特集 2003.10/vol.6-No.7

メディアとクリエイティブの関係

 あらゆるものがメディアになりうる現在のメディア状況の中で、広告クリエイターはその状況をどうとらえ、何を見すえて広告制作に取り組んでいるのだろうか。アートディレクターの佐藤可士和氏、コピーライターの一倉宏氏、2人のクリエイターに聞いた。

広告はもっと自由なはずだ

 広告の効果がわかりにくくなった原因は、従来の広告キャンペーンに人々が慣れてしまったことにある。広告の効果をはっきり見えるようにするにはどうすべきか。アートディレクターの佐藤可士和氏は、商品を売るという原点から仕組みを考え直すことであり、それは必然的にメディアとは何かを問い直すことにつながると言う。
 
 広告が一番元気だったのは80年代だったと思う。ぼくはまだ高校生だったが、そのころはコマーシャルっておもしろいなと思ったし、新聞でも宮沢りえさんの写真集『サンタフェ』の広告が“事件”になったりしていた。パルコの駅貼りポスターも元気で、個々のメディアがその役割通りに機能していた時代だった。89年に美大を卒業してすぐに広告会社(博報堂)に入ったから、最初はぼく自身も広告というと新聞、テレビ、雑誌、ラジオのマス4媒体を使うことだと思って仕事をしていた。
 それに疑問を抱くようになったのは多分95年ぐらいからだ。キャンペーンを考えていても、いつも定食みたいに決まってしまっていることを、作り手として漠然と思い始めた。広告の好感度が必ずしも購買に結びつかないことは昔からあったのかもしれないけど、そういうことが割と頻繁に起きてきて、すごく疑問を持つようになった。
 商品力の違いもあるから一概に言えないけど、自分が作った広告で好感度は高いが商品が動かないこともあれば、他人がやっている広告で、逆のケースもあった。表現と効果がいっしょにならない。それはなぜかと言えば、みんなコマーシャルをコマーシャルとして見るようになってきたからだ。いつも同じ定食だから、ハイ、ハイ、もうわかってますという感じで広告に接するようになってしまった。それで、そのころから、せっかく広告を作るなら、もっとダイレクトに効いた感じにしたいと自然に思い始めたのだと思う。

街はメディア

 メディアを今までとは違う形で意識して広告作りをしたきっかけは、キリンビバレッジのチビレモンを商品開発からやったときだ。キリンレモンのリニューアルを依頼された。それも、自分の自由にやっていいという願ってもない依頼だった。普通だとパッケージを変えて、ちょっと表現が変わったコマーシャルを打って、ポスターを作ると思うんだけど、それではあんまり効果がないだろうなというのが見えた。それで、もっと根本的に解決する方法はないかと考えているうちに、「コンビニがメディアだ」ということに思い至った。コンビニの棚をメディアとして見たときに、そこでどうアウトスタンディングなポジションを取れるかということから、パッケージの形を変えようと思い、小さくするということを考えた。
 その仕事がぼくにとって、メディアはマス4媒体だけじゃないとはっきり意識するきっかけとなった。その2、3年前から感覚的に思っていてなかなか実施できなかったことが、チビレモンの商品開発で初めてできた。
 それで、その次の仕事で木村拓哉君を起用してTBCのキャンペーンをやったときに、普段よりもビルボードをいっぱい使うことを意識的にやってみた。キャンペーン自体のメディアプランニングは普通だったけど、そのときに、木村君の顔をイラストレーションで描いたビルボードを街のあちこちに展開した。すごく目立つ感じが自分でもしたし、実際にそれを見ている女子高生を目の当たりにして、街はメディアなんだということをその時に実感した。ビルボードは単なる“屋外看板”ではなく、街というメディアの一部なんだと思った。

デリバリーされる新聞の魅力

2000年10月14日朝刊
 2000年に独立してサムライという会社をつくり、最初にかかわったのが、SMAPのアルバム「Smap(エスマップ)」の発売キャンペーンだった。その時にはもうかなり確信犯で、ビルボードをやろうではなくて、街をメディアにしようと考えていた。街のメディアの一環としてビルボードがあり、駅貼りがある。新聞広告を使ったのも同じ感覚だった。SMAPのキャンペーンでは、今までとはちょっと違う意味で新聞広告をやりたいと思った。
 新聞は街のメディアではないが、ぼくの意識の中では同じだった。誤解されると困るけれど、その日に渋谷で大量に配られるティッシュペーパーと宅配される15段の新聞広告は同じ役割を持っているということだ。実際に当日街でティッシュやステッカーを配ったが、新聞もステッカーの延長で、違いは、配ってくれるのが新聞配達の人というだけだった。
 これまでは、テレビコマーシャルは15秒しかないからイメージ的なものを打って、新聞や雑誌は補完媒体としてじっくり読ませるということになっていた。広告会社に入ったとき確かにそう教わったし、メディアミックスはそういうものだと思ってやっていた。でも、そのころから新聞広告の使い方も、違うんじゃないかと感じていた。それで、95年ごろ、ホンダステップワゴンとインテグラの新聞広告を作ったとき、単純に目立つものを作ろうと思った。当たり前だけど、新聞はほとんど文字ばかりだから、その中にまた字を入れても目立たない。字の中に絵が挟まっていれば目立つ、そう考えた。それで、ステップワゴンの立ち上がりの15段広告は、クレヨンでボンと文字が書いてあって、車がボンとあるような、そういうビジュアル主導にした。
 インテグラも、30段で、ブラッド・ピットを使って思いきったコラージュにしたら、やはりすごい反響があった。認知率も高かったし、そういう使い方は間違ってないという確信はその時に持った。だからその時点で、ぼくの中では「新聞は別にどう使ってもいいんだ」ということはクリアしていた。
 それで、SMAPのときはその考えをさらに進めて、もっとストリートなメディアとして新聞をとらえようと思った。そういう考えがあったから、新聞はすごくやりたかった。やはり、デリバリーされるというのは新聞のすごい魅力だと思う。

メディアの人にも見て欲しい

 SMAPのキャンペーンで新聞を使ったのは、別の理由もある。家で新聞を見てそこにワッと3色の広告があったら、なんだこれはとなって、ちょっと家の中で話題になる。そういう効果も狙った。ぼくもそうだけど、忙しいサラリーマンは、朝はじっくり新聞を読む時間がない。でも、あれだけ目立てばパッと目に留まる。それに新聞は、ちゃんとした大人はそれなりに読むわけだから、SMAPはこういう活動をしているという社会的インパクトが生まれる。
 一般の人たちだけではなく、テレビ局の人にもその広告を見てほしかった。SMAPの後にやったキリン極生のキャンペーンも考え方は同じだが、新聞広告はメディアの人にも見てほしいという意図がある。今日、こういう新聞広告が出て発泡酒戦争が始まりましたとニュースで取り上げられることを想定して作っている。
 SMAPも、極生もそうだが、メディアにはリリースをあらかじめ流しておく。興味があれば取材してもらうというスタンスで、もちろん取材の強制はできない。ただ、一生懸命そうなるように、ぼくがテレビ局の人だったらどう反応するかということを考えて広告を作る。だから、なるべくセンセーショナルなほうがいいと思って、極生には値段しか書かないとか、そういうことまで考えて広告を作っている。

もっと自由なプランニングを

渋谷のタワーレコード前に設置されたDrink! Smap!の自動販売機 2002年のDrink! Smap!のキャンペーンでは、「Smapという商品が出たらおもしろいんじゃないか」ということから、キリンビバレッジとタイアップして「Smap!」という飲料を発売し、自動販売機も作って街中に置いた。CDジャケットにデザインされた「Smap!」という缶と同じデザインの飲料が実際に街で売られたのだ。街中の自動販売機も、缶ジュースもメディアになり得るということだ。
 そういうふうにいくつかハードルを越えたことで、今はメディアというものをかなり自由に考えられるようになった。以前はビルボードや駅貼りは、どこに貼るか指定できなかったが、いまは、その地区の地図をもらって、どこにどういうポスターを載せるか1つ1つ指定できるようになった。渋谷なら渋谷全体のメディアを設計している。
 だから、それはできなかったんじゃなくて、だれもやろうとしなかっただけだと思う。こうしたいとぼくが言って、クライアントも広告会社もその方がいいとなれば、実はできる。
 それは、独立してサムライという会社を作ったからより自由になったということもある。広告会社にいた時は、やはり会社の制作という部署の一員でしかない。メディアプランは、最初に言ったように、テレビと新聞でやることは決まっていて、何をどうするかは主にメディア局の人たちがプランニングした。
 独立したら、そういう人はいない。クライアントとじかに仕事をやると、プランニングも自分たちでやることになる。たとえば、SMAPのキャンペーンはテレビを使わず、メディアをオールグラフィックにしようという試みだったが、前例もないし調査のしようもないから、効果も測れない。あまりしゃくし定規にやるとできない戦略だった。大きな広告会社がいっしょだったら、大丈夫なのかそれで、ということになったと思う。
 クライアントじかの仕事だったから、そこが自由にできた。レコード会社の人とジャニーズ事務所の人と、勘の良い人たちが集まってすごく少人数でつくった。この予算でテレビをやるんだったら、ビルボードで、街中にSMAPがあふれたほうがいいよねと言ったら、すぐわかってくれる人たちとやれたから実施できたキャンペーンだと思う。


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