特集 2002.9/vol.5-No.6

変わる新聞広告の掲載基準
新聞広告の信頼性を担保する広告掲載基準
 
コンプライアンスの時代

――広告掲載基準をオープンにする意義はどのへんにあるのでしょうか。
 たとえば、A社の広告を読売新聞に載せたとします。広告掲載基準をオープンにしていれば、対消費者関係でも、対広告主関係でも、この基準に従って審査をしてパスしたから載せましたとはっきり言えるようになります。オープンにして基準がだれにもわかるようにすることが大切なのです。
 今や、ディスクロージャー(情報開示)、コンプライアンス(法令順守)、アカウンタビリティー(説明責任)を根幹とするコーポレートガバナンス(企業統治)が求められています。そういう視点から広告掲載基準を見ていくことが重要になってくると思います。コンプライアンスは、90年のバブル経済崩壊以降、企業不祥事が相次いで表面化し、市民権を得た言葉ですが、日本の場合は基準なしのコンプライアンスを標榜している企業が多いのです。しかし、コンプライアンスを実践するためにはルールを守るための基準、スタンダードが絶対に必要です。その意味で、広告掲載基準も公表して、それをスタンダードにすることが重要です。
 最近、全国紙と地方紙の10社ほどのホームページをチェックしてみたのですが、広告掲載基準を公表しているところはその範囲では1社もありませんでした。これを必要な人はいつでもアクセスして見られるかたちにすべきだと思うのです。98年に私自身が新聞社の審査部を取材して回った時には広告掲載基準は公表していないというところがほとんどでした。要するに秘密にしておいたほうが有利だという考え方です。これも東洋の法意識です。これからは、発想を転換する必要があるのではないでしょうか。

――しかし、広告掲載基準を公表することで、メディアがそれをどこまで保証できるかという問題も一方で出てきませんか。
 広告掲載基準を秘密にしていても公表しても、読者から訴えられる時は訴えられます。そのときに公表しておいたほうがいいのか、秘密にしておいたほうが有利なのか、そう考えること自体、後ろ向きの発想だと思います。
 広告掲載基準を公表したからといって、メディアが広告内容を保証したということにはなりません。むしろ逆で、広告は公表している掲載基準に達しているかどうかを判断して載せているという方が、将来の訴訟に対しても予防になると思うのです。
 ところが、今はそれを伏せていますから、あたかもメディアが広告内容に責任を持っているかのようなイメージを逆に与えているのではないでしょうか。
 広告掲載基準を何のために設けているのか、それをはっきりさせればいいだけだと思うのです。要するに質の悪い広告を出さないためということでしょう。逆にいえば一定の基準から上の広告の内容は自由だということです。また、基準をオープンにすることで「広告はあくまで広告主の自己責任で出すものであり、広告掲載基準はそのためにおいているのであって、保証ではない」ということも明確に言えるようになるのではないでしょうか。

――最近、広告規制が緩和されたものに、弁護士広告、医療広告などがありますが、規制緩和の動きが公的資格の職業にも及んできています。また、それに伴って広告掲載基準も改訂されています。
 公的資格の職業はこれまで保護されてきました。規制緩和というと一般には企業活動が自由になるというイメージを持たれがちですが、裏を返せばすべて自己責任でやりなさいということです。日本株式会社といわれることがあるように、これまでの日本は役所と業界の関係が非常に密接でした。仕事をスタートするまでは大変ですが、中に入って認められたら絶対に保護されるというのがこれまでの日本でした。そういう保護をしないというのが規制緩和です。
 実は規制が緩和されるということは、個々の企業にとっては自己規制を強化しなければいけないということです。企業倫理やコーポレートガバナンス、コンプライアンスが強調されるのも、そうした背景があるからです。共通のルールのもとに、企業活動を行っていくことがますます必要になっている。そういう視点から広告掲載基準を見直していくことが今後は重要なのだと思います。

読売新聞広告掲載基準 広告表示の基礎知識 日本新聞協会発行「広告表示の基礎知識」(改訂第4版)。広告表示に関する諸法規や各業界の自主的ルールが大きく変わったことをうけ、改訂第3版の解説文の内容、参照法規類などを中心に全面的に見直している。
2002年5月発行。A5判/158ページ/定価1,000円。



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規制が緩和された4つの広告

医療の現場は規制緩和をどう受け止めているか
田村良彦記者→
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