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Pick up 定型調査

(Thu Mar 29 12:15:00 JST 2012)

時の人で新聞広告を“事件”にした「文藝春秋」
文藝春秋

朝刊の一面の記事の下には通常、書籍か雑誌の連合広告が掲載されます。そのお馴染みの広告スペースに、普段とは違う広告が掲載される“事件”がありました。その事件が発生したのは2月10日(金)。1月に発表された第146回芥川賞の受賞作品やインタビューを掲載した「文藝春秋」3月特別号発売の広告で、「道化師の蝶」の円城塔さん、「共喰い」の田中慎弥さんの二人が並んだ写真に「芥川賞は文学を事件にする!」というコピーが大書されています。この広告への読者の反応をJ-MONITOR定型調査の結果から紹介します。

2月10日 朝刊

全15段カラー広告並みの広告接触率

  広告接触率(広告を「確かに見た」+「見たような気がする」人の割合)は79.7%で、非常に多くの人が記憶しています(図1)。このスコアは、朝刊全15段カラーの予測値並みの高さです。記者会見時のインパクトある発言が世間の注目を集めた「時の人」田中さんを広告のアイキャッチに起用したことが高い接触率に寄与したようです。自由回答でも「話題の田中さんで、目が止まった。テレビで騒がれているので、読んでみたいと改めて思った」(男性40代)、「芥川賞受賞のニュースで田中さんを見ていたので、その作品が掲載されているとすぐにわかった」(女性40代)などの声が見られました。

図1 広告接触状況

  広告評価項目は、書籍・月刊誌の広告78件の平均値との比較で見てみます(表1)。4項目すべて平均を上回っていますが、特に約20ポイント上回っているのが広告興味度(70.0%)で、書籍・月刊誌の広告としては非常に高かったことがわかります。広告信頼度(82.6%)の上回りも大きいですが、これは今回の広告というよりは、文藝春秋誌および芥川賞が持っているブランド力によるものでしょう。

表1 広告評価

話題性とタイミングがばっちり

  次に広告の印象項目を見てみましょう(表2)。平均値からの上回りが最も大きいのは「話題性がある」(54.9%)です。「タイミングがよい」(35.2%)の高さも合わせてみると、ここでも一躍注目の人となった田中さんの影響力が表れています。
  「目立つ」(41.3%)も上回りが大きい項目です。「写真を斜めに使用した事ですごく良く目立ちますね。面白いです」(男性40代)、「人物写真のレイアウトがとてもいいと思います。天地寸法より大きな広告に見えて、インパクトがあります」(女性50代)という自由回答から個性的なクリエイティブが読者に印象的に捉えられた広告であったことが伺えます。

表2 広告の印象

購入意向を喚起

  最後に、広告による態度変容を見てみます(表3)。「初めて『文藝春秋』を知った」(1.4%)人はほとんどおらず、「あらためて『文藝春秋』に注目した」(49.8%)が平均値と比べても非常に高くなっています。「店頭で確認しようと思った」(25.8%)も平均より10ポイント以上高く、文藝春秋誌の購入意向もかき立てたことがわかります。ただし、「まわりの人と話題にしたいと思った」(6.6%)はそれほど高くありません。今回の広告は田中さんの芥川賞受賞発表から1か月弱後、話題性があることを自分も周りもすでに十分知っている状態で掲載されたため、これをきっかけに誰かに話をするというよりは、そのコンテンツが掲載される文藝春秋3月特別号を買うかどうか、というストレートな行動喚起をしたのでしょう。自由回答の「毎年発表される芥川賞ですが、今年は特に受賞インタビューの様子で既に話題になり興味はありました。久しぶりに店頭で見てみようかと思いました」(女性60代)が示すように、休眠読者の掘り起こし効果もあったようです。

表3 広告による態度変容

  芥川賞という言わば恒例行事をいつもとは違う“事件”にした「時の人」。その人が登場する広告が普段の連合広告にとってかわって載ること自体が新聞広告における“事件”だったわけですが、全ページ広告並みの大きなインパクトを読者に与えた“事件”でもあったわけです。

(伊集院)