特集 2002.9/vol.5-No.6

変わる新聞広告の掲載基準
医療の現場は規制緩和をどう受け止めているか
 
 患者が医療を選ぶ時代と言われている。しかし、これまで医療情報は、患者同士の口コミが頼りで、医療機関から発信される情報はほとんどない状態が続いていた。
 例外的に福島県郡山市にある総合南東北病院は、広告規制が緩和される前からテレビCMをはじめ広告活動に力を入れてきた。
 この病院で今年1月、患者アンケートを実施したが、「新聞・テレビ」を見て病院を選んだという人はわずか4%だった。これは、医療機関の情報源として依然口コミが重要な役割を果たしていることを物語ると同時に、患者の必要とする情報が広告によって提供できていなかったという事実も示している。

広告緩和に動きの鈍い病院

 医療情報が開示されなかったのは医療法の規制によるものだ。これまで何度か小さな改革はあったものの、病院名と所在地、電話番号、診療科名などごく限られた情報しか表示できない状況が戦後長く続いてきた。医療の情報開示は、医療を受ける側にとって大きなテーマだったといえる。そういう意味では、今回の広告規制緩和は大きな改革だったといえるだろう。
 しかし、今回の改定についてこれまでいろいろな病院を取材したが、関心はきわめて高いが動きは鈍いというのが病院側の反応だった。これまで規制に守られてきた医療機関が広報や広告戦略をあまり熱心に考える必要がなかったこともあるだろうが、今回の改定内容では、病院が広告活動に積極的に取り組もうというモチベーションにはならないということではないだろうか。
 どの病院も患者に来てもらいたいのが本音だが、今回の改定では、医療機関側が患者に対し、本当にアピールしたい部分がことごとく認められていない。手術件数や疾患別患者数の表示は認められたが、肝心の治療成績の表示は客観的な評価ができないという理由で見送られた。治療や手術の成功率などの治療成績を表示できない広告が、治療を受ける側にどれだけのメリットがあるかとなると非常に疑問だ。それが、比較的大規模な改定であるにもかかわらず、医療機関の動きが鈍いことにつながっていると思う。
 病気になったときにわれわれが知りたいのは「どの病院に行けば治るか」ということだ。手術の実績とその成功率などが大きな判断基準になる。ところが、患者にとって最も知りたい部分、おそらく自信のある医療機関にとっては最もPRしたい部分が、今の広告ではできない。

ホームページは規制外

 もう一つの問題は、医療機関のホームページの位置づけだ。最近は病院もホームページを持つようになったが、その位置づけはあいまいなままだ。厚労省は、ホームページは医療規制の対象外ではあるが、不特定多数のものを誘致するような目に余るものは広告規制の対象になるとしている。ホームページは広告ではなく広報であるという判断だ。
 ホームページは民間病院だけでなく国立病院も熱心で、規制が緩和される前から広告では表示できなかった手術件数なども積極的に載せていた。しかし、病院がホームページに載せる手術件数や治療成績に客観的基準があるわけではない。たとえば、手術件数を年間で載せているところもあれば、病院創設以来の累積で載せているところもある。手術を担当した医師が他の病院に移っても昨年実績と言えばうそとはいえない。医療法の規制外のホームページの表示は野放しの状態だ。
 これは確かに問題ではあるが、患者の利益ということを考えると、一概に批判もできない。情報が十分提供される環境にあれば、患者も取捨選択された質の高い情報のみを提供して欲しいと思うだろうが、現在は玉石混交の情報でもいいからとにかく出して欲しいというのが患者側の本音ではないだろうか。

医療機関が自ら発信する時代

 改定を審議してきた社会保障審議会では、今回の医療広告の規制緩和をネガティブリスト方式にするか、ポジティブリスト方式にするかが議論になっていた。広告は原則解禁で例外規定を設けるのがネガティブリスト方式、その逆がポジティブリスト方式だが、最終的には後者の方式で決着している。つまり、個別に定められた事項についてのみ広告できるということだ。これは、受け手の自己責任であることは承知のうえで、少しでも多くの情報が欲しいという患者側のニーズに正面からこたえていない。
 人口の減少や医療報酬制度の見直しなどで、これからは医療機関も競争の時代になる。治療法にしても、今後は情報を提供した上で患者の選択に任せるという方向に変わってくる。当然、医療機関も自ら情報を発信しなければ生き残っていけなくなることは確かだ。

医療ルネサンス




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桜井圀郎氏→


規制が緩和された4つの広告
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