特集 1998.5/vol.2

規制緩和時代のマーケティング ―ビッグバン本格化―
事例3 再販制度廃止で変わる化粧品の販売政策 山岡良夫

 化粧品業界の法的保護である再販売価格維持制度が全廃されて約一年が経過した。再販制度の全廃は、小売店が自由に価格を決められるようにすることで、価格競争を促すことがねらい。
 制度の終えんは、当然ながら再販制度とチェーンストアシステムが結びついて業界をこれまで支えてきた“制度品システム”(注1)という枠組みが崩壊することを意味する。とはいえ、資生堂、鐘紡、コーセーなど大手メーカーのチェーンシステムは存続しており、システム自体は何ら変わらない。
 再販全廃により、市場の混乱が予想されたが、全国的には一部地域を除いてはほとんど混乱は見られなかった。以前から行われていた価格競争以上の競争にはなっていない。再販全廃前に始まったジャスコ、ダイエーなどのセルフ販売化粧品の値引きは、他の量販店、チェーンドラッグを巻き込む形で広がり、全国的に見れば地域によって多少の違いがあるものの、一〇%〜二〇%の値引き販売が定着しつつある。
 そうした中、大手メーカーのマーケティング政策として注目される動きは、販売チャネルの多様化に対応して、各流通チャネル別の棲(す)み分けを狙った商品政策と販売形態別商品政策(カウンセリング販売商品とセルフセレクション販売商品の区分け)の二本立てを明確に打ち出し始めてきていることが挙げられる。
 たとえば、化粧品専門店(チェーンシステム)専用商品として、資生堂は「ベネフィーク」、鐘紡は「トワニー」、コーセーは「プレディア」といったブランドを開発・導入し、専門店が生き残る差別化戦略のための商材を提供している。はっきりいって、専門店が扱う多くのチャネルで販売されているマス型ブランドの価格流動化は、自由競争の市場メカニズムの中では避けられない。したがってチェーンシステムを経営基盤としているメーカーは、専門店支援対策に大きなエネルギーを投入していると言っていい。
 この四月一日から資生堂は、全国のチェーンストアを通じた顧客の会員組織である「花椿CLUB」のメンバー(約八百九十万人)を対象に“花椿CLUB資生堂化粧品保証制度”(注2)をスタートさせた。これは花椿CLUBのメンバーとお店、資生堂が、これまで以上に長期的で良好な関係を築いていくために導入された施策。ただ、この制度は趣旨に賛同したチェーンストアとの協力関係によって推進していくものであることから、どれだけの広がりを見せるかが注目される。

注1)化粧品メーカーは、販売ルートによって、次の三種に分類される。
[制度品メーカー]系列の販売店(または販売会社)を通じて顧客に販売する
[訪販品メーカー]メーカーのセールスマンが顧客を直接訪問して販売を行う
[一般品メーカー]卸売店・代理店を通じてスーパー等の小売店経由で顧客に販売する
注2)花椿CLUB資生堂化粧品保証制度は「ご購入品お取り替えサービス」と「ご愛用品お取り寄せサービス」の二本柱で構成されている。



(→ビッグバン本格化へ
(→ビジネスチャンスを生かす7つの視点へ
(→事例1●サービスによる商品力強化へ
(→事例2●規制緩和のニュース性へ
(→景気対策としての規制緩和へ
(→競争激化で試される日本のプロポーションへ
もどる