特集 2005.3/vol.7-No.12

ABCとJ-READ
新聞接触を量と質からとらえるJ-READ

 J―READ(全国新聞総合調査)が、新聞の接触状況を知る第三者機関データとして定着し始めている。調査の企画・設計に携わった鈴木氏と担当の布川、橋本氏に、J―READとは何か、改めて聞いた。
 
ACR調査との違い

――メディアに関する調査としてはACR(Audience and Consumer Report)が従来からありましたが、J―READとの違いは、どこにあるのでしょうか。
 鈴木 最大の違いは、調査目的とその思想です。ACRには、40年の歴史があります。メディア接触と商品の利用者を明らかにすることを目的に、同じ消費者にさまざまなメディア接触を聞くシングルソースの調査です。対象メディアは、マス4媒体プラス、インターネット、交通広告。それぞれのメディアの接触状況を1週間、すべて同一対象者で測定しています。複数のメディア接触を同一対象者に聞くことによって、メディアミックスをトータルに知ることができる。新聞、テレビ、ラジオ、雑誌や交通媒体に掲載された広告に、ひとりの人がどう重複して接触するかを科学的に明らかにできます。この調査で得られたデータは、例えば広告会社のメディアミックスのためのシミュレーションモデルのベースとして使われています。

―― 一方、J―READというのは?
 鈴木 J―READは、始まってからまだ4年、新聞の接触状況を明らかにすることを主な目的にした調査です。テレビには視聴率調査、ラジオには聴取率調査がありますが、プリント媒体の新聞、雑誌については、それに特化した接触率調査は、以前はありませんでした。新聞の接触率調査としてACRが想起されるのは、そういう単独調査がなかったために、メディアミックス型で調べたACRのデータが便宜的に長年、利用されてきたこともあると思います。

――特定の媒体に特化した接触率調査とACRでは、調査結果にどういう違いがあるのでしょう。
 鈴木 同一対象者にさまざまなメディアについて同じ記入期間で測定するACRと、J―READのように一つのメディアに集中して回答してもらうのとでは、やはり精度が違います。
 雑誌の接触状況を調べるMAGASCENEという調査をJ―READより数年前に始めていますが、雑誌もACRで調べられる数には限界があって、せいぜい200数10誌程度です。ところが、広告会社など業界の要望は、データで管理したい雑誌としてはできれば500誌程度は最低限必要だという声があった。雑誌だけなら500という数も調査可能ですし、回答結果についても精度の高いものが確保できるであろうという仮説に基づいて始めた調査で、業界からも一定の評価を得られました。MAGASCENEと同じような思想がJ―READにもあります。

J-READ(全国新聞総合調査)調査概要
調査記入期間 年1回(記入期間:1週間)
調査エリア 全国47都道府県の各全域
サンプル数 各都道府県の人口規模に応じて6タイプのサンプルサイズを設定。合計33,800人を対象
※最大1,600人(東京都)〜500人(鳥取県)
調査対象 満15歳〜69歳の男女個人
対象者抽出 調査エリアごとのRDD(ランダム・デジット・ダイヤリング)により調査対象者を抽出し、調査協力を依頼
※RDD・・・電話番号を無作為に発番させ自動的にダイヤルし調査をする手法
調査方法 調査協力の応諾が得られた対象者に対し、自記入式調査票を郵送
記入期間終了後、郵送にて調査票を返送してもらう

一週間の閲読状況を調べる

――ACRとJ―READでは、調査エリアも違いますね。
 鈴木 調査設計の細かいところは、まったく違います。全国の主な都市を中心としたACRの7地区に対して、J―READは47都道府県全域が調査対象エリアです。サンプルサイズもACRはトータルで1万2200、J―READが3万3800、サンプリング方法もACRは住民基本台帳をベースとした無作為二段抽出法、J―READはRDD法(ランダム・デジット・ダイヤリング)です。調査方法はACRは訪問留め置き法、J―READは郵送法です。

――J―READの新聞閲読の調べ方というのは?
 鈴木 閲読については7日間調べていますが、調査票を発行日の前までに送って、最終日の数日後に返送してくださいという調査方法です。

――そうすると、最終日にまとめて答えてもいい?
 鈴木 あまり日数があくと記憶に頼る面もでてきますので、なるべく発行日当日、もしくは翌日に記入するようにお願いしていますが、そのような回答もあり得ます。実は、これは調査の考え方の大きなポイントで、ACRも同じやり方で調査しています。
 プリント媒体の接触を調べるには二つの方法があります。一つは、リーセント・リーディングというやり方で、雑誌の調査では欧米では主流になっている方法です。「最近3か月間に、この雑誌を読みましたか」という聞き方をします。号を特定しないので、数か月前の月刊誌でもいい。それによって、結果的にある特定雑誌の閲読状況がわかるという考え方です。
 J―READでとっている方法は、「何月何日発行号を読みましたか」という聞き方をしています。雑誌の調査の呼び方ですが、これがスルーザブック法です。

――郵送法ということも関係している。
 鈴木 調査対象者にとってもわかりやすいし、答えやすい方法だと認識しています。新聞の場合は、発行日と閲読のタイミングがずれるというのは、そう多い頻度では発生しないと思っていますので。この方法で無理はないと考えています。

J-READでわかること

なぜRDDなのか

――サンプリングにRDD法を採用したというのは?
 鈴木 この調査を立ち上げる際に、一番議論されたのはサンプリング方法でした。RDD法は、新聞社も選挙の世論調査などに使っている方法で、社会調査のサンプリング法として一定の市民権を得ていると思いますが、正当なサンプリングではないという意見の人もいます。その理由は、固定電話を対象にしますから、いくら番号をランダムに発生させたとしても、純粋な個人抽出の考え方からはずれているというものです。
 RDDで非常に神経を使うのは、世帯の中で個人を特定させるところに、いかにランダム性を持たせるかです。たとえば、乱数表を用いて世帯内の何番目の人かを指定してお願いするケースもありますし、バースデー法といって、一定の日付を決めて、その日付にもっとも近い誕生日の人に対象者になってもらうなど、いろいろな方法論があります。しかし、最初の電話を掛ける時点が世帯単位ですから、電話を使ったサンプリングは個人調査には不適切という立場に立つ統計学者は、まだいます。
 反面、RDD法には時間とコストがかからない利点があります。面接法や留め置き法は訪問調査ですが、オートロックの集合住宅が増えるなど、セキュリティー管理の厳しい時代になっていますから、調査を依頼することがむずかしくなっていることもあります。

――訪問調査の場合、事前に連絡するのではない?
 鈴木 当社のやり方は、最初に抽出した対象者に対して、この期間に調査員がお願いにうかがいますというあいさつ状を出します。それは一方的に出しているわけですから、調査に協力してくれるかどうかは、行ってみなければわからない。訪問調査でも、サンプルの代表性を確保するのは難しくなっているのが現状です。サンプリング方法には、経済性と効率という現実論も入ってきます。
 布川 われわれが注目しているのは、J―READで出てくる単身世帯の割合がACRの単身世帯の割合より、相対的に高いことです。

――RDDの方が単身世帯の応諾率が高い?
 布川 数ポイントJ―READの方が高く出ます。訪問調査の場合、たとえば単身で住んでいる女性のお宅に、ある日、調査員がお訪ねするわけです。それに対する不安感もあると思います。J―READの場合は、まず電話が掛かってくるので、断りやすいイメージがある反面、応諾していただけたら、住所を聞かれて、郵送されてきた調査票を送り返すだけですから、オートロックの集合住宅にも入っていけるなど、RDD法ならではのメリットもあると思っています。

新聞の特性にあった全域調査

――先ほど、RDDの方がコストがかからないという話がありましたが。
 鈴木 新聞広告を使うナショナルスポンサーは、全国紙プラス地方紙という展開でキャンペーンを行います。各都道府県の新聞のデータが必要になってきます。そこが、他の媒体と新聞との違いです。調査エリアもそれに対応したものでなければなりません。コストを考えると、訪問調査はとても成り立たないということがあります。それだけでなく、RDD法には調査エリアを分散できるというメリットもあります。
 その県の中で1000人の対象者を選ぶときに、面接法や留め置き法といったフィールドワーク調査の場合は、二段抽出ですから、まず調査地点を選んで、そこからまた調査対象者を選ぶ。やれても100地点1000サンプルです。新聞の場合、エリアによって購読紙は特定紙に固まる傾向があります。すると、選ばれた地点によって偏りが出てしまいます。J―READはRDD法で、しかも郵送法ですから、1000地点1000サンプルの調査が可能です。新聞の特性を考えたときに、全県調査で、さらにエリア内から均等にサンプリングすることが非常に大事なポイントだという問題意識は、初めからありました。

――テレビの視聴率は?
 鈴木 都市部を中心に測定をしています。多くの調査は北海道の調査といいながら、実は札幌市で調査しているのが一般的です。しかし、新聞は同じ県でも地域によって購読紙に偏りがありますから、広島県の新聞閲読状況を広島市の数字で代表させるわけにはいきません。





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