特集 1999.10/vol.2-No.7

新聞広告の心理的効果を探る  新聞(印刷メディア)とテレビ(電波メディア)を使った広告展開には、どのような効果が期待できるのか。海外の研究論文を紹介するとともに、前号に引き続き読売新聞社と電通が共同して行った「新聞広告とテレビCFの相乗効果」の実験結果を、今回は商品関与度の高低と接触メディアという視点から紹介する。
印刷メディアとテレビの複合効果 ー海外の研究論文からー 東京経済大学経営学部教授 岸志津江
 メディアミックスについてはいろいろ論じられているものの、印刷媒体とテレビを組み合わせた複合的な心理効果について解説している論文は海外でも決して多くはない。この項では、この複合効果を調査研究した二点の論文とブランド資産との関連を指摘した論文を一点紹介する。
 
項目1 この論文は、実際にメディアミックスした12のキャンペーンを用いて消費者調査を行ったレポートである。新聞広告、または雑誌広告を用いたキャンペーンを選び、それぞれ100サンプルを取り、テストグループ、コントロールグループに分けて広告露出を行い、その結果得られた効果データを比較し、そのデータ解析から10の知見をまとめている。



 テレビ広告と印刷広告を結びつける10のメリットは次の通りである。
(1)印刷広告で見た知識によってテレビ広告を新しい目で見ることになり、テレビ広告をディテールまで着目するようになる。
(2)印刷広告で見た人は、よりテレビ広告への反応が高まる。
(3)印刷広告はテレビのメッセージに情報を付加する。
(4)印刷広告はテレビ広告のメッセージを強化する。テレビ広告で主張していることを支持し強化することに貢献する。
(5)テレビ広告のメッセージから解釈できること(インプリケーション)を、印刷広告はさらに拡張する。
(6)テレビ広告のメッセージで何を言いたいかを理解させる。CMの中のいろいろな要素を結びつけ理解させる。
(7)ブランドアイデンティフィケーションを強化する。正確なブランドの表象(マークやロゴなど)を理解させ、商品にバラエティーがある場合、その違いを理解させる。
(8)商品をより親しみやすくする。
(9)商品特性に焦点を合わせる。テレビ広告は商品パーソナリティーやイメージを生み出すが、印刷広告は理性的な商品特性を伝達する。
(10)商品に対してより好意的な感情を生じる。
 このほかに留意点として、印刷広告とテレビ広告にクリエーティブ的なリンクをつくることの大切さを指摘している。

How print and TV interact: "The media multiplier"
By Guy Consterdine, Consultant. ADMAP,May 1990, p41-45


項目2 この研究は、広告会社と雑誌発行社が共同で「雑誌とテレビとのシナジー効果」を知るために行われたものである。その内容は雑誌とテレビをそれぞれ単独で広告した場合と組み合わせて広告した場合のコミュニケーション価値を調べた。ここでの知見は、雑誌広告というだけでなく新聞広告も含めた印刷広告にも共通していると考えられる。
 従来は広告効果を見るときに再生(recall)を最重要な尺度としてみることが多かったが、再生が必ずしも購入意図に結びつかないので、この研究ではブランド選択を重視している。
 過去にイギリスで行われた調査では、テレビだけを見せるよりもメディアミックスをした方が広告コピーの記憶想起が高まるとされていた。ただこの研究は強制的にテレビや雑誌広告を見せるものであり研究上は望ましくないので、より自然な調査方法を採用した。
 調査に参加する広告主を募ったところ、クラフト・ゼネラルフーズ、ワーナーランバート、レイノルズ・メタルが参加を決めた。

 まず、テストの方法論開発が行われ自然な調査方法を検討した。その結果、広告への自然な接触環境にするために、雑誌については、ピープルリーダーというテレビカメラを用いた。これは、二つのテレビカメラからなり、一つは調査対象者の目に、もう一つは見ている雑誌のページに焦点が合っているものである。これで雑誌のどの広告を見ているか判定するのである。テレビについては、事前に用意した三チャンネルの番組を流せるシミュレーテッドテレビという方法で、対象者は三チャンネルから好きな番組を選べる。どのチャンネルに合わせたかが記録されているので、どの広告に触れたかわかる。
 次いで第二段階としてコミュニケーション効果の研究を行った。調査は全米八地域で行い、対象者はショッピングモールでリクルートされた。広告主からも、広告テスト商品のターゲット、競合ブランド、広告コンセプトなどの情報を提供してもらった。

ブランド選択指数 調査対象者は3群に分けられた。各群は200人である。
[第一群]妊娠検査薬のテレビ広告二回、ホイップクリームの雑誌広告二回、ラップの雑誌広告一回/テレビ広告一回
[第二群]妊娠検査薬のテレビ広告一回/雑誌広告一回、ホイップクリームのテレビ広告二回、ラップの雑誌広告二回
[第三群]妊娠検査薬の雑誌広告二回、ホイップクリームのテレビ広告一回/雑誌広告一回、ラップのテレビ広告二回
 調査は以下の流れに沿って聞く形で行われた。
(1)商品ごとにどのブランドを選択するか聞かれる(事前の「ブランド選択」)。
(2)テレビ、雑誌を自分の好みで選び、視聴・閲読する。
(3)すべての広告についてブランド認知を聞かれる(再生、再認)。
(4)商品ごとにブランドの選択を行う。
(5)競合も含めたブランドの属性信念(イメージ)を聞く。

 調査の結果は次の通り。
1)ホイップクリーム、妊娠検査薬は「テレビのみ二回」、「雑誌のみ二回」より「雑誌一回/テレビ一回」の方がイメージ得点が良かった。ラップについては、複数メディアを使った方が少し低い評価であった。
2)ブランド選択では、ホイップは、「テレビ二回」が指数で103、「雑誌二回」が106、「テレビ一回/雑誌一回」が115であった。ラップでは「テレビ二回」が125、「雑誌二回」が131、「テレビ一回/雑誌一回」が118であった。妊娠検査薬では、「テレビ二回」、「雑誌二回」より「テレビ一回/雑誌一回」が指数で高いブランド選択率を示した。
 まとめとして、雑誌とテレビのメディアミックスを行う方が単独メディアを使うより効果的であることがわかった。雑誌はブランドの競争的イメージを上昇させ、テレビと雑誌との複合では更にイメージを上げることができる。

The research study:"The advertising impact for magazines in conjunction with television"
(A joint research project of magazine publishers of America and J.Walter Thompson,Inc.)

By Marian G.Confer (Vice President,Research Magazine Publishers of America) and Donald McGlathery (Advertising Research Director, Peterson Publishing Company)
Journal of Advertising Research,31(1), February/March 1991, RC-2-5


項目3 この論文はブランド論の大家であるKellerが、マーケティングコミュニケーションを統合して効果的なブランド資産を高める方法について紹介している。
 Kellerは、「消費者ベースのブランド資産」、すなわち消費者のブランド認知とブランド連想の両者がブランドへの反応を決める資産であるとしている。
 消費者がマーケティングコミュニケーションをどのように処理するかは消費者の動機、処理能力、購買現場での想起能力に依存する。従って消費者の動機をかき立て、処理しやすいようにメディアを組み合わせる必要がある。強いブランド資産を作る場合は、広告と、たとえばパッケージなどの複数のマーケティング要素を組み合わせる戦略が必要である。広告メッセージについてもテレビ、ラジオ、印刷といったメディアを相互にリンクをとりながら統合して行くことが効果的である。

 テレビ広告に加えて印刷広告を加える意義については次の通りである。消費者はテレビ広告を情報処理する際は、接触の仕方が受動的なので、ブランドのメッセージを評価するよりはタレントや音楽など広告の演出的要素を感じたり思考したりする程度である。従って弱いブランド連想しかできない。印刷広告も、製品の表現への関与が低いと、すぐ別のページに目を移したりする。しかし、事前にテレビ広告を見ていた人は、印刷広告に注目をし、ブランドのメッセージや特徴について考える。しかも印刷広告は自分のペースで処理できるので、ブランドについて考えたり、ブランド評価を確立したり、テレビ広告の印象も含めてブランド連想を強化する。つまり、印刷広告による強化戦略をとると、消費者の動機、処理能力、処理機会を高め強いブランド連想を作る。もちろんこの場合、メッセージが共通しているなどのリンクが必要である。

"Brand Equity and Integrated Communication," in E.Thorson and J.Moore,eds.
Integrated Communication: Synergy of Persuasive Voices,
Lawrence Erlbaum, 1996, pp.103−132. by Kevin Lane Keller
Edited by Esther Thorson and Jeri Moore




(→商品関与度の高低から見たメディア効果ヘ
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