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砥川直大さん(アサツー ディ・ケイ コミュニケーション・アーキテクト局 クリエイティブディレクター)

「どこのピザ!? ドミノ・ピザ」や「JR九州KAGOSHIMA by ROLA」のキャンペーンを手がけてきたアサツー ディ・ケイのクリエイティブディレクター砥川直大さん。子供が生まれたことがきっかけで、仕事観が大きく変わったという。

志事(しごと)を仕事に。
子供が生まれてから変わった“仕事”観。

── 学生のときに調理師免許を取ったそうですね。

学生時代に一人暮らしを始めたんです。それまでまったく料理はしていなかったんですが、一人暮らしでお金がないので自炊と調理補助のバイトを始めました。料理をしている人を間近で見ていたら、自分でもできそうだなと。それがきっかけです。

── 大学に通いながら専門学校に行った?

 調理師免許をとる方法は2つあって、専門学校を卒業するか、調理関係の仕事に2年以上従事してから試験を受けるか。それで、バイトを続けて試験を受けたんです。料理を本気で始めたら意外とおもしろくて、ものを作るみたいな感覚で料理をするようになったんです。

── おいしいものが食べたかったからじゃない?

どちらかいうとプラモデルや工作みたいな感覚です。もともと手を動かして細かいものを作るのが好きで、食べることより作るという行為が楽しかったんです。「ごはん作るから」と自宅に友達を呼んで、僕は好きな料理を作って、友達はうまいものが食える。自分の好きなことをやって人が喜んでくれる。その両得感がすごく楽しかったですね。

── ADKに入って、最初は営業ですよね。

営業からやろうと思ったんです。学生時代は国際関係学を勉強していて、国連職員か外交官になりたいと思っていたんですが、周りを見ると勉強で勝負してもとてもかなわない。今思えばおかしな発想なんですが、それで自分の好きなことをやろうと思って始めたのが、料理ということもあったんです。自分が作ったもので人が喜んでくれる。そういうことが仕事にできたらいいなと思い始めて広告会社に入ろうと思いました。でも、美大を出ているわけでもないし、自分ができそうな営業を志望したということなんです。

── クリエイティブに移ったのは、社員旅行のために作った旅のしおりがクリエイティブの人に認められたのがきっかけと聞いていますが。

学生時代のノリでフリーペーパーの「R25」のパロディで旅のしおりを作ったら、それがアートディレクターの目に止まって「こんなのできるんだ、すごいね」と。実際に異動試験を受けてクリエイティブに行けるとは思っていなかったんですが、その言葉に背中を押されたところはあります。営業になって3年目でした。

── 子供が生まれてから朝型になったと聞いてますが。

実は、先日2人目が生まれました。結婚は2012年、32歳、最初の子ができたのは2013年です。妻も同じ会社で働いていて、僕より年上なんですが、子供ができたとき思ったのは「フェアな共働きをしたい」ということ。子供を産んだら彼女だけ時短になって、毎日、子供を保育園に迎えに行かなければいけないという理屈はないなと。仕事柄、割と時間が自由になることもあるので、週の半分は子供を迎えに行くようになったんです。それで、夕方6時に子供を保育園に迎えに行って、食事をしてお風呂に入って、一緒に9時に寝て、朝4時に起きる。相当苦労しますが、圧倒的に時間が限られるようになって、自分が今まで当たり前のようにやっていたことを見直すきっかけになりましたね。

── どのように変わってきたのですか。

独身時代はがむしゃらにどんな仕事もこなしていましたが、より自分や家族、理想とする社会のために自分のスキルを使いたいと思うようになりましたね。プライベートでNPOや市民運動などをプロボノで支援しています。

今はそのプロボノの考え方を会社に持ち込み、社員の知恵を無償で貸し出す『ブレーンタル』というADKのCSRプロジェクトも立ち上げました。個人としての“志事(しごと)”を仕事につなげるチャレンジです。

新聞のよさは、広告にエッジの立てられること

── メディアの使い方について聞きたいのですが、2013年のドミノ・ピザのキャンペーン「どこのピザ?!」では、テレビCMの前にダジャレサイトを立ち上げていましたね。

もともと「どこのピザ ? ! ドミノ・ピザ」というダジャレを最初に思いついて、プランニングする中で、テレビCMをオンエアする前に「社長がダジャレ好きで……」というストーリーが先にあったほうがおもしろいなと思ったんです。それでテレビCMをスタートする前に、社長がダジャレを毎日発表するスペシャルサイト「DAJARE-A-DAY ダジャレやで~」をオープンさせました。最初から「おもしろいメディアの使い方をしよう」というところから発想しているわけではなく、どうしたらおもしろい文脈が作れるかということを考えています。

── 昨年3月から始まった「JR九州 KAGOSHIMA by ROLA」は、モデルのローラさんが発信するインスタグラムが中心ですね。

これも、ターゲットの女性にどう刺さるか考え、僕らが広告を発信するより、みんなが好きなローラさん自身の目線で発信したほうが絶対おもしろいだろうという発想で作ったキャンペーンです。ローラさんのインスタグラムのタイムラインに鹿児島がいっぱい上がってきたほうが伝わると考えたんですね。

── キャンペーンサイトを見ると「ローラがJR九州の公式フォトグラファーに就任」と書いてある。あっけらかんとしてますね。

言い換えれば、ソーシャルメディアで行われていることをマスのレベルにまで持っていったら、こんなことができるという提案です。通常であれば撮影して編集してオンエアという流れですが、インスタグラムを使ったこのキャンペーンは、旅行中から発信を開始し、それだけで1.5万人のフォロワーを獲得できました。テレビCMや交通広告は、その後に、ローラさんが鹿児島を旅してインスタグラムで伝える様子を伝えるという建てつけにしているんです。ソーシャルメディアの即時性をキャンペーンに取り入れた新しい試みでした。

── そういう目から見て、新聞広告はどう見えますか。

CMやWEBキャンペーンなどをやっている身からすると、新聞広告は炎上しにくいところがいいですね。CMなどの場合はネットで炎上すると、オンエアが中止になることが多い。新聞広告は、“その日”にだけ掲載される。逆に言うと、「エッジの立った広告ができる」ということでもある。その価値は大きいなと最近思っていますね。

Naohiro Togawa

1980年生まれ。10歳から5年間アメリカで暮らす。筑波大在学中に調理師免許を取得。2003年アサツー ディ・ケイ入社。営業を経て、CMプランナーに。多くの外資系企業を担当。2014年クリエーター・オブ・ザ・イヤー・メダリスト。2015年にはアドフェストとスパイクスアジア審査員を経験。

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