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脚本を手がけた映画『一度死んでみた』が公開に 「やりたくても絶対できないこと」がモチーフです(電通 CDC  シニア・プライム・エグゼクティブ・プロフェッショナル 澤本 嘉光さん)

年間の最優秀広告クリエイターを選ぶクリエイター・オブ・ザ・イヤーを3回受賞するなど数々のヒットCMを手がけてきた電通CDC シニア・プライム・エグゼクティブ・プロフェッショナルの澤本嘉光さんが、3月20日から全国公開される映画『一度死んでみた』の脚本を手がけた。若返りの薬の研究過程で偶然できた、「2日間だけ死んじゃう薬」で製薬会社の社長(堤真一)が死を体験。その間に、会社乗っ取りを狙うライバル会社の手先と、社長である父を救おうとする娘(広瀬すず)たちが大騒動を繰り広げるコメディーだ。映画への思いや広告媒体としての新聞の有効性などについて話してもらった。

「自分の葬式」と「若返りの薬」が脚本のヒント

── 映画『一度死んでみた』はどのような経緯で企画されたのですか。

前に脚本を書いた『ジャッジ!』(2014年)が幸い好評で、プロデューサーから「次も面白いコメディーを作りましょう」と声をかけていただきました。それでみんなに喜んでもらえるコメディー映画を作りたいと考えました。原作もののコメディーはありますが、オリジナル脚本のコメディーって日本映画ではあまり多くないんですね。でも他の仕事をしていて、製作するまでに4年以上たってしまいましたけれど。

映画『一度死んでみた』

©2020 松竹 フジテレビジョン

※映画『一度死んでみた』ホームページ:https://movies.shochiku.co.jp/ichidoshindemita/

今回のきっかけは、一緒に仕事をしている広告業界の先輩から「自分がやりたくても絶対にできないことがある」という話を聞いたことでした。それは、「自分の葬式を見ること」だと言うのです。実際に自分の葬式を見たらどんなことが起こるんだろう、それは面白いな、と思いました。でもそれだけでは映画になりにくい。そんな時に、確か2014年の正月でしたが、たまたまNHKの番組を見ていたら、まさに若返りの薬というのが研究されている、ということが特集されていました。だけど、それで何が起こるのだろう。実際に若返りの薬ができたとして、それを手に入れるには大変なお金が必要に違いない。そうすると、富める者だけが長生きして、貧しい者は長生きできないということになります。命をお金でコントロールできるということは果たして良いことなのだろうか、という違和感を覚えました。その二つを合体させて脚本を書き始めました。

広瀬すずさん

広瀬すずは天才

── 広瀬すずさん、堤真一さんのほか、吉沢亮さん、リリー・フランキーさん、小澤征悦さん、妻夫木聡さんら豪華な顔ぶれがそろいました。

すずちゃんはずっと昔から一緒に仕事をしていて、10代半ばから知っています。とても勘が良くて、会話のリアクションなど、どうしたらセリフが良くなるか自然に身についている。天性の天才だと思います。CMの短い時間でこれだけ面白くできるのだから、長い映画だともっと面白くなるに違いない、ぜひやってほしいと思いました。この映画はまず、すずちゃんありき、で始まったようなものです。吉沢君はこれまで仕事をしたことがありませんでしたが、とても演技がうまいので、いつか一緒に仕事をやりたい、と思っていました。

堤さんやリリーさんは日野自動車のCM「ヒノノニトン」を手がけたCMディレクターで、今回初めて映画を監督した浜崎慎治さんの人脈です。堤さんは誇張表現がとても上手にできる人。彼が出ているだけでコメディー色が明確になります。みんなが堤さんに負けていられない、という雰囲気になり、現場のムードを作ってくれました。

吉沢亮さん
堤真一さん、リリー・フランキーさん

テレビCMで培ったスキルで映画を作る

── これで映画の脚本は3作目です。

最初の『犬と私の10の約束』(2008年)は、松竹のプロデューサーが、インターネットで「犬の10戒」というのを見つけて、「これで映画を作れませんか」と持ちかけてきたのがきっかけでした。もともと映画を作ってみたいという思いがあって引き受けました。

次の『ジャッジ!』(2014年)は、国際広告祭をめぐるドタバタコメディーですが、業界話をやりたかった訳ではありません。『犬と私の10の約束』が動物と人間がテーマのエモーショナルな話だったのですが、私はどちらかというと、SFやコメディーの方が好きなんです。『犬と私の10の約束』をご一緒したプロデューサーが、「今度は澤本さんの好きな世界観でやってみませんか」と言ってくれて、いくつか出した案の一つがこれでした。広告の世界って、私の経験では想像より面白いことが実際にたくさんあるんです。広告業界の裏話をおもしろおかしく描くことで、見た人が笑いながら広告に興味を持ってくれるようになってほしいと思いました。そして若い、才能ある人たちが、こんな世界で働いてみたいと、広告業界を志望してくれるようになってほしい、という思いを込めました。

©2008「犬と私の10の約束」フィルムパートナーズ

■『犬と私の10の約束』DVD 好評発売中!
■価格:4,180円 (税込)
■発売販売元:松竹株式会社

©2008「犬と私の10の約束」フィルムパートナーズ

©2014「ジャッジ!」製作委員会

■『ジャッジ!』Blu-ray & DVD 好評発売中!
■価格:4,700円(Blu-ray)  / 3,800円(DVD) + 税
■発売元:フジテレビジョン / 販売元:松竹株式会社

©2014「ジャッジ!」製作委員会

映画監督はしないのですか、と聞かれることもあります。私も以前はCMを企画から映像化まで全部自分の手でコントロールしたい、と考えていた時期もありました。でも、他の人が演出した方が、自分が頭の中で考えていた物よりも格段に面白くなることがある、という経験を何度もしました。それからは、私は企画や脚本作りに専念して、後はそれぞれの専門家に任せた方が良い、と思っています。

── 今回初めて映画を監督したCMディレクターの浜崎慎治さんとは以前も一緒に仕事をしていたのですか。

浜崎さんとは、家庭教師のトライ「ハイジ」のCMなど何度も一緒に仕事をして、気心が知れています。僕の脚本には普通だとあり得ないような、ちょっと変なセリフがあるんです。でもそんな脚本でも浜崎さんなら大丈夫、すべらずに映像化してもらえる、という安心感がありました。まさにCMを作っているときと同じ関係性ですね。彼が参加してくれて、企画が前に動き始めました。

── 『嫌われ松子の一生』(2006年)、『告白』(2010年)などの中島哲也監督や、『桐島、部活やめるってよ』(2012年)、『紙の月』(2014年)などの吉田大八監督ら、CMディレクター出身の映画監督の活躍が目立っています。

少し前までは、若い時に映画を撮りたかったけれど映画会社に入れずにCM制作会社に入った人が、「さあ映画をやるぞ」と意気込み、全力でやって三振してしまうようなことが、たびたびあったのではないかと思います。でも今はCMで培った構成力とか脚本、映像のスキルを上手に生かして映画を撮っている人が多いのではないでしょうか。以前は映画とテレビCMとは全く別世界という感覚でしたが、映像表現としてそれほど違いを感じません。私も仕事の延長線上で、長い動画を撮っているという感覚です。もちろん、CMにはお客様であるクライアントが求める方向性やテーマを尊重しなくてはならない、ということはありますけれど。今はNetflixなどの動画配信が盛んになり、映画とテレビの垣根が崩れています。どういう手段で見るかということが違うだけで、映像コンテンツとしては基本的に変わりない。制作者側も見る側も同じような感覚になってきているのではないでしょうか。

澤本嘉光(さわもと よしみつ)さん

新聞は「事件」を起こす発信源になる

── 読売新聞のCMも長く担当していますね。

これまではオリンピックと重なることが多くて、オリンピックを新聞で読むと何が起こるかということをテーマにしていました。新聞の取材力でできた記事を読み、そこから得た知識を持って競技を見ると、全く知識がない場合とは少し違って見える。そんなことを少し誇張して描きました。

昨年の場合は、新聞広告を出しましょうということがテーマでした。新聞というのは、購読している人だけでなく、購読してない人にも伝えることができるメディアで、使い方によってはとても有効なんですね。そして購読者は、年齢が高く、社会的地位がある人が多い。社会的に影響力がある人からいろんな人に伝わる可能性があります。他にそうした特性があるメディアはありません。そういう意味で私は、新聞というメディアには非常に大きな価値があると思っています。新聞広告単体だけで考えるのではなく、そこを起点としてキャンペーンを展開できる。予算的にも効率的にも非常に良いと思います。

また、これまではTwitterやFacebookなどのSNSは、新聞の敵だと思われがちでしたが、SNSと新聞は意外と相性は悪くないのです。新聞広告が話題となってTwitterで拡散するなどかつての新聞広告でない使い方があると思います。「事件」を起こす発信源になりうるのが新聞です。

澤本嘉光(さわもと よしみつ)さん

澤本嘉光(さわもと よしみつ)

(株)電通 CDC シニア・プライム・エグゼクティブ・プロフェッショナル
1966年、長崎市生まれ。1990年、東京大学文学部国文科卒業、電通に入社。ソフトバンクモバイル「ホワイト家族」、東京ガス「ガス・パッ・チョ!」、中央酪農会議「牛乳に相談だ」、家庭教師のトライ「ハイジ」、トヨタ自動車「ドラえもん」、読売新聞など、次々と話題のテレビCMを制作している。著書に小説「おとうさんは同級生」、小説「犬と私の10の約束」(ペンネーム=サイトウアカリ、映画脚本も執筆)。2014年1月に公開された映画「ジャッジ!」の脚本も担当。クリエイター・オブ・ザ・イヤー(2000年、06年、08年)、カンヌ国際広告祭賞、ADFEST(アジア太平洋広告祭)グランプリ、クリオ賞、TCC賞グランプリ、ACCグランプリなど受賞多数。数多くの海外の広告賞の審査員も歴任。

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