adv.yomiuri 読売新聞広告局ポータルサイト

見出し、大事ね。

本質を伝えるための省略
読ませる見出しの作り方

読売新聞東京本社 編集局編成部長 菅谷一弘

新聞の見出しは見慣れているせいか、そこに詰め込まれたノウハウが見えにくい。しかし、いざ自分で見出しをつけようと思うと、その凄さがわかる。「内容がわかる」「読む気にさせる」新聞見出しは、どのようなプロセスや思考を経て作られるのか。編集局編成部長の菅谷一弘氏に聞く。

── 事前に、新聞の見出しを隠して自分たちで付けてみたのですが、結構難しいですね。

少し応用編を選んじゃいましたね(笑)。衆議院選挙制度改革の記事ですが、脇見出しに「自民 アダムス方式慎重」とある。自民は何を決めたかというと15年の国勢調査を基に定数を削減する「0増6減」を決めた。公明、民主、維新の押すアダムズ方式では「7増13減」になるのですが、この案に対しては自民党は慎重論が多いというニュースです。それに対して考えてもらった主見出しが、

0増6減 与野党で不一致(編集部員 作)
格差是正 与野党に隔たり(ライター 作)

両方の回答ともいい線いっていると思いますが、「0増6減」と数字を使ったほうが説得力がありますね。ですが、実際の主見出しは、

衆院定数配分 与党に溝

── 与野党じゃなくて、与党が主体の見出しになっていますね。

与野党の政策が一致しないことは、いろいろな場面であります。一方、与党内の不一致は大きな問題で、それがこの日のニュースのポイントだという判断ですね。面担は、この記事だけから見出しをつけるのではなく、連日の衆院選改革の報道を踏まえて、その日のニュースの意味を考えます。

── 面担というのは?

新聞は、広告のページを除いて1ページに一人ずつ編成の担当「面担」が付いています。面担は、担当面の記事に見出しを付けるだけでなく、記事の重要性を判断してレイアウトを決めたり、インフォグラフィック(図解)をデザイン部へ発注したり、その面をほぼ一人で作ります。以前はオペレーターに指示を出して記事を割り付けていましたが、今は面担1人でこなしています。その上にデスクがいて、全体を見ているというのが編成部の体制です。

格付けする新聞とフラットなウェブ

── 他のメディアと新聞の見出しの違いは、何だと思いますか。

ウェブとの違いで言うと、新聞の見出しは縦も横もある。それから言葉を自由な位置に配置できるというところが違いますね。ウェブのニュースの基本は、1列1行見出しです。特に、Yahoo!のトップニュースは、われわれから見てもよくできていると思います。

── どのへんがよくできているのですか。

短い字数の中にニュースのポイントをきちんと押さえた上で、クリックさせる力があるところですね。新聞だと目を移せば記事が読めますが、ウェブの場合はクリックしないと記事が出てこない。もう1段階ハードルがあるわけです。それでもクリックさせるというのは、その見出しに人を引きつける力があるということです。

── 新聞は文字の大きさも違いますが。

ニュースの格付けをしているか、いないかの違いですよね。ウェブはいろいろなニュースを等価値で並べていますが、新聞はニュースを格付けしている。その日の最も重要なニュースは一面に、国際面、経済面など各面も重要なニュースほど見出しが大きい。英字新聞もそうですが、新聞が長い年月をかけて培ってきた情報の見せ方です。

ニュースの誇張と強調は違う

── 雑誌の見出しも新聞とは違いますね。

雑誌は、記事の一部を誇張した見出しが多いですね。読んでみたら、「そこまでの話ではなかった」という記事もある。新聞も読者を引きつける見出しを付けますが、記事を強調するだけで、誇張する見出しは付けないのが原則です。

── 誇張と強調は違うということですか。

例えば10の内の6ぐらいのことが書いてある記事があったときに、8の見出しを付けたら、それは誇張です。でも、6を太字にしてインパクトを持たせ、読者の目を引くことはありですよね。それが強調です。

見出しには、「記事の内容を伝える」「記事を読む気にさせる」という二つの役割があります。単に正しい見出しが付いているだけでは半分で、読者に記事を読んでもらえる見出しであることも大事な役割です。そのためにいろいろなテクニックを使って、新聞の見出しは記事の内容を強調しているんですね。

── どのように強調するのか、いくつか具体例を紹介してもらえますか。

文化部のスクープだった記事ですが、洋画家の中川一政さんが持っていた作者不詳の絵をオークションにかける予定だったんです。落札予定価格は1万円。しかし、ゴッホの初期の作品に似ているというので、オークション会社がアムステルダムのゴッホ美術館に鑑定をお願いしたら、本物だとわかったというニュースです。内容を見出しにしようと思っても、伝えるべき要素が多くて、なかなか短くならない。それで考えた見出しが、

「1万円」実はゴッホ

「1万円だと思っていたものが」というニュアンスを伝えるために1万円をカギカッコで囲い、ゴッホと書けば絵のことだとわかるだろうと「絵」も省略。あとは補足の見出しを付けただけです。次は、

曖昧

常用漢字が見直され、実生活で多く使われている196字が追加されたという記事です。ところが、読めればいいのか、書けないとだめなのか曖昧なまま追加された。実は記事中には「曖昧」という言葉は出てこなかったのですが、196字には「曖昧」も含まれていました。それで「読めればOK? 書けないとダメ? 曖昧」という見出しにしたのですが、このゲラを見た社会部が前文に「曖昧」を後から書き足してくれました。

2003年2月7日 夕刊 1面

2010年11月30日 朝刊 社会面

それから、「家計の知恵」の、ワイン入りからおもちゃ入りまで、いろいろな種類の入浴剤が増えてきたという記事。

入浴剤でマイ湯〜

── ダジャレもありなんですか。

自分好みのお風呂にするので「マイ湯〜」。「まいう〜」を知らない人にも意味が通じれば見出しとして成立するということです。

2009年1月6日 朝刊 家計面

読まなくても内容がわかる見出し

── 見出しに基本的なルールはあるのでしょうか。

大きなルールとしては、「記事の内容を具体的に取る」「一目でわかる文字数」「ひとりよがりの見出しにしない」の3つです。特に、「記事の内容を具体的に取る」というのは大事ですね。

学級新聞などでよくあるのは、例えば、学校で修学旅行へ行った記事に、「京都修学旅行」というタイトルをそのまま付けてしまうことです。新聞の見出しではそれが、「紅葉の京都を満喫」というような内容を取った見出しになるんです。

── タイトルと見出しは違うんですね。

新聞ではタイトルを使わないかというと、そんなことはありません。タイトルと見出しを使い分ける場合もあります。「新型インフル こう対処」という記事ですが、「家庭では」がタイトル、「手洗い 15秒以上」が見出し、以下同様に、「外出時には」→「せきが出たらマスク」、「特徴は」→「高熱・せき・鼻水」、「発症?」→「まず電話相談」というように、タイトルと見出しの組み合わせで、内容が一目でわかるようにしているわけです。

2009年5月1日 朝刊 総合面

── ビジネスにも新聞の見出しのつけ方は活用できそうですね。

会議の時よくA4・1枚のレジュメを作りますね。あれに見出しが付いていたらと思いますね。「特徴」「課題」「対策」とタイトルが書いてあるけれど、内容は本文を読むしかないものが多い。タイトルは「何について書いてあるか」はわかりますが、「何が書いてあるか」は本文を読まないとわからない。それを一目でわからせるのが見出しの役割です。

── 「記事の内容を具体的に取る」というのは、そういうことなんですね。

それに加えて見出しには、記事を読みたくなることも求められます。新聞の閲読時間が短くなる傾向にある現在、ますます「内容を伝える」「読む気にさせる」見出しの役割が重要になっています。読者が新聞をめくって1ページをチェックする時間は数秒です。その間に興味を引く見出しがないと、ページをめくられてしまう。めくられたら面担の負けなんですね。

Page Top