(Mon Feb 07 11:00:00 JST 2011)
新聞広告のスポットCM的活用に成功した永谷園
永谷園
日本の国民的食品と言っても過言ではない永谷園の「お茶づけ海苔」。その広告が11月21日朝刊に掲載されました。
商品パッケージの衣装をまとった少年の写真が広告中央に大きく配置された、非常にシンプルなクリエイティブです。印刷媒体であることを生かして商品やキャンペーンの詳細を伝えることを目的として使われるケースが多い新聞広告ですが、この商品広告は情報量をそぎ落とした感があり、その点異彩を放っています。
定番商品に「改めて」注目
広告接触率(「確かに見た」+「見たような気がする」人の割合)と、広告注目率※(「確かに見た」人の割合)を見てみます(図)。接触率は予測値よりプラス11.5ポイント、注目率※はプラス19.4ポイントと非常に高いスコアとなりました。特に注目率※の上回り方が大きいことから、あいまいな記憶の人が少なく読者の記憶に強く残ったことがわかります。
広告評価5項目もいずれも高スコアですが、「広告関心度」と「広告印象度」の平均値の上回りが特に大きくなっています(表1)。印象度の高さは広告接触率、広告注目率※の高さを裏付けており、関心度の高さはお茶づけ海苔が広く愛されている定番商品であることを表していると考えられます。広告による行動喚起でも、商品や広告主を「初めて」知った人はほとんどおらず、「あらためて注目した」が高いスコアとなっています(表2)。
「知名度のある商品なのでこのようなシンプルな広告はいいのではないか。商品が5種類あることも初めて知った」(男性40代)、「昔からよく知っている商品の広告ですが、おもしろいというかかわいい広告だと思いました。たくさん種類があったので、是非試してみたいと思いました」(女性30代)などの自由回答からわかるように、情報量の少なさにもかかわらず高い評価を得ているのは、もともと永谷園のお茶づけ海苔はすでに広く認知された商品であるというブランド力があり、読者が情報を補いながら広告メッセージを受け取っている、ということでしょう。実際、潜在顧客度(表1)で「すでに購入している」が60.0%と平均値10.0%に比べて非常に高いスコアです。誰もが食べたことがあるといえるほどの商品なのです。
テレビCMとの相乗効果
他媒体とのクロス接触状況では、本商品のテレビCMを見ている人が4割近くおり、新聞広告とテレビCM両方に接触している人がかなりいることがわかりました(表3)。自由回答でも「普段テレビCMを見ているだけに商品パッケージを着ている子どものアップの広告は目に飛び込んできて、良い広告だと感じた」(男性40代)、「お茶づけが食べたくなる広告です。テレビでもオンエアしていますが、モデルの子どもがかわいい」(男性50代)などの声がありました。
実はこの広告に登場する少年が出ているバージョンのテレビCMが流れ始めたのはこの新聞広告の掲載後の12月からです。一般的には媒体特性を考慮して、まずテレビで注意喚起し、次に新聞広告でより興味や関心を引くといった広告プロセスが使われますが、今回は先に新聞広告で注意喚起、その後テレビCMという順番でした。
通常テレビCMが担う注意喚起の役割を担っているからこそ、広告内容をシンプルにする必要があったということになります。そのシンプルさは、「説明が不要なくらいインパクトがでかいです。パッケージだけで商品名がでてくるので広告としてはこれで十分でしょう。余計な文字は要りません。非常に訴求力もあり商品のパワーもありいい広告です」(男性30代)と、好意的に受け取られています。
幅広く浸透している定番商品の「お茶づけ海苔」というブランド力があってこその成功ですが、そのことを自社で熟知した上での広告展開に拍手を送りたいと思います。