(Wed Feb 05 14:00:00 JST 2014)
和食への高い関心とタイムリー性をうまく掛け合わせた、無形文化遺産登録決定直後の広告
キッコーマン
「一汁三菜の和食で『おいしい記憶』を。」というコピーが印象的なキッコーマンの全15段多色広告が2013年12月15日付の読売新聞朝刊に掲載されました。和食のユネスコの無形文化遺産への登録が決定して10日後というタイミングです。この広告が読者にどのように受け止められたのか、J-MONITOR定型調査の結果から考察します。
わかりやすく、興味をそそられる
広告接触率(広告を「確かに見た」+「見たような気がする」人の割合)は全体が74.8%、男性より女性の方がやや高く77.0%です(図1)。特に「確かに見た」だけで見ると女性は男性を約10ポイント上回る67.2%で、食品の広告だけあって女性の方がしっかり広告を見たことがわかります。
広告評価項目では4項目とも9割以上のスコアです(表1)。広告理解度が95.2%と高いほか、食品の全15段多色広告の平均値からの上回りが大きいのは、広告興味度(+15.7ポイント)と広告好感度(+14.9ポイント)です。「レシピがとてもわかりやすく簡単なので、ぜひ作ってみたいと思いました」(男性30代)、「和食っていいなと思わせる広告だと思いました。商品の説明もわかりやすいと思いました」(女性40代)などの自由回答に見られるように、わかりやすくて興味をそそられる広告だったことがわかります。
キッコーマンにあらためて注目
広告による態度変容を見てみます(表2)。「初めて『キッコーマン』を知った」という人はほとんどおらず、「あらためて『キッコーマン』に注目した」が平均を約20ポイント上回る61.7%という高いスコアです。よく知られたキッコーマンという企業への注目を高める役割を果たしたことがわかります。自由回答でも「うちでも醤油といえば『キッコーマン』である」(男性29歳以下)、「身近で馴染みの深い会社なので、興味深く見た」(女性29歳以下)といった声が寄せられました。
登録決定直後にタイムリーに掲載
広告の印象項目では、「役に立つ」(平均値+23.6ポイント)、「タイミングがよい」(+16.0ポイント)が高く、レシピがわかりやすく紹介されていることや無形文化遺産登録決定の10日後というタイムリーさの効果と考えられます(表3)。
実は、一汁三菜のレシピを紹介するこの「おいしい記憶」の広告は2013年3月31日付、6月22日付、9月29日付、そして今回の12月15日付とシリーズで掲載されてきています。過去の掲載時の結果データも合わせて見ていくと、今回の広告の印象項目で平均値を上回っている「自分たち向けの」「共感できる」などは4回の掲載を通じて高いレベルで推移しており、生活習慣病の増加に伴う食生活の見直しや「食育」の浸透に代表されるような健康意識から来る和食への関心がふだんから高いことを感じさせます(表4)。
一方、「タイミングがよい」「話題性がある」の今回のスコアは、過去3回よりも明らかに高く出ています。もともと高い和食への関心に、ユネスコへ登録決定というニュース性が加わった消費者マインドをうまくとらえた広告だったわけです。毎日発行されるので狙ったタイミングで掲載できる新聞広告ならではの好事例と言えるでしょう。