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政策担当者の思いを伝える
経済産業省のオウンドメディア「METI(メティ) Journal ONLINE」

METI Journal ONLINE」は、経済産業省(Ministry of Economy, Trade and Industry 略称METI)が発信する世界の話題から身近なテーマまで、経済産業の“なるほど”が集まるウェブマガジン。行政官庁が発信するオウンドメディアとして注目を集めている。

経済・産業に問題意識を持つビジネスパーソンへ

経済産業省 大臣官房広報室 室長補佐(広報担当)笹本 つむぎ 氏

経済産業省
大臣官房広報室 室長補佐(広報担当)
笹本 つむぎ 氏

――「METI Journal ONLINE」を立ち上げた経緯をお聞かせください。

笹本氏:政策を広く知っていただくため、通商産業省の時代から「通商産業ジャーナル」を紙で発行してきました。経済や産業政策は幅広く、一般の方には分かりにくい面もあります。その背景も含めて理解していただき、興味を持ってもらうことが発行の目的でした。2001年の省庁再編で経済産業省になってからは「経済産業ジャーナル」と名称変更し、PDF形式で省のホームページに掲載してきましたが、情報をよりタイムリーに届けるため、2017年6月から専用の広報サイト「METI Journal」を開設しました。その後、2021年6月にリニューアルしたのが現在の「METI Journal ONLINE」になります。運営はこれまでもメディアに委託しています(現在は読売新聞ビジネス局)。

スマートニュースアプリでも配信

スマートニュースアプリでも配信

――リニューアルの中身というのは?

笹本氏:METI解体新書」「HOTパーソン」「今月のヒトコト」の3つのコンテンツを新しく立ち上げました。「METI解体新書」は経済産業省の組織と人に焦点を当て、政策に込められた思いや経済産業省が目指したい社会像を若手の政策担当者に語ってもらうコーナーです。「HOTパーソン」ではベンチャー企業経営者や業界のリーダーなどへのインタビューを通じて経済産業の将来像を探ります。「今月のヒトコト」は言わば編集後記です。

政策特集」と「地域で輝く企業」「HOTパーソン」の制作には、外部ライターが参画しています。

「METI Journal ONLINE」のコンテンツをより多くの人に届けるため、2022年2月からスマートニュースの「日本政府」というタブで自動的に全記事が公開されるようにしたほか、経済産業省のSNS公式アカウントでの発信はもちろん、GoogleやYahoo!にバナー広告を出し、サイト訪問につながる仕組みを作っています。

――どのような人たちをターゲットにしているのでしょうか。

笹本氏:ビジネスパーソンや中小企業の経営層、政策担当者など、経済・産業に関わる幅広い人たちに見ていただきたいと考えています。近年、新型コロナウイルス感染症への対応やカーボンニュートラル、DX(デジタルトランスフォーメーション)など、ほんのわずかな時間で経済・産業をめぐる状況は劇的に変化し、私たちの生活や企業経営に大きな影響をもたらしています。この状況下でどのような対応を取ればよいか、また参考にできるヒントはないのか、といった問題意識を持つ人たちに読んでもらえる広報サイトを目指しています。

“役人言葉”を使わない「分かりやすい」サイト

――メインコンテンツの「政策特集」のテーマは、どのように決めているのでしょうか。

笹本氏:「政策特集」は、経済産業省の話題性の高い政策テーマをクローズアップし、政策担当者へのインタビューや企業の先進的な事例などを通して紹介するコーナーで、毎月1つのテーマを数回に分けて連載しています。取り上げるテーマについては、担当課から広報したいという要請がある場合もあれば、時期的に関心を持たれている政策テーマについては広報室から担当課に声をかける場合もあります。また最近は、課を横断するテーマ設定で複数の政策を紹介する試みも始めています。今年4月には「新社会人必見 経済政策5つのキーワード」というテーマで、DX、GX、SXの3つのトランスフォーメーションや経済安全保障、WTO、EPAなど国際的な枠組みの現状を解説しました。また8月には「親子で学ぶ」をキーワードに、「夏休み親子企画 試験に出る経済・産業」というテーマで連載しました。

※GX(グリーン・トランスフォーメーション)、SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)、WTO(World Trade Organization 世界貿易機関)、EPA (Economic Partnership Agreement 経済連携協定)

――サイト運営で工夫している点、特に注意を払っていることは何でしょうか。

笹本氏:伝えたいメッセージは何かを明確にすることと、サイト訪問者の視点を意識することです。そのために、いわゆる“役人言葉”をなるべく使わないようにしています。誤解のないよう正確に説明することはもちろん大切ですが、政策を多くの人に知ってもらうときには「分かりやすい」ことがより大切です。政策や制度の詳しい説明は経済産業省のホームページなど別にあるので、「METI Journal ONLINE」では、まず「分かりやすさ」を優先しています。多角的な視点から情報を伝えられるように、テーマに関連する企業の方のインタビューなども多く取り入れています。

METI Journal ONLINE

「夏休み親子企画」にはサピックスの先生が登場

リニューアル前の2倍に伸びたPV

――最近のコンテンツで特に読まれたもの、反響があったものにはどんな記事がありますか。

笹本氏:最近では「60秒早わかり解説」の「知っておきたい基礎知識〜GXって何?」という記事がよく読まれています。用語を解説するだけではなく、なぜGXが必要か、世界の状況はどうかなど、政策に関連した学びを得られる記事です。それから「統計は語る」の「アイスクリームなどの動向について」もよく読まれる記事の上位に来ています。

――「政策特集」で読まれている記事としては?

笹本氏:レアアース紛争について「日本勝訴」の舞台裏を語る記事は大きな反響がありました。また、今年日本で開催したG7に先立ち、そもそもG7サミットとは何か、これまでどのような議論が展開されてきたか、経産省は「気候変動・エネルギー、貿易、デジタル」という3つのテーマにどう取り組むのかという特集を行い、多くの方に読んでいただきました。

――「METI Journal ONLINE」の月間PVはどのくらいですか。

笹本氏:約15万PVとリニューアル前の2倍以上になっています。他の省庁から「どうやって運営しているのか」「うちも検討したい」という問い合わせももらうようになりました。ただ、PVが全てではない面もあります。取り上げるテーマによって読んでもらいたい層、ターゲットにどう届けるかも大切ですので、今後、工夫する余地はまだまだあると思っています。

さまざまな媒体やツールを掛け合わせて発信することも必要に

笹本 つむぎ 氏

――行政官庁がオウンドメディアを持つことの意義をどう考えていますか。

笹本氏:自ら発信できるオウンドメディアを持つこと自体に、大きな意義があると思っています。経済産業省の政策課題はさまざまで、貿易、エネルギー、環境、デジタル、中小企業など、耳馴染みのあるテーマもあれば、そうでないものもあります。政策の数も多く、ニュースリリースも1か月に100本近く出ることも珍しくありません。良い政策は多くの方に知ってもらい、活用していただきたいですが、全てがメディアに取り上げられるわけではないので、目立たないけれど意義のある政策を伝えるためにもオウンドメディアは重要です。

また、官公庁というと、近寄りがたいイメージを持つ方もいらっしゃいますが、一つ一つの政策に込められた思いや、一人ひとりの職員の姿を知っていただくことが、政策への理解を深めることにもつながると考えています。最近、学生の官庁訪問の担当者から聞いた話があります。経済産業省の政策についてよく知っている学生がいるので理由を尋ねたら、「METI Journal ONLINE」を読んでいるということでした。このサイトが、若い人たちにとって経済産業省の仕事や政策に興味を持つきっかけにもなっているとしたらうれしい限りです。

――今後の広報についての考えをお聞かせください。

笹本氏:今後は「一方通行から双方向へ」という情報の流れの変化に意識的に対応する必要があると思います。新聞、テレビ、雑誌、ラジオといった従来のマスメディアも引き続き活用しながら、さまざまな媒体やツールを掛け合わせて発信することが経済産業省の広報にも必要になってくると思います。

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