(Mon Nov 01 14:01:00 JST 2010)
タケダの「アリナミン」シリーズ広告 エッセー風シリーズ広告で商品購入へのきっかけ作りに成功
武田薬品工業
1954年に誕生してから現在に至るまで次々とラインアップを増やしてきた武田薬品工業の「アリナミン」。同製品は今ではビタミン剤の代名詞ともいえる存在です。その「アリナミン」ですが、2009年12月20日より「アリナミン応援生活」と題したエッセースタイルの一話完結型シリーズ広告を連載しています。その第2弾(『その5』から『その9』)にあたる広告がこの2010年7月31日から8月28日にかけて5回掲載されました。
「その5」と「その6」にあたる7月31日付と8月7日付ではドリンク剤「アリナミンV」と「アリナミンR」を、そして「その7」から「その9」は錠剤の「アリナミンA」と「アリナミンEX PLUS」が取上げられています。
広告のメーンパートであるエッセーの内容は、50代後半から60代の男女が、「アリナミン」にまつわる日常を心温まる文章で綴るもので、それぞれのストーリーのハイライトに「アリナミン」が登場します。文章の横には、その内容を象徴するレイアウト写真と商品写真が添えられています。また「アリナミン豆知識」と題された小枠で囲まれたスペースに「アリナミン」の成分についてなどの説明が毎回分かりやすく記されています。
読者がどのような反応を示し、また、全5回を通じてどのような広告効果があったかを分析していきます。
ストーリーテラーの性別や、広告レイアウトによって分かれた男女の注目率
まず、5回の新聞接触率と注目率の推移(図1)を見ていきます。
広告を「確かに見た」+「見たような気がする」人の割合を示す広告接触率は、最終回である5回目が最も高くなっています。「自分の姿を投影しているよう」(男性50代)、「興味を持って読める良い広告」(男性60歳以上)、「この応援生活シリーズ。いつも楽しみに読んでいます。」(女性50代)というコメントにもあるように、中高年の主人公が綴る連載の読ませ物にしたことで、多くの同世代の共感を呼び、結果、最終回で高い接触率に結びついたと考えられます。
次に、1回から5回目の広告に接触した人のうちの「確かに見た」人の割合(広告注目率※)を見ると、8月14日のお盆休暇中に掲載された3回目のスコアが最も高くなっています。その理由として、「猛暑で夏バテ気味のときにタイミングの良い広告だ」(男性60歳以上)、「夏の疲れが出始めている頃なので、興味を持った」(女性40代)などのコメントが多くあったことからも、夏の疲れがピークに達したタイミングと広告内容がぴったりと合ったということが考えられます。
また、男女別に注目率※の予測値との差を見ていきましょう(表1)。
男性は1回から5回にかけて、どの回も予測値を大きく上回りましたが、女性は最終回5回目のスコアが特に高くなりました。「今まだ子育ての真っ最中なので、これが一段落したらこの広告の文章のようになるのかなあと思った」(女性40代)というコメントにもあるように、1回目から4回目執筆者が男性という設定のため、男性目線でのストーリー展開だったのですが、5回目になり執筆者が女性になったことから多くの女性の共感を得たことが分かります。また「犬好きなので目を留めました」(女性30代)「かわいいペットを絡めているところが目を引いた」(女性40代)というコメントにもあるように、可愛い子犬の写真も多くの女性の興味を喚起し、好感を得たようです。
回を重ねるごとに読者の理解も深まり
次に広告評価を見ていきます。(表2)。
広告印象度以外の全ての項目で大きく平均値を上回っています。ただ、印象度についても、1回目と5回目の差がプラス11.4ポイントと大きく伸びを示しました。モノクロの広告のため落ち着いた印象を受ける本広告ですが、「広告の内容が世代的に共通することから大いに共感を覚えた」(男性50代)、「こころ温まる文章がいい。押し付けがましくない広告で好印象」(女性60歳以上)と、回を重ねる毎にその内容の良さに共感する読者が増加し、その結果スコアが上昇したと思われます。
さて次に、広告評価の中で最も大きく平均値を上回った理解度を見ていきましょう。1回目が87.3%、5回目が90.3%。「あらためて効能について理解を深めた」「紙媒体ならではのとても良い広告。シンプルだが訴えかけてくる。」(ともに男性60歳以上)、「わかりやすく、商品に興味が出た。」(女性 50代)などの声にも象徴されるように、どの回も高い理解度でしたが、掲載回数を重ねた最終の5回目で全体の9割の読者の理解を得ることに成功しました。
あらためて商品・サービスに注目させ、購入へと誘導
最後に「広告による行動喚起」のスコアを見ていきます(表3)。
「あらためてこの商品・サービスに注目した」ですが、5回を通じて40%以上の読者が注目しています。平均値が16.6%でそれを大きく上回りました。自由回答でも「テレビCMではアリナミンVは、若者がCMキャラクターをつとめていたので若者向きのイメージがあった。しかし、本広告を見て、高齢者にとっても有用なことが分かって良かった。」(男性50代)「普段商品を利用しているのですが、改めて購入したくなった。」(女性40代)、「目、肩、腰がいつも辛いので、改めて飲んでみようと思った。」(女性50代)、などの声が見られました。
記録的な猛暑だった今夏、いかにして夏バテせずに夏を乗り切るかが多くの読者の課題だったと思います。そのタイミングを上手く捉え、バラエティを持たせたストーリーで幅広い層に訴求し、商品への関心を上手く盛り上げた「アリナミン」のシリーズ広告。本広告を通して、読者を「アリナミン」の購入へと誘導することに成功しました。