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若者を、振り向かせろ

1万人アンケートからみた若者の実態

野村総合研究所 インサイトシグナル事業部 上級コンサルタント 松下東子

野村総合研究所(NRI)の「生活者1万人アンケート調査」は、全国15歳~79歳の男女1万人を対象に生活価値観や消費実態を尋ねるもので、1997年から3年ごとに実施されている。訪問留置法(注)で行われていることも特徴で、ネットを使っていない人たちも含め、その実態を知ることができる。この調査に立ち上げ当初から携わってきた松下東子氏に、現代の10代、20代の若者の生活・消費実態について聞く。

(注)調査員が調査対象者宅に訪問して、調査目的や内容を説明し、後日、調査回答を回収すること。

── 最近の「生活者1万人アンケート調査」結果から松下さんは、若者の保守化を指摘されていますね。

若者の保守化傾向は、2015年の調査でも引き続き見られる意識です。「日本の国や国民を誇りに思う」「有名な大学や学校に通った方が、有利になる」「役職や肩書きがほしい」が10代ではトップ3の伸び率です。20代も上位2つは同じで、3番目に「夫婦の間で秘密をもってもかまわない」という個人主義的な項目が出てきますが、4番目は「役職や肩書きがほしい」になります(図1〜3)。和を貴ぶ、仲間を大切にする、新しい性別役割分担や家族観、社会貢献意識が伸びているというのは、2000年以降変わらない傾向です。

── その理由は何だと思いますか。

新しいことにチャレンジしても成功する自信が抱きにくい時代になっているからだと思います。「新しいことにチャレンジする」という意識は、当然、若者のほうが高いのですが、全世代で低下傾向にあります。経済が成長している時代は、少し人と違ったことをすることが、むしろ大きな成長要因になることもありますが、今は一度失敗すると、なかなか這い上がれないようなところがある。今の若者というのは、バブル崩壊後に生まれた世代で、思春期にリーマンショックや東日本大震災を体験している。攻めよりは守りの意識が強くなっている世代です。ですから、学歴や資格、肩書といった既存の社会の枠組みの中で、極力、不利な道に落ちないようにという生き方をするのは、ある意味当然だと思うのです。若い世代の保守化の背景には、若者の不況慣れ、低成長慣れがあるということです。

スマホがもたらした消費変化

── 2015年の調査で顕著になった生活行動の変化は何でしょうか。

2012年にも傾向は出ていましたが、デジタルレジャーの頭打ちがより顕著になったことですね。10代、20代に限ったことではないですが、最近はビデオ・DVD鑑賞が頭打ち。パソコンも検索が大きく減少し、ケータイゲームも伸びが鈍化しています。

原因は何かというと、スマホの普及です(図4)。今までのデジタルレジャーは、部屋にこもってパソコンでやるものだったのですが、スマホが普及したことによって、インターネット環境を街に持ち出せるようになった。デジタルはじっくり取り組むレジャーではなくなり、時間を潰したり、コミュニケーションをしたりする、より簡便なツールとしての役割が大きくなったのです。

スマホの普及は、若い人の余暇の過ごし方にも影響を与えています。伸びているのが街レジャーです。食べ歩きやイベント参加、友達と飲食店に集まっておいしいものを食べるとか、そういうところにレジャーの焦点が移ってきています。

── SNSの利用はどうなのでしょうか。

SNSの利用は若者中心だったのですが、2015年の調査では上の世代も利用が進んでいますので、相対的な差は縮まってきています。スマホは今は主婦層にも普及して、PTA活動などでの保護者間の連絡もLINEで来る時代になっています。SNSの利用は、今は若い世代の特徴というより全年代的な特徴ですね。

変わる消費、変わるブランド

── 若い世代はモノを買わなくなったと言われていますが。

今の若者は「嫌消費世代」と言われますが、「消費のしどころが変化している」と言ったほうが正しいですね。実際、日本国内の1人あたりの家計消費支出額は2007年度をピークに減少に転じていますが、それは「モノ」の購入が減っただけで、「コト」への支出は増えています。調査でも、全体で「積極的にお金を使いたい費目」として挙げられているのが、「食料品」「外食」「子どもの教育」「人とのつきあい・交際費」です。

若者に限定しても、「食料品」「外食」は伸びています(図5)。さらに細かく見ると、「スポーツジム・フィットネス」「映画・演劇・美術鑑賞」「外食・グルメ・食べ歩き」など、先ほどのスマホの普及とも関連しますが、アクティビティーや街レジャーが増えている。ちょっと出掛けて、友達と楽しむことができる分野の消費に若い世代は関心を持っています。

逆に減っているのは、「衣類・ファッション」「家電製品」など「モノ」の購入です。ただし、若い世代にとって「衣類・ファッション」というのは、お金を使いたい費目としては「趣味」と並んでトップです。ファッションに関心がないということではなく、そこにお金を使いたい分野として意識的に挙げる傾向が弱まっているということです。

── 若者のファッションに対する意識は、具体的にはどう変わったのでしょうか。

「流行の先端にいるより、外さないことが大事」という方向に変わってきましたね。調査結果を解釈するために、若い人たちに実際に集まってもらってインタビューする機会を設けているのですが、「流行は知っていたいけれども、追いかけたくない」という意識を今の若い人たちは持っている。「自分の持っているものが流行りものだと気づいたら身につけたくない」という人が多いのです。

── そうすると、何を基準にファッションを選んでいるのですか。

ネットのランキングに親しむランキングコンシャスや仲間内の小さなコミュニティーでの評価を重視するようになってきています。最近は企業が発信している情報より、ネット上で実際のユーザーがいいと言っているものに重視点が移ってきています。もう一つは、自分の仲間内の評価、その両方あると思います。今の若者は仲間を非常に大切にするところがあって、気の合った仲間さえわかってくれれば良いみたいなところがある。仲間内での承認欲求が消費にも大きな影響を与えているということです。

── そうした傾向はいつ頃から顕著になってきたのでしょうか。

直近の調査からです。2012年の調査までは、「同等の機能・価格なら外国製より日本製を買う」「無名メーカーよりは有名メーカーの商品を買う」が増えていたのですが、2015年の調査では頭打ちになっています。その一方で増えているのが、「使っている人の評判が気になる」という項目です(図6)。商品選択の重視点が、ブランドからユーザー評価に移っているというのは、若者だけでなく全年代で見られます。それが2012年から2015年の大きな変化です。

パッと見てわかる情報が重視される時代

── SNSの使い方で、若い人に特徴的なことはあるのでしょうか。

今言った「ユーザー評価を重視すること」と関連するのですが、若い人たちはグーグルで検索をするのではなく、ツイッターなどのSNSで検索をする人が増えていると聞いたことがあります。誰かが写真付きで、「これ食べておいしかった」とつぶやいている情報のほうが信頼されるし、共感されるということです。それから、「一人カラオケ」や「一人ご飯」も今の若い人はよくやります。一人で焼肉を食べるのは寂しいだろうと思いますが、彼らは常にSNSでつながっている。それによって一人の行動が仲間内の行動に化けているということです。また、SNSをグループごとや複数アカウントで使い分けしているのも若い人の特徴です。そうやって、みんなに見せる私、身近な人にしか見せない私を使い分けているんですね。

── スマホとSNSが若者の生活行動に与えた影響は大きいですね。

スマホの影響で言い忘れたことが一つあります。スマホは小さい画面で情報を得なければいけないですから、パッと見てわかるようなものしか調べなくなってきているんですね。スマホは、パソコンのように複数のウインドウを広げて商品情報を比較することができないですから、情報発信も階層的なものでは嫌われて、すぐわかるものが好まれる。だから、ウェブの情報も見出しが大事になってきている。まとめサイトが見られているというのも、スマホの画面の小ささが影響していると思いますね。

── そういう若者に対する新聞の役割を、どう思いますか。

実は、私は「インサイトシグナル」という広告効果測定にも携わっているのですが、そのデータを見ると、新聞広告を出すとそのブランドに対する信頼感が上がります。新聞は若い人ほど見ていない傾向はありますが、逆に、新聞を見ている若者は記事をしっかり読んでくれる人たちです。企業の社会貢献活動やCSR活動、ブランドの約束といったものは文字を通してしか伝えられない部分があります。しかも、今の若者は社会貢献やエコ意識が非常に強い世代でもある。世の中のすべてが、パッと見てわかる情報に還元できるわけではありません。そういうところに新聞広告の役割があるのではないかと思います。

Motoko Matsushita

野村総合研究所インサイトシグナル事業部上級コンサルタント。1996年東京大学大学院教育学研究科教育心理学専攻修了、野村総合研究所に入社。消費者動向の研究、企業マーケティング戦略立案・策定支援、ブランド戦略策定、需要予測、価値観・消費意識に関するコンサルテーションなどを担当。

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