(Thu May 20 17:37:00 JST 2010)
ホンダのハイブリッドカー 印象に残る統一のレイアウトと継続発信で効果
本田技研工業
本田技研工業は、2009年1月から2010年3月まで計4回にわたって、ハイブリッドカー「インサイト」のシリーズ広告を朝刊に掲載しました。
「エコロジー」や「環境」を想起させる緑色を基調に、中央には大きな文字、そして多くの人に親しまれているキャラクターのスヌーピーを起用したクリエイティブです。
第1回目は2009年元旦に掲載し、「ハイブリッドカーを、安くつくれ。」というコピーで低価格のハイブリッドカーの製造を『宣言』した内容です。2回目は5月23日「インサイト」の『発売』発表、3回目6月12日は「インサイト」のオーナー同士でエコドライブを競い合う「エコグランプリ」の『イベント告知』。そして4回目が2010年3月6日『発売1周年』で国内累計販売台数10万台を達成したことを伝えるという内容展開です。
掲載ごとに読者の記憶に蓄積
まず新聞閲読状況(広告接触率・広告注目率※)から見ていきます(図1)。広告を「確かに見た」+「見たような気がする」人の割合を示す広告接触率は、1回目86.0%、2回目81.5%と4.5ポイント下降していますが、3回目85.3%、4回目89.8%と2 回目以降のスコアは上昇しています。1回目が高いのは、元旦という、新聞をゆっくり読める時だったということの影響と考えられます。
続いて、広告を「確かに見た」人の割合である広告注目率※。こちらも、1回目が63.6%、2回目59.7%と下降した後、3回目、4回目は上昇しています。
また、広告に接触した人のうちの「確かに見た」人の割合を見てみると、1回目は73.9%の人が、2回目73.3%、3回目で少し上がって80.6%、4 回目78.2%です。1・2回目に比べ、3・4回目は「見たような気がする」人が減って、「確かに見た」人が増えたということです。
4回を通じて統一したクリエイティブと継続的な掲載が功を奏して、掲載ごとに徐々に読者の記憶に蓄積されていき、広告を見る度に「前にも見たことがある」と認識するようになっていったのだと推察されます。つまり、シリーズ広告の効果が表れたということになります。
購入ターゲットに絞られてきたハイブリッドカーへの関心
次に、広告評価を変動の特徴別に見ていきます(図2)。まず、「ほぼ変動しなかった」項目は、広告信頼度です。4回を通じて90%前後の安定した高スコアで、これはホンダの企業ブランドの磐石さを示していると考えられます。
続いて、「2回目に1度下がってまた上がった」項目は、好感度・理解度・印象度・適合度の4項目です。「ハイブリッドカーを、安くつくれ。」というコピーの1回目は、ほぼ他社独占であったハイブリッドカー市場に参入するというホンダの企業としての『宣言』の広告であり、企業広告的要素を持っています。また、元旦の掲載ということもあり高かったと考えられます。そういう意味では、2回目「インサイト」の『発売』からが実質スタートで、3回目『イベント告知』、4回目『発売1周年』の3つの推移が重要ということになります。そういう視点でスコアをみると、掲載を重ねるごとに着実に上昇してることになります。しかし、その中で唯一「ゆるやかに下がった」項目があります、関心度です。このスコアが示す通り、「インサイト」への関心が下がっていってしまったのでしょうか。
図3は2008年9月から2010年10月までの「インサイト、プリウス 発売」というキーワードで検索した読売新聞の記事掲載件数です。ホンダが低価格ハイブリッドカーを販売するということが発表された2009年1月から増え始め、5月にピークがきます。この頃は、世間一般でハイブリッドカー、インサイトやプリウスが話題になっていたはずであり、実際にハイブリッドカーを購入する以外の人達も関心を持っていたのでしょう。それが実際の購入ターゲットへ落ち着いていった推移と読み取れます。この社会的背景が関心度の推移にも表れたのではないでしょうか。
広告内容に即した読者の反響
次に、各回の「行動喚起」を見ていきます(表)。
低価格ハイブリッドカーの製造を『宣言』した1回目は、「改めてこの商品・サービスに注目した」、「よい広告を出していると思った」「まわりの人と話題にしたいと思った」が他の3回に比べ、高スコアになっています。FAには「ハイブリッドカーがよいのは分かっているが、まだ割高感がある。それを安くしてみんなが乗れるようにということだと思う。HONDA独自の技術力で、是非コストを含めブレークスルーしてくれることを期待したい。」(男性50代)といった“宣言に共感”した内容の意見が多数みられました。
2回目の「インサイト」の『発売』は、「比較したり、調べたいと思った」「店頭で確認しようと思った」が他の3回より高スコアで、商品に興味をもったという反響がスコアに表れています。
3回目の『イベント告知』は「初めてこの商品・サービスを知った」「HPを見たいと思った」が高くなっています。FAをみると、「ホンダはレースから撤退したのではなかったか?と一瞬思った。新しく『エコグランプリ』なるものを始めるというのは良いと思う。21世紀新時代のレースがどんなものになるのか、注目してみたい。」(男性20代)、「レースという言葉を見てF1を最初は想像したのですが、内容をよく読むとインサイトのオーナーが参加できるエコグランプリとのこと。燃費の良さをアピールするだけでなく、このような企画があるとより消費者としてはエコに興味を持ちやすくなると思うので、良い広告だと思いました。色に緑が使われているのも広告内容と合っていると思います。」(女性20代)など、「Hondaが、レースを始めます」というコピーによって、実際にはエコドライブをネット上で競い合うイベントを、あたかもホンダがカーレースを始めるかのような違った印象を与えたようです。この広告掲載の半年前にF1撤退を発表したホンダの自社ネタを上手く活用したことが、スコアに良く反映されました。
4回目の『発売1周年』は、「改めてこの広告主に注目した」のスコアが高くなっています。FAには「最近、良く町中でも見るようになったインサイト。一度乗ってみたいなと思います。ホンダ車が好きなので。レースのホンダからエコカーのホンダへとイメージチェンジに成功した感が感じられました。」(男性30 代)など、1周年および10万台達成に賞賛する意見が多数みられました。この他に「ホンダ・インサイトは、最近よく町でも見かけ一目でインサイトとわかる。環境を重視した素晴らしい会社と思われる。この広告においては、グリーンが非常に目立ち、記憶に残る広告である。」(男性50代)といった、商品に対してだけでなく企業に対する好意的な意見もみられました。このような評価のように、ホンダ「インサイト」の広告は印象に残る統一したクリエイティブと継続的な掲載によって読者の記憶に残存していった結果、着実に読者に届いたシリーズ広告となりました。