adv.yomiuri 読売新聞広告局ポータルサイト

読売新聞 海外駐在員リポート

from America

ニッチ市場を狙う米国観光キャンペーン

広大なアメリカでは地域によって気候が大きく異なり、文化や経済の地域差も大きい。各地域はそれぞれの特色を持っているものの、それだけでは観光地として差別化が図れないため、特定のターゲットや需要に焦点を絞ることで、ニッチな市場を開拓している。

特定の需要として注目されているテーマの一つが「クラフトビール」だ。米国でのクラフトビール人気は留(とど)まることを知らず、米ブリューワーズ協会の発表によると、米国のビール醸造所の数は2015年に4,269か所となり4年で倍増した。流通地域が限られるビールも多く、「ビールを飲むための旅行(beer+ vacation=beercation)」の愛好家もいる。

この旅行需要を積極的に取り入れようと、フロリダ・タンパベイ観光局はビールに特化した「Bay Crafted」キャンペーンを行った。プリント広告の中心に描かれているイラストは観光名所ではなくビールグラスで、専用のウェブページを作り、地域内のビール醸造所を紹介している。同観光局によると、日帰り客の多くが宿泊客となり、飲食関連の支出が増え、7.5万ドルの予算投下で、1万1300部屋の宿泊、約320万ドルの経済効果を生み出したという。アルコール飲料を訴求の中心とすることで、旅行者数を増やしただけでなく、付加価値も提供できた。

また、特定のターゲット層としてはLGBTが注目されている。社会や政治の潮流もあり市場は拡大傾向で、近年、LGBT向けの取り組みを開始した地域が多いが、フロリダ・フォートローダーデールのように20年以上前からLGBT向けの施策を継続しているところもある。同市は全米で初めて専用の旅行プランナーやウェブサイトを導入するなど積極的なプロモーションを続け、現在ではLGBTの年間旅行者数150万人、旅行支出額約15億ドルにまで市場を成長させることができた。

フォートローダーデール観光局は、今年1月からは一般観光客向けの広告にもトランスジェンダーのモデル3人を起用し、新たなキャンペーンを開始している。これは、メインビジュアルにトランスジェンダーモデルを起用した世界初の観光局だという。キャンペーンはNYタイムズ(T-マガジン)やUSAトゥデー(トラベル・マガジン)といった新聞系媒体やテレビなどの主要メディアを通じて、全米のみならず海外でも展開される予定だ。

このビジュアル内では、モデルたちの性自認や性的指向は述べられていない。包括的なコミュニケーションとして、LGBTを含めた全ての旅行者に「自由で寛容な地域」であることを伝える、ターゲットを特定して訴求するよりも一歩進んだ広告表現である。同観光局によると、寛容なイメージを伝えることは、自由を好む若年層・ミレニアルズに向けたメッセージでもあるという。ターゲットを限定しながら、米国では最多の消費者層であるミレニアルズの取り込みも図っているのだ。

国土の広さは異なるが、日本の各地域もそれぞれ特色を持っている。その点で、日本でも地域の魅力をただ打ち出すだけでは差別化はできない。アメリカの例を出さずとも、アニメファンを取り込んだ「聖地巡礼」など、ポイントやターゲットを絞った地域PRの効果の高さは実例がある。特定ターゲットへの訴求は、支出の高い付加価値消費者を取り込めるだけでなく、その他のマス層への認知拡大のきっかけにもなる。万人受けする「お国自慢」を声高に叫ぶのではなく、一部の人に熱烈に受け入れられるメッセージを送ることが効果的なPRに繋(つな)がる

金田明浩 ニューヨーク駐在

アメリカでは州名をアルファベット2字で略称します。MI(ミシガン)、MO(ミズーリ)、MS(ミシシッピ)が私の中でいまだ難問です。「M」が多くてややこしいと感じますが、外国人からしたら日本も「山」や「川」の県が多くてややこしいのかもしれません。

Page Top