特集 2004.12/vol.7-No.9

変化に対応するメディアの使い方

 メディア環境の変化、人々のメディア接触の変化に対応すべく、新しいメディアの使い方を探るさまざまな試みが始まっている。そこで問われているものは、何か。広告主、メディア、広告会社、3つの視点から、新たな媒体選択の動きを探った。

媒体の使い方をメディアミックスの視点で見直す

 10月に設立された日本ラジオ広告推進機構(RABJ)は、中立的な立場でラジオ広告の使い方をPRする第三者機関だ。その代表に就任したのは、日本広告主協会Web広告研究会の代表幹事としても活躍する真野英明氏だ。RABJの設立が、今の広告状況に問いかけるものは何だろうか。
 
――多メディア化が本格化し、人々のメディアに対する接し方も変わってきたと思うのですが。
 いろいろなパターンのメディア接触が出てきています。たとえば、ブロードバンドユーザーはテレビをゴールデンタイムに視聴している割合が低いという傾向が出てきています。また、パソコンとテレビが同じ部屋にある人が7割いて、その使い方を見ると、さらにその7割の人たちがパソコンを見ながらテレビをつけている。つまり、テレビは積極視聴されていない。そこに企業はスポンサーとして多額のお金を出している。メディア接触の変化に合わせた媒体の使い方を考える時期に来ていると思います。

――媒体の使い方というのは?
 これからの広告主にとって広告費を効率的に使う一番の方法は、メディアミックスをいかにうまく行うかということです。たとえば、ラジオ広告の指標に聴取率がありますが、こうしたリーチデータからは、ラジオ媒体をどう使えば効果的かは見えてこない。「○年連続ラジオ聴取率トップ」と言っても、広告を出稿する側から見たらそれほど意味がない。それよりも、テレビCMの何日後にラジオCMを入れると認知率の低下をおさえられるか、同じ日にテレビとラジオCMを流す場合も、時間帯はいつがいいのか、あるいは、クリエイティブは変えた方がいいのか悪いのか。同じ広告費でも媒体の組み合わせや使い方によって効果は変わってきます。広告主は、そういうところを本当は知りたい。これは、新聞広告についても言えることだと思います。

●個人全体でのTV・インターネット接触率(平日・自宅)

大変なのはどの媒体も同じ

――RABJの役割も、メディアの使い方のPRにある?
 RABJはラジオ局の出資でつくられた機構ですが、広告主の立場に立ってラジオ広告の有効な使い方を研究する第三者機関です。つまり、あくまで中立的にラジオの使い方をPRしていく機関ということです。
 広告主から相談を受けた内容はラジオ局や広告会社には絶対に漏らさない。真実のデータのみを提供し、判断は広告主にまかせる。そこが、従来の業界団体とは違うところです。
 もうひとつ重要なのは無償で研究成果は提供する。活動内容には口出ししないで資金はラジオ局が出す。成果は広告主に無償で提供するということです。

――今まで日本にはそういう組織はなかった?
 日本では初めてです。RABJのモデルになっているのは、12年前にイギリスにできたRadio Advertising Bureau(RAB)です。事情はまったく日本と同じで、イギリスでも広告主や広告会社からラジオ媒体が注目されなくなって、ラジオの広告費が急速に落ちていったことが背景にあります。
 イギリスでは、12年間にラジオ局がRABに投下した資金は54億円ですが、その間のラジオ局の収入増が5000億円あったと言われています。こういう仕事は、広告会社がやればいいという考え方もあるかもしれませんが、やはり広告会社の収益にとってプラスになる媒体選択という発想が入ってしまいがちです。広告主は、そういうものを敏感に感じてしまうものです。

――RABJの設立には、やはりラジオ業界の危機感がある?
 RABJの設立が決まってから、「ラジオは経営が大変だからこういう機構をつくったのですか」という質問を取材に来られる記者の方からもよく受けます。それに対しては、「大変なのはどの媒体も同じです。その認識をまず変えてください」と答えています。
 2001年と2003年の日本の総広告費を比べると、2001年が6兆580億円、2003年が5兆6841億円で、全体で約3700億円下がっています。その中でマス4媒体が約3000億円減になっている。一番落ちているのが新聞で1527億円減、テレビが次いで1201億円減、ラジオが191億円減です。
 ラジオは昔からテレビの10分の1媒体といわれています。媒体として非常に規模が小さい。確かに経営的な厳しさを肌身で感じていることが、RABJがつくられた要因ではあるのですが、事情はどの媒体も同じだと思うのです。

●インターネットをするパソコンはテレビと同じ部屋にあるか ●テレビとパソコンの併用状況

地上波テレビ中心の時代から

――メディア環境が変わったにもかかわらず、テレビCMを中心にキャンペーンが組み立てられる傾向があります。
 確かにそういう現状はありますが、地上波テレビが安泰かといえば、そうとは言えません。CSテレビも、今は858万世帯、世帯普及率でいうと18.2%まで伸びてきています。地域別では、北陸が32%になっている。
 その媒体がマスメディアとしてどのくらい使えるかは、普及率16%、30%、70%が基準になるというのが私の持論なのですが、普及率が16%を超えるとこれから普及が進むという変節点、30%以上はマス媒体として機能する、70%以上がマス媒体というとらえ方です。北陸のCS世帯普及率は30%を超えていますから、もうマスメディアとして十分使えるわけです。今はゴールデンタイムのテレビ視聴率にもCSの視聴率が上乗せになっている。要するに、インターネットにも食われるし、CSにも食われるということで、地上波テレビだけがいいという時代ではもうないということです。
 さらに言うと、関東地域のあるケーブルテレビ局の例では、地上波放送はすでにテレビ視聴時間の54%しか見られていないというデータがあります。また、最近はPVRというハードディスク蓄積型ビデオとEPG(電子番組ガイド)が普及し始めています。今までのテレビのスポットCMは、金曜日の夕方に流して、週末の購買増をねらうということが可能だったのですが、蓄積型ビデオと電子番組ガイドが普及すると、実際に番組を視聴する時間帯がずれてしまう。さらに、CM自体がスキップされてしまうことが多くなることも予想されます。

リーチの確保も困難に

――多メディア化で、広告が以前のようには効かなくなったともいわれます。
 おいしいレストランもたくさんあれば、いろいろなエンターテインメント施設もできている。多メディア化だけではなく、生活パターンそのものが多様化してきたことが、広告のリーチを確保することをむずかしくしています。またそれだけでなく、フリークエンシー、一人の人が広告に接触する回数も少なくなっています。メディアミックスする際によく言われてきた理論に、セブンヒッツ理論があります。たとえば、CMに7回接触すると、売り場に行ったときにその商品を選んでくれる確率が高くなるという理論です。ところが、それだけの回数をテレビCMだけで接触させることが非常にむずかしくなっているのが現状だと思います。

――だからこそ、メディア接触の変化をよく見て、媒体選択をしていく必要がある?
 多媒体の接触を調べているビデオリサーチのMCR調査を見ると、ラジオに接触している人は、ここ数年13%で安定しています。ところが、ネットユーザーでは逆にラジオに接触している人が増えています。耳から聞く媒体は競合が少ないですから、これからネットユーザーが増えていけば、ますますこの傾向は強まると思います。
 だから、繰り返しになりますが、そういうメディア接触の変化を見ながら、メディアミックスをいかにうまく行うかというのが、広告費を効率的に使う方法になっているということなのです。


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