読売新聞 海外駐在員リポート

「甘さ控えめ」とは言わせない、Sweet が運ぶ成功の味
スマホの急速な普及に伴いSNS、動画、ゲーム、決済、配車など各種アプリの利用者も増え続ける東南アジア。日常生活へのスマホの浸透を背景に、インターネット接触時間は欧米よりも長い。おのずと広告市場もデジタル、特にモバイル向けを中心に成長を続けており、コンテンツマーケティングも隆盛だ。
東南アジアのパブリッシャーで先行するのがシンガポール・プレス・ホールディングス(以下、SPH)だ。同社は英字紙「The Straits Times」をはじめ、4言語で10以上の新聞を発行する同国最大のパブリッシャーだ。2018 年にクリエイティブ&コンテンツマーケティングスタジオ「Sweet」を総勢125人で立ち上げた。パブリッシャーだからこそ提供できる信頼性はもとより、マーケティング戦略の策定と投資対効果へのコミットを強みとするのが特徴だ。主なサービス領域は「統合型マーケティングキャンペーン」「ブランド変革」「クリエイティブ制作」「コンテンツ制作」「投資対効果測定・管理」の五つで、SPHメディアへの広告出稿に固執しない。
Sweet 設立の端緒は2014 年にまで遡る。SPH はデジタル関連部署として「ContentStudio」を設立し、コンテンツマーケティングに取り組み始めた。2017年にこれを「SPH Content Lab」に改称、デジタルに限らずSPH 傘下の全メディアを活用してブランデッドコンテンツを制作する組織とした。この間に、数々の受賞歴を持つクリエイターを広告会社から招き入れたクリエイティブ専門ユニット「CreativeLAB」、SPH 内外からジャーナリストとグラフィックデザイナーが集ったビジュアルジャーナリズム専門ユニット「THINK INC.」も並行して運営した。また、2016 年にはコンテンツマーケティングに特化したエージェンシーである「Brand New Media Singapore」の株式を3割超取得、パートナーとして迎え入れ、この分野の能力を拡張した。
Sweetはこれらの組織を統合し、ワンストップで広告主ニーズに対応する新ブランドというわけだ。トップは元Brand New Media Asia のCEOであるダミアン・ブレイ氏が務める。
シンガポール航空のシドニー訴求キャンペーン「#SIASydneyMemory」では、シドニーへ自分探しの旅に出る男性の旅路と恋模様を描いた動画とウェブサイトを制作。消費者と等身大の目線で進む物語の中で自然に観光スポットが登場する構成だ。2 週間強で700万インプレッション、3万5000のユニークビジターを獲得し、Sweetによるとキャンペーンは30万米ドル相当の価値をもたらした。広告主からは続編への関心も寄せられているという。
実質的に総合広告会社に近しい機能を持つSweet だが、前出のブレイ氏はその立ち位置を「広告主をサポートするだけでなく、広告会社のパートナーであり補完役でもある」と規定する。広告主、広告会社、そしてSPHに甘美な成功の味をもたらすのが同氏の肩書、「Chief Sweet Officer」の役目だ。

SPH の公式リリースより

Sweet のウェブサイトより
杉崎雄介 バンコク駐在
日本の新元号「令和」のニュースをタイのテレビで見ました。タイの暦は仏暦で、役所の書類、食品の賞味期限、広告内のキャンペーン期間など全て仏暦表記です。今年は仏暦2562 年。時折、下2 桁のみ表記もあり、例えば「2562 年4月18日」は「18/4/62」です。これがわかれば問題なし! とはいかず、月表示がタイ語の場合もあり、その時は速やかに解読を諦めます。