特集 2001.7/vol.4-No.4

広告の機能と役割を考える
変容する広告意識

 日本広告業協会はこの4月「変容する広告意識と広告会社の新たな課題」と題する調査リポートを発表した(注1)。この調査の分析監修をした東海大学文学部広報メディア学科助教授・小泉眞人氏に、最近の企業と消費者の広告意識の変化について新たな分析を加えて寄稿してもらった。

注1:「変容する広告意識と広告会社の新たな課題」のお申し込み・お問い合わせは、日本広告業協会。電話03-3562-0876
 
 日本広告業協会「広告の機能と役割」研究小委員会は昨年、「マスメディアとインターネットの情報融合で広がる広告ビジネス」(2000年6月、日本広告業協会発行)を小冊子としてまとめた(注2)。これは、当時、インターネットがメディアとして急速に注目を浴びるようになり、その現状を把握する必要があったからである。
 消費者のメディアおよび広告に対する意識を定性調査(デプスインタビュー調査)から分析、検証を試みた。分析を通して浮かび上がってきたのは、マスメディアとインターネットは、お互いが取って代わる代替関係にはなく、相互に影響しあう補完関係にあるという一つの仮説だった。
 そこで当小委員会では、この結果を踏まえて、本年度は広告に関する意識調査を広告主および消費者に対して行った。
 分析の方法は、アンケート調査によって定量的に検証を行った。さらに、過去(93年)に当小委員会が実施した「広告に関するアンケート調査」との比較分析も同時に行った。

注2:「マスメディアとインターネットの情報融合で広がる広告ビジネス」の内容は、2000年9月読売ADリポートojoを参照。

企業の変化

表1は広告主を対象にした広告の機能についての調査結果である。問1について2000年のデータを降順でソートし、93年と比較した。
表1 広告主の広告意識
表1
*表はエクセルデータでご覧になれます。

1.ブランドの価値創造機能に高い評価

 表1からもわかるように、2000年時点の広告機能(問1)の重要性は、以下のとおりである。つまり、「商品・サービスのブランド価値の構築(92.6%)」「商品・サービスのブランド・ロイヤルティーの向上(90.3%)」「商品・サービスのイメージアップ(88.6%)」の三つが上位を占めており、広告の機能として、商品・サービスについての「ブランドの価値創造機能」が最も高く評価されていることがわかる。
 次いで「広告商品への需要の喚起(86.8%)」「商品・サービスの販売拡大(84.0%)」「販売促進活動との相互補完(83.5%)」などが続いているが、これらは、広告の「販売促進機能」としてとらえることができる。
 さらに三つ目の機能として挙げられるのが「企業の価値創造機能」である。たとえば「企業イメージの形成(76.7%)」「企業理念、企業姿勢の主張(64.0%)」「企業の社会的存在意義の主張(60.8%)」などがそれである。
 これらを前回93年の調査と比較してみると、やはり変化している。93年の時点では広告機能として「販売促進機能(プロモーション機能)」がもっとも高く評価されており、「ブランドの価値創造機能」(コミュニケーション機能)は、まだ今ほど注目されていなかったと考えられる。
 また、問2の重要度が増加した項目の2000年をみても、「商品・サービスのブランド価値の構築(55.7%)」「企業イメージの形成(47.7%)」「企業ブランドのロイヤルティーの構築(46.0%)」が高いポイントを示し、やはりブランドの価値創造機能が高く評価されている。
 調査全体を通しても、昨今の企業や商品・サービスのブランドを取り巻く環境変化の厳しさがうかがえる。そして、そのことが広告の機能や役割に対する評価や期待感に大きな影響を与えていると考えられる。やはり、ここでも93年当時とは大きな意識の差があるようだ。
 以上まとめると、93年から2000年へと、広告主の意識は、広告機能を「販売促進機能」から「ブランドの価値創造機能」へと大きく変容させていったとみてとれる。

2.流通支援・対策から投資家・社会との関係構築へ

 一方、広告の機能として大きく変化した項目が、流通や社会とのかかわり方である。前回は、流通との取引関係を維持・発展させるために広告が機能するという意識が高かった。しかし、今回の結果からは、投資家との関係構築(「投資家への情報提供」48.6%)や企業を取り巻く社会との共生(「企業を取り巻く社会との良好な関係づくり」58.4%)といった方向に大きく意識が変容していることがうかがえる。
 この背景として、二つほど要因が考えられる。
 一つは、日本の流通を取り巻く環境の激変である。日本の流通システムが大きく変化したことで、流通の現場に対する広告の果たす機能が相対的に低下していると考えられる。
 二つ目は、最近の相次ぐ企業の不祥事である。消費者は企業経営のあり方や社会とのかかわり方に、高い関心を寄せている。このことは、広告の機能が単に短期的かつ販売促進的な機能だけではなく、企業全体の長期的かつ関係構築的なコミュニケーション活動として位置づけられ、また意識されていることの一例といえよう。
 以上見てきたように、広告は単にマーケティングの中の一機能、つまり販売促進機能(プロモーション機能)から大きく枠組みを超えた機能が期待されていると考えられる。広告の機能は、確実に拡張しているのである。つまり、より社会性や関係構築性などが内包された「コミュニケーションとしての広告」が求められるようになっているのだ。

3.因子分析からわかった広告の六つの機能

 表2は、因子分析によって、広告主の広告機能に対する重要性の意識を類型化したものである。ここでは、六つの広告機能に関する因子を抽出することができた。これらの広告機能の因子は、それぞれ第1因子が「企業の価値創造機能」、第2因子が「社会的・文化的機能」、第3因子が「販売促進機能」、第4因子が「ブランドの価値創造機能」、第5因子が「非営利活動支援機能」、第6因子が「流通支援機能」ととらえることができる。因子分析にあたり、表2ではバリマックス回転後の因子負荷量を示している。固有値が1以上のみを因子としてとらえ、表に示した。

表2 因子分析による広告機能の類型化(バリマックス回転後の因子負荷量)
表2
*表はエクセルデータでご覧になれます。

4.広告に求める機能は業種で違う

 次に業種別にどのような広告意識の相違がみられるかを検証した(図1)。業種ごとにそれぞれの因子得点が表されている。因子得点が高いほどその志向性が高いと判断する。業種によって、広告の機能に対する意識が大きく異なっていることがわかる。
 たとえば、食品ではブランドおよび非営利支援機能を評価するだけで全体では広告機能に対し否定的な意識を持っている。一方飲料・嗜好品では因子3の販売促進機能のみを高く評価している。
 また薬品・医療用品および精密機器・事務用品では、流通支援機能が高く評価されている。ただし、同じ流通支援評価でも、薬品・医療の場合は、広告のブランド機能が効いているのに対し、精密機器・事務では、ブランドは評価されず販売促進機能が評価されている。ブランドで売る薬品メーカーと販促で売る事務メーカーという構図である。化粧品では、社会的・文化的機能を評価し、家電・AVおよび金融・保険では企業価値創造機能を高く評価している。
 このように、業種によって広告の機能に対する評価や志向性は大きく異なっている。

図1 広告の6つの機能の業種別評価(代表例/業種別の因子得点)
注)グラフの数値は、各業種の因子得点の平均値である。数値が高いほど、その因子の志向性が高いことを示している。

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