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読売新聞 海外駐在員リポート

from Europe

「テロ」と「ワイン」が教えてくれるもの

昨年パリでは二度のテロが発生し、今でも非常事態宣言が出されたまま、厳戒態勢が続く。1月のシャルリーエブド事件は「表現の自由」を脅かすテロであり、多くの仏人が結束し「Je suis Charlie(私はシャルリー)」を掲げたが、仏の子どもたちは何が起こっているのか理解できず、説明を求められた親や教師も正確に教えることは困難であった。そんな状況の中、若年層向け新聞メディアPlay Bac Presseは即座に立ち上がり、ジャーナリストやマンガ家を学校に派遣、教師をサポートし、事件の背後にある社会的問題を噛み砕いて教えた。この活動は昨年の世界新聞協会・青少年読者賞の特別賞を受賞し、仏人の非常時の結束力を再認識させることとなった。

同社は6~14歳を対象に、1日10分の新聞閲読の習慣を身につけさせるため、年齢ごとに3種類の子ども向け日刊新聞を、計15万部発行している。大手紙フィガロでさえ30万部を下回るフランスで、この部数は少なくない。今回の活動では、仏全体で1万5000校、教師全体の8割にあたる21万人が授業で取り扱ったそうだ。オンラインでも紙面を無料提供し、30万部がダウンロードされた。教育の現場で、タイムリーな新聞の情報、そしてジャーナリストやマンガ家自らの言葉に接した子どもには、忘れられない出来事として心に刻み込まれたはずだ。

さて、もう少し年上のミレニアル世代を見てみたい。仏の特徴を表す現象の一つに「若者のワイン離れ」がある。米仏大学による共同調査では、(1)年老いた人の飲み物、(2)味が好きではない、(3)良いワインは高額、(4)複雑で分かりづらい、(5)飲酒運転廃絶などアンチアルコール活動の浸透、などが原因とされている。これは新聞を好まない若者の考えと共通する部分があるように思う。新聞に置き換えると(1)古くさい、(2)内容が面白くない、(3)購読料が高い、(4)記事が複雑で理解できない、(5)デジタルメディアが浸透、とワイン同様に考えている若者は少なくないだろう。新聞社で働く人間としては耳の痛い話ばかりだが、目をそらすわけにはいかない。

ミレニアル世代に関心をもたれるにはどうしたら良いか。多くの業界で抱える共通課題と言えるが、数々の調査結果からヒントが見えてくる。彼らはデジタル化の拡がりと共に成長してきており、大きく三つの特徴として「スマホを中心にマルチデバイスに毎日アクセス」「テキストよりも動画を好む」「情報はソーシャルメディアから」が挙げられる。例えば、ワインで考えると、専門家の推薦メッセージを動画で流したり、ブドウ生産の様子をソーシャルメディアで配信したりすることで若者にも愛着を抱かせることが出来るかも知れない。大手ブランドではこのような取り組みが既に見られ、例えば化粧品クリニークは欧米で若年層から支持されるSNS「タンブラー」と組み、インフルエンサーの推薦コメントを動画配信することで160万人の英国女性にリーチし、イメージアップに成功した。また、コーヒーのネスカフェは、ウェブサイトを「タンブラー」に集約する戦略をとっている。

今後、新聞社の戦略でも若年層対策として、動画によるニュース配信はもちろんのこと、マルチデバイス対応やSNS活用は必須であろう。欧米では編集長自らツイッターで情報発信するケースも見られる。加えて、教育現場との連携を図り、若者に新聞の利点を伝え続けることが、10年先の新聞ファンを生み出してくれるはずだ。

国友 俊 パリ駐在

今年のエイプリルフールで、パリ地下鉄の駅名をすり替えるドッキリキャンペーンが行われ、オペラ(Opéra)駅が“アペロ(Apéro)駅”にすり替わっていた。フランスでは夕食前に一杯お酒を飲むことを“アペロ”と呼ぶが、この文化を好む若者達が楽しそうにSNSでシェアしていた。

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