(Mon Oct 07 14:00:00 JST 2013)
「うまい棒」のリスカの「うまい」タイムリー効果
リスカ
お盆を間近に控えた8月5日の朝刊にカラフルに登場したのは「リスカ株式会社」の全15段多色広告です。うまい棒、ハートチップルをはじめ、リスカ製のたくさんのお菓子がプレゼント箱から飛び出してくる写真が印象的です。この広告は、読者のかつてそのお菓子を食べた経験にうまく訴えかけており、また夏休みという掲載タイミングもプラスに働いていると推察されます。読者の反応について見ていきます。
29歳以下、30代、40代が反応
広告接触率(広告を「確かに見た」+「見たような気がする」人の割合)は79.7%で、予測値よりも高く、読者によく見られた広告であることがわかります(図1)。「玉手箱みたいで面白いと思った」(女性30代)、「絵本を見ているような楽しい紙面です」(女性60代)、「パッと目に入った瞬間『かわいい!』と思った。お菓子好きには夢のような広告です」(女性50代)、「目立って、カラフルでかわいい広告」(女性50代)など、高い注目を得たことが自由回答からも伺えます。
広告の評価や印象を、年代に注目して見てみます。広告評価では「広告理解度」、「広告興味度」、「広告好感度」、広告の印象では「目立つ」、「共感できる」、「おもしろい」に共通しているのは、50代以上よりも40代以下が高く、中でも29歳以下と30代のスコアが高めであるという特徴です(表1、表2)。
リスカの中で歴史の古い「ハートチップル」が1973年、「うまい棒」が1979年の製造開始です。子どものときからリスカのお菓子を食べて育ったという年代は1970年代以降の生まれと推測でき、40代以下のスコアが高いことと合致します。実際、購入経験者が40代以下では6割以上と高くなっています(表3)。つまり、40代以下には子どもの頃に食べた懐かしいお菓子の広告として、50代以上には普通においしそうなお菓子の広告として見られたということになります。40代以下では「リスカと言えばハートチップル。懐かしいです」(男性40代)、「年代を遡り、少年時代に購入した駄菓子を思い出し懐かしさを感じました」(男性30代)、「懐かしいお菓子がたくさんで、ちょっと嬉しくなりました」(女性29歳以下)など、思い入れのあるお菓子について述べている人も散見されましたし、「私が子どもの頃から好きなハートチップルが小さく載っていたのは少し悲しかった」(男性30代)という強い愛着ゆえの感想もありました。
購入・利用経験の有無に注目してみると、「購入候補にしてもよい(購入・利用経験あり)」は40代以下が6割弱〜8割弱と高いのに対し、「同(購入・利用経験なし)」は50代以上が高めになっています。このお菓子をまた買ってみたいと感じた40代以下、買ったことはないけれど買ってみたいと感じた50代以上、という違いがきれいに表れました。
自分たち向けと感じた29歳以下、あらためて注目した30代
反応が高い40代以下の中でも年代による傾向を見ることができます。広告の印象項目の「よい広告を出していると思う」「自分たち向けの」は29歳以下という最も若い世代のスコアが高くなっています。一方、30代が高いのは広告による態度変容の「あらためて『リスカ』に注目した」です(表4)。29歳以下はリスカのお菓子を食べて育った子ども時代がごく最近、もしかするとまだ続いているかもしれない世代ですから、自分たち向けの広告だと感じています。「あらためて」注目している30代は子ども時代がもう少し前であり、懐かしさをもってまた食べたいと思ったことが伺えます。
隠れたタイムリー性
最後に次の2つの感想を紹介します。「この広告を見て、孫と一緒に買いに行ってみたくなりました」(女性60代)、「夏休みで、子どもたちがいるので、見て大はしゃぎ」(女性60代)。広告が掲載された8月5日は、夏休みでお盆の帰省シーズンを直後に控えている時期です。この広告を見て、家族で話題にしたり、帰ってくる子どもたちのために買っておこうと思ったり、今度帰省したら久しぶりに食べてみたいと思ったり、この時期ならではのいろいろな気持ちが喚起されたことが想像できます。「うまい棒」のリスカだけに「うまい」タイミングに掲載されたことになります。
新聞は毎日発行されるため、いつでも好きなタイミングで広告を掲載することができます。読者が広告がタイムリーだと思ったかどうかは、通常、広告の印象項目の「タイミングがよい」のスコアから判断することができますが、実はこの広告のスコアは特に高くありません。にもかかわらず読者の購買意向の盛り上がるポイントを、商品特性や夏休みというタイミングをうまく絡めながら押さえており、隠れたタイムリー性を持っています。読者が「この広告はタイミングがよい」と自覚しなくても、読者マインドの盛り上がりを味方につけて購入意向を高めることができることを教えてくれる好例です。