特集 1999.8/vol.2-No.5

ここまできたデジタル送稿
インタービジョン
 広告会社にとって広告のデジタル化は、どのような意味を持つのだろうか。また、新聞広告のEDI化をどう受け止めているのだろうか。「デジタル・エクスプロージョン」を企業スローガンに、デジタルに特化した広告サービスをめざすインタービジョンに聞いた。
 
 この六月、インタービジョンでは、六本木のオフィスを会場に、ソニーグループの関連各社を呼んでオープンハウス形式のイベント「Digital Advantage INTERVISION'99」を開催した。インタービジョンが開発したツールやシステムをグループ各社に紹介するためのイベントだが、ここで「オープンハウス・ニュース」という当日のイベントの様子を伝える号外を一時間おきに発行した。
 ソニーの出井社長が一階のエントランスホールに到着した様子をデジタルカメラで撮影し、八階の会場に到着するころには、出井社長到着の「オープンハウス・ニュース」が発行されるという具合だ。この間わずか十分。
 なぜ、こうしたスピーディーな号外発行が可能かといえば、それは六本木のインタービジョン内に、デザイン、コピーなどのクリエーティブ部門とともに、制作作業をフルデジタルで行える機器・環境・運用体制を備えたセクションがあるからだ。インタービジョンではこの部署をDigital Workshop(DWS)と呼んでいる。
 このDWSが、インタービジョンのEDI推進の中核を担っている。 

クリエーティブ環境のデジタル化

六角氏 インタービジョンの制作部門であるクリエイティブ本部は、グラフィック制作やCF制作などを行うクリエイティブ局とDWSの二局体制で構成されている。六角健二・DWS部長は「二つの部門を同じ本部内に置いたのは、早期にデジタルクリエーティブのノウハウを取得するのが目的です。やはり、同じ場所にいて、同じ空間で作業をしていると、いろんなことが分かってくる」からだという。
 デジタル技術には利点もあれば弱点もある。広告の表現には、感覚や感性を伝えることが重要な場合が多い。登場してまだ日の浅いデジタル技術を皮膚感覚として身に付けているクリエーターはほとんどいない。制作と技術の距離が近ければ、その特徴を知った上で、クリエーターは広告をつくる、あるいは制作者の微妙なニュアンスやセンスをデジタル技術で表現することも可能になる。
 社内だけでなく社外の協力会社のOSやアプリケーションのバージョン管理、品質管理もDWSの仕事だ。外でつくっているものは、必ずDWSを通すためトラブルはほとんどない。
 遠方の広告主の場合は、広告原稿をPDF形式にしてオンラインでチェックしてもらうこともある。ただし、最終的な校正ゲラは、従来通りの方法だという。
 「新聞社のデジタル入稿も同じですが、最終的にはゲラで確認しないとクライアントは『うん』と言ってくれることは少ない。ただ、徐々にこれは変わってくると思う」(六角氏)
 新聞社へのデジタル送稿の実証実験も九七年から行っている。モノクロ、カラー、本紙、別刷り、段数も五段、七段、十五段と基本的なパターンはすべて実証済み。あとは、新聞社の受け入れ体制を待っている状況だという。
 制作のデジタル化だけでなく、「クライアントのニーズに合わせて、フレキシブルにサービスを提供できるインフラも整備した」と六角氏は語る。
 NTTと日本サイテックス社は昨年十一月から広告出版印刷業間ネットワークサービスとして光ファイバーを使った「Vio」の実用実験を開始した。世界中の光ファイバーともリンクした回線だが、こうした大容量の回線もサーバーも既に用意した。
 また、数人で制作業務を行っている制作会社との通信やカスタマイズの必要なクライアントとの通信環境もDWSで設計可能だ。
 「広告のデジタル化を業界の先陣を切って進めていく気概は持っている」が、先行することのデメリットも感じていると六角氏はいう。「今日のスタンダードが明日のスタンダードではない」といわれるほどデジタルの世界は変化が速いからだ。

広告のデジタル化がもたらすもの

篠崎氏 広告制作や通信環境ではデジタル化を既に完了しているインタービジョンだが、広告のデジタル化は、新聞広告のあり方や広告会社の業務をどう変えていくと見ているのだろうか。
 「新聞広告のEDIは、狭い意味では、新聞社と広告会社を結ぶ線でしかありませんが、クライアントや制作会社、さらには消費者とも結ぶ線にもなる」と六角氏はみている。
 例えば、読者にあらかじめ希望のジャンルの広告を聞いておき、新聞に広告が掲載されたらそれをPDFにして、インターネットなどを経由して送る「プッシュ型の広告」は簡単にできる。
 また、従来よりも細かい配布エリアで広告の切り替えができる可能性もある。速報性を利用して「今は非現実的に聞こえるかもしれませんが、天気予報などをもとに、雨が降ったらA原稿、晴れたらB原稿などと使い分けることもできる」。
 新聞広告をインターネットのプラットフォーム、入り口にする使い方も確実に増えると、六角氏は予想する。
 ソニーの犬型のロボット「AIBO(アイボ)」は、インターネット上だけで販売された。「新聞広告は、十五段の真ん中にアイボがあって、あとはアイボのURLだけ。URLを告知するためだけに新聞を使ったという意味で画期的だったと思います」

インターネット上でEDIを実現するJメール

Jmailホームページ ソニーが運用するJメールは、希望した情報をEメールで送ってくれる電子メール新聞だが、この広告集稿はインタービジョンが一括して担当している。広告掲載の受け付けから校閲・校正、決済を含めて、すべてオンラインで処理している。新聞社がEDIで目指しているものをすでに実践しているといっていいだろう。
 「Jメールの情報はエンターテインメントに特化していますが、自分で欲しい情報を選べる。アメリカのメジャー新聞社サイトでも記事をカスタマイズして提供してくれるところはない。まだ、マスメディアの延長線上でインターネットを使っているという気がします」。新聞社のインターネットによる情報提供や広告アプローチも、このへんが新しい切り口になるのではないかと六角氏はみている。

デジタル送稿に向けての現実的な壁

石井氏 広告会社の中でも、新聞社との窓口になっている媒体局はEDIをどのようにとらえているのだろうか。新聞担当の立場からデジタル送稿の課題を指摘するのは、篠崎進・媒体局新聞部長だ。
 「デジタル送稿の究極の形では、ぎりぎりまで原稿をつくる時間が持てるという利点があります。その時の校閲のシステムをどうするかという問題が、まずあげられます。
 また、n対n、つまり複数の新聞社と広告会社の間を広告が電子上で流れていくわけですから、そのセキュリティーも当然、つぶしていくべき問題です。
 そのはるか手前に標準化の問題があり、さらにカラー原稿のゲラの問題、デジタル入稿のバックアップ(紙焼き)をなくすという課題もある」
 石井イサヲ・媒体局進行部長も「広告業界と新聞業界が話し合っているのもまさにそこです。現場の人がいま何に困っているかを少しずつつぶしていかないと、進まない。その壁はかなり高い」と話す。
 石井氏が特に指摘するのは広告サイズの問題だ。アメリカでも新聞社による広告サイズの問題が起こったが、大手広告主と広告会社で解決努力がなされ、新聞の出稿量にも影響があったという。「現在、全国展開を新聞でやろうとした場合、新聞ごとに原稿を作りかえなければいけない。これには膨大なコストがかかるわけです。それが同一原稿ですめば、今度は広告掲載の方に回せる」 
 EDI、デジタル送稿への対応は新聞社によってかなり差がある。全国の新聞が標準化に向け足並みをそろえなければ、デジタル化のメリットは半減される。
 EDIの時代は確実に来るだろう。しかし、その前に超えなければならない現実の壁がいくつかあるのも確かだ。



新聞社と広告会社をつなぐ“標準化”の問題
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