マーケティングの新レシピ

2008.12/vol.11-No.9


お歳暮は贈りましたか?

 秋口からの内外の激動を引きずりながら、年末を迎えることになった。景気後退とは言え、年末年始は個人消費が最も活発になる時期だ。売りの現場では、必死の努力が続いている。
 年末商戦は、さまざまな慣習から成り立っている。クリスマスのように家族や恋人どうしで祝うものもあれば、忘年会のように仕事関係で集まるものもある。
 そんな中で、古くからある慣習が「お歳暮」だ。毎年のように大手百貨店の「出陣式」がニュースになるが、今年は例年より早めにスタートさせた店舗もあったようだ。
 贈り主が企業のケースは、景気後退の波が直撃する。こうした贈答品は真っ先に経費削減の対象となり、贈答先や贈答内容が見直される。百貨店としては、厳しい先行きを見越して先手を打って行きたいところなのだろう。
 では、個人が贈り主の場合はどうだろう。冬のボーナスがあまり芳しくないとはいえ、お世話になった人への挨拶をないがしろにするわけにはいかない。
 だが、歳暮という慣習は日本人の中に、どのくらい根強く残っているのだろうか。

年々減少する歳暮の慣習

 この秋に公表されたばかりの、「生活定点2008」という調査がある。「生活定点」は、博報堂生活総合研究所が2年に一度おこなっているリポートだ。この中にはギフトの慣習について調べているデータがある。
 「お歳暮は毎年欠かさず贈っている」と答えている人の割合はどのように変化しているのだろうか?
 結論から言うと、10年の間に13ポイントも低下している。これは、どの年代でも見られる傾向である。【図1】

図1 お歳暮は毎年欠かさず贈っている(単位:%)
図1 博報堂生活総合研究所「生活定点2008」

 全般的には年齢が下がるほど歳暮の習慣は薄い。そして、この10年間で特に目立つのが30代の変化である。男女とも98年から08年にかけて急減したのである。ちなみにこの傾向は中元に関しても同様である。
 今の30代の多くを占める、70年代前半生まれのいわゆる「団塊ジュニア」層が、日本の慣習を大きく変えようとしていることが推測できるのだ。
 背景はいろいろあるだろう。まずは家族関係だ。親が戦後生まれになり、親子の間で歳暮を贈るような感覚が薄れたのかもしれない。
 また、職場の空気も変わった。上司への付け届けをする習慣も減っていると思われる。そんなことをしてまで上に取り入っても、リストラでどうなるかもわからない。自宅まで物を贈るという発想にはならないだろう。
 さらに結婚式で媒酌人を立てることも減った。かつては、歳暮や中元の送り先としては欠かせない対象である。
 つまり「歳暮を贈る相手」がいなくなっているのである。
 いつまでも、こうした慣習に頼って売り上げを維持することは難しい。流通業界などは大きな転換点を迎えているわけだ。

儀礼を超えた温かい消費へ

 一方で、こうした儀礼的ギフトに対する「疲れ」のようなものも見えてきている。
 「お中元・お歳暮でも、贈答品は人によって変えている」と答えた人の割合も低下しているのである。【図2】
 個性化・多様化が言われているようでいて、現実は必ずしもそうではないようだ。歳暮を贈る人自体も減っているし、贈る際も「まあ、そこそこでいいか」という感覚が垣間見えてくる。慣習というよりも、惰性化しているのが、現実なのである。
 一方で、ギフト全般が廃れていくのかというと、必ずしもそういうわけではなさそうだ。問題は消費者が大きく変化しているのに、「儀礼的なギフト」への依存がまだまだ高いということなのである。
 実はこの調査には、ひとつ興味深い質問が織り込まれている。それは「贈り物をもらって、迷惑だと思ったことがある」と答えた人の推移だ。【図3】

図2 お中元・お歳暮でも、贈答品は人によって変えている(単位:%)
図2
図3 贈り物をもらって、迷惑だと思ったことがある(単位:%)
図3 いずれも博報堂生活総合研究所「生活定点2008」

 皮肉なことに、歳暮や中元の慣習が減少するのにあわせて、こうした「迷惑ギフト」も減っているのである。
 つまり、今までの儀礼的ギフトには明らかに過剰な部分も多かったことを物語っている。
 別に日本人が人付き合いに淡泊になったとか、絆が薄れたというわけではない。むしろ、まっとうな状態になったとも言えるのではないだろうか。
 本当に、気持ちをこめて礼をしたいのであれば、季節ごとの慣習に頼らなくても、まだまだ機会はあるだろう。贈りたい時に、簡単に選べてかつ魅力的な商品ラインアップを揃えたサイトなどはまだまだ開発できると思う。
 また高齢化によって、誕生日のギフト機会は増えているはずだ。ただし、年をとればいまさら「物」はいらない、という人も多い。旅行などの「イベント」を贈るというような市場機会はまだあるだろう。
 儀礼的ギフトは減少しても、真心のこもったギフトやお祝いなら、本当に嬉しいはずである。混迷したままの年末ではあるが、改めて人と人の絆を確認できるような日々が過ごせればと思う。

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