特集 2003.4/vol.6-No.1

特集

 日本のインターネット人口は昨年末、50%を超えた。人々は複合的に情報に接触するようになり、新しいメディアミックスの視点と方法論が求められている。これまでの経験から、ウェブと新聞のメディアミックスは、かなり相性がいいと言われている。ウェブと新聞広告の連動の視点と課題を探った。



 メディア単体ではなかなか情報が届かない時代になっている。Web広告研究会代表幹事の真野英明氏は、それぞれの媒体の長所を生かした新しいメディアミックスの考え方が必要で、特にインターネットを広告メディアとして活用する場合は、マス媒体との連動が不可欠だと指摘する。
 
 これまで広告をする際の媒体選択は新聞、テレビ、雑誌、ラジオの4媒体を中心に行われていた。交通広告や屋外広告、折り込み広告、DMなども使われてきたが、ごく最近までわれわれの周辺には、こうした限られた媒体しか存在しなかった。メディアミックスを考える場合も、その枠内で効果・効率を求めれば済んでいた。
 ところが、8年前にインターネット広告が始まり、携帯メディアの普及やテレビのデジタル化、マルチチャンネル化で、メディアの多様化は急速に進んだ。
 こうした状況がより鮮明になってきたのは、ここ3年だ。その牽引役が、携帯電話とブロードバンドの普及であったことは確かだ。

新しいメディアミックスを

 インターネットは、すでに1か月に1回以上使う人が5800万人いて、2003年1月末現在、835万人がブロードバンドに接続している。1日の媒体接触時間の中でインターネットの占める割合は、インターネット・ユーザーにおいては、すでにテレビに次いで第2位というところまできている。中にはヤフーのように、1日のアクセスが4億3000万ページビューに達するサイトも登場している。また、iモードも誕生して4年しかたっていないが、すでにユーザー数は約3700万人、インターネット対応携帯電話契約者全体では約6000万人に達している。
 こうした新しいメディアがもたらしたものは、人々の情報接触機会の飛躍的な増大だ。インターネットを使えば真夜中でも企業情報にアクセスできるし、街中を歩きながらメールのやりとりもできる世の中になってしまったが、これは10年前にはまったくなかった情報環境だ。
 その一方で課題も生まれている。インターネットのウェブサイトは日本だけでもすでに1億サイトあるといわれている。そのため、企業のサイトにアクセスしてもらうにも、インターネット上で広告を効率よく届けるにも、非常に困難な状況になっている。同時に、多くのメディアが登場したことで、既存のメディアも接触頻度が相対的に少なくなってきている。広告を今までと同じだけターゲットに到達させるために、より多くの労力とコストが必要になってきたということだ。
 これを解決するためには、それぞれの媒体の長所を生かした新しいメディアミックスの考え方が必要になる。

マス媒体はピッチャー

 新聞には新聞のよさ、テレビにはテレビのよさがあるが、マス媒体は大きな意味でいえばリーチ媒体だ。一方、インターネットは詳しい情報をいくらでも提供することができる懐が深い媒体だ。マス媒体でリーチを広げ、懐の深いインターネットに誘導する。そういうように、それぞれの媒体の特性をうまく利用することが、これからのメディアミックスには必要になる。
 印刷媒体は詳しい情報が伝えられるといっても、新聞見開き30段や雑誌のタイアップ広告でも情報量には限界がある。ところが、ホームページは、少し大きな企業サイトになれば1万ページ以上ある。それだけの情報がいつでも見せられる状態になっている。マス媒体がピッチャーで、ホームページがその受け皿、キャッチャーミットと考えれば、効率のよいメディアミックスができる。
 ただ、広告主の現状はまだそうなっていないのも事実だ。従来どおり既存メディアだけに出稿すればいいという考え方と、マス媒体は費用もかかるしインターネットだけでいいという考え方のどちらかになってしまっている場合が多い。そういう二者択一は間違いだ。

マスとネットの相乗効果

 各メディアには特性があり、それに適した使い方がある。新聞やテレビはみんなが見ているから、競合他社が広告を出していることもわかるし、広告が載っていたことが話題にもなる。それがマス媒体の強みだ。
 インターネットには、それはない。「昨日あのサイトの、あそこに広告が載っていたね」とはだれも言わない。ユーザーに向けて何も告知していないサイトが偶然見られる確率は限りなくゼロに近い。ただサイトを開設しただけではだれも来ない。新聞は、毎日家庭に届くから、片隅の小さな広告でもだれかが必ず見てくれる。この点がマス媒体とインターネットの大きな違いだ。
 しかし、だからインターネットの媒体力は低いということではない。使い方によってはインターネットはすばらしい力を発揮する。たとえば、検索サイトのようにネットユーザーの多くが利用する所に掲載する広告は到達率が非常に高いし、PCや携帯メールは個人あてに直接訴求できる数少ない媒体で、より深い商品理解やサービスを提供している。そういうインターネット独自の力を理解しないと“ただの箱”というところが、いままでのメディアと違う点だ。
 インターネット広告に対して積極的ではない企業を見ると、宣伝部の幹部の人たちがインターネットや携帯メディアにあまり触れていないことが多い。日ごろ自分が見ていないメディアは、理解がむずかしいということだ。
 携帯メディアも広告媒体やプロモーションツールとして可能性が大きいメディアだが、実際に自分が使っていなければそれがどういうものかわからない。
 携帯電話に「すぐメル」というサービスがある。iモード同士のメール交換は@マーク以下の@docomo.ne.jpを省略できるが、この機能を利用したサービスだ。3、4文字の英数字をアドレス欄に入力して空のeメールを送信すると、アクセスしたいサイトのURLがeメールですぐ返信されてくる。そこをクリックするだけで簡単にそのサイトに飛ぶことができる。
 この仕組みを実際に新聞広告で展開した経験では、掲載日には前日の7倍ものアクセスがお客様から返ってきた。このように携帯電話のサービスを組み合わせると、新聞の効果がリアルにわかるし、さらにサイトの情報を読んでもらえばより深い理解につながる。また、プレゼントやモニターキャンペーンの場合、そこですぐ応募してもらうこともできる。情報の重複接触にもなるし、アクションにもつながる。

新しいメディアを取り込む発想

 広告媒体として使える新しいメディアやサービスが次々に出てくることは、広告主にとって必ずしもいいことばかりではない。広告のコストと手間が今まで以上にかかるようになるからだ。最近の企業ではどの業務でも効率性が求められ、人員が増やせる余裕はほとんどないし、広告費全体も大きく伸びる要素はない。そんな中で新しいメディアを理解し、効率的に活用することは至難の業と言わざるを得ない。その結果、新しいメディアに広告が出稿されにくくなっているが、別の観点から考えると、新しいメディアを育てることは重要だと考えている。
 大きな理由は、経営環境そのものが変わってきたからだ。これまでの大量生産大量販売で、新製品を投入すれば右から左に商品が売れた時代から、お客様のニーズに合わせた商品開発や、お客様との良好な関係づくりが、最近の企業の最重要課題になっている。広告もそういう時代に合わせて変えていかなければならないし、メディアも時代に合った形に少しずつ形態を変えていくべき時期になっている。
 そのとき従来のメディアにとって大事なのは、新しいメディアを拒否するのではなく、取り込むことによって自分たちの補完媒体として育てるという発想ではないだろうか。そうしないと、広告主にとっていつか魅力のない媒体になってしまう可能性がある。
 われわれWeb広告研究会では、こうした媒体環境の変化をふまえて、昨年9月と今年2月に、広告主や媒体社を含めた広告業界全体に対して2度の提言を行っている。Web広告研究会はインターネットの健全な発達に寄与することを目的に1999年に設立された日本広告主協会ディジタルメディア委員会の中の研究会だが、媒体社、広告代理店、メディアレップ、検索サービスなどが自由に参加できる組織だ。

オーディエンス中心の戦略へ

「メディア構造改革」宣言
 まず、昨年9月24日の「メディア構造改革宣言」では、「『媒体中心のメディア戦略』から『オーディエンス中心のマーケティング戦略』へ」「メディアは『メッセージの伝達手段』から『顧客との関係を築く手段』に」「各々のメディアの『測定・検証』に関わる環境整備を」など五つの提言を行った。
 この宣言で最も言いたかったのは、媒体中心のコミュニケーション戦略から、視聴者や読者、インターネットで言えばユーザーの接触状況や接触態度を理解したオーディエンス(情報の受け手)中心のコミュニケーション戦略に変えていくべきだという点だ。
 既存媒体の人たちは、自分たちの媒体を中心に考えがちだ。しかし、先ほどから言っているように、ブロードバンドの普及以降、人々の情報接触の機会は飛躍的に増大している。このため、メディアを効果的に選択して最も効率的な広告キャンペーンを立案することが困難になりつつある。それを解決するのが、オーディエンスから見た新しいメディアミックスということだ。
 また、広告効果データもこれまで媒体ごとに発表されてきた。媒体によって効果測定の対象や時期、方法が違うだけでなく、それぞれ異なった基準がつくられてきた。しかし、適切に各媒体を評価し判断するためには、個々の媒体ごとに「測定・検定」を進めていくだけでなく、人々の媒体接触状況や効果を、同じ土俵の上で可能な限り同じ尺度で比較検討できる環境を整備することが必要だ。そのための業界を超えた協力体制を呼びかけたのが「メディア構造改革宣言」だ。


次のページへ→]



新たなメディアミックスモデルの構築に向けて
岩城陸奥→
もどる