATION」を投入するなど、日本で今、積極的に展開しているのがエプソンである。
 
“プリンターの息子”

 1942年5月、セイコーエプソンの前身、大和工業が創業した。今でこそプリンターのイメージが強い同社だが、元々は現社名が示す通り、セイコーグループの一員として時計の組み立て・部品製造を行っていた。
 大きな転機となったのが東京オリンピックだ。このオリンピックではセイコーグループが公式計時を担当。同社が開発した卓上小型水晶時計「セイコークリスタルクロノメータQC-951」と、それと連動した「プリンティングタイマー」が計時装置として大いに活躍した。
 「クオーツ式のポータブルな時計と印字装置をセットしたこの機器は各国の記者たちに驚かれ、評判が世界中に広まった」と同社広報・ブランド戦略部部長 山本宏紀氏は語る。
 その後、この卓上小型水晶時計はさらに小型化を推し進めることで世界初のクオーツ腕時計「セイコー クオーツアストロン35SQ」となり、プリンティングタイマーは小型軽量デジタルプリンター「EP-101」に発展していった。
 「エレクトリックプリンター一号機の『EP-101』が市場に受け入れられたことで、当時の経営陣は今後これをベースにビジネスを展開していこうと考えた。そこで、EPの息子=SONが、世に多く出ていくようにという願いを込めて、1975年6月に『EPSON』ブランドが立ち上げられた」

時計の技術を基に多角化推進

 「EP-101」で成功を収めた同社は、さらに液晶やインクジェットプリンターなど事業の多角化を進める。だが、その根底には時計作りで培われた超微細・精密加工技術が脈々と受け継がれているという。
 「デジタル時計の表示盤には消費電力の小さな液晶表示素子が一番都合良かったが、当時はそんな部品は無く、自らの手で開発することになった。一方、クオーツ時計の水晶振動子は、パソコンや携帯電話などにも搭載されるなど、情報通信機器向けを中心に発展している」
 最初は時計の表示盤として6けたの数字を表示するに過ぎなかった液晶表示素子は、より豊かな情報を表示するため高精細・カラー化が進み、今では携帯電話の表示画面やリアプロジェクションテレビの映像機部分に使われている。一方、精密加工技術はインクジェットプリンターの印字ヘッドに微細なノズル穴をあけることを可能とし、独自方式のインクジェットプリンター誕生の契機となった。
 「インクジェットプリンターとリアプロジェクションテレビには一見何の関連性も無さそうに思えるが、実はその根っこは時計で繋がっている。時計製造で習得した精密加工技術と、東京オリンピックで取り入れたエレクトロニクスの技術が合わさったことで、当社の事業領域も広がっていった」と山本氏は語る。
 現在、同社では省電力性や薄さ、画質などから究極のテレビといわれる有機ELを開発中だ。これまで、赤、青、緑の発光体を基板上に均一に塗り分けることが困難とされていたが、プリンターのインクジェット技術を応用することで解決。昨年40インチの試作に成功し、2007年の市販化に向け、他社に大きく差をつけている。
 
戦略商品第一弾投入

 プリンターで揺るぎない地位を確立した同社だが、今後は3つのi(imaging on paper=プリンター、imaging on screen=プロジェクター、imaging on glass=ディスプレー)に代表されるイメージング領域でのトップブランドを目指すという。
 その第1弾となるのがリアプロジェクションテレビ「LIVINGSTATION」だ。同社は初めて家電製品を世に出すにあたり、市場の反響を直接商品やサービスの企画に生かすべく、ダイレクト販売を行うことにした。まだプリンターに及ばないブランド力を、社員が直接応対することで補う狙いもある。新聞広告でも直営店や体感フェアへの誘客を図った。「見て、触って、信頼していただければ、イメージング領域でのエプソンブランドも理解してもらえるだろう」

紙面
セイコーエプソンは新聞広告を通じ、リアプロジェクションテレビ「LIVINGSTATION」をダイレクト販売している(3月17日朝刊)

(佐藤)
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