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コラム数字を読む

(Fri Dec 05 12:36:00 JST 2014/2014年12月・2015年1月号 数字を読む)

Vol.6 田久保善彦 グロービス経営大学院 経営研究科 研究科長

Yoshihiko Takubo

慶應義塾大学理工学部卒業、同大学院理工学研究科修了。スイスIMD PEDコース修了。株式会社三菱総合研究所で、エネルギー産業、中央省庁(経済産業省、文部科学省他)、自治体などを中心に調査、研究、コンサルティング業務に従事。現在グロービス経営大学院及びグロービス・マネジメント・スクールにて企画・運営業務・研究等を行う。ベンチャー企業社外取締役、顧問、NPO法人の理事等も務める。著書に『ビジネス数字力を鍛える』『社内を動かす力』(いずれもダイヤモンド社)等多数。

Yoshihiko Takubo

『ビジネス数字力を鍛える』(ダイヤモンド社)

課題解決のために仮説を数字で検証する

  ビジネス上の課題解決を迅速に進めるためには、仮説思考が欠かせない。アタリをつけながら仮説を立て、数字をフルに使って検証する。重要なのは、完全に証明しきるのは不可能であるという前提の下、あくまで「正しそうか」を見極めるという姿勢を持つことである。仮説検証を進めるにあたっては、自分が所属する組織で、どのレベルの精緻さで、何が求められているかを見極め、それにある程度合わせながら活動することが大切だ。
  さて、実際に検証するにあたって、まずすべきことは、データ・情報の収集だ。大切なことは、常に仮説を忘れず、関連する情報に触れるという姿勢だ。仮説があるからこそ、データや情報に触れても頭のどこかに引っかかりが生じ、思考が回転し始める。収集する情報は、数字データに限らず、定性データ、現場に行って人の話を聞いてくるなど、バランス良く取得するのが望ましい。定性・定量情報の間を往復することで思考が洗練されてくることも多い。やみくもにデータ集めをするのではなく、仮説を意識しながらデータ収集を進めることを強く意識したい。

多数のデータを一つの数字に代表させる

  数字を分析するには、大きく二つの方法がある。一つは、数多くのデータを一つの数字に集約し全体像を浮き彫りにするという方法。これには平均、中央値、最頻値などの概念が含まれる。もう一つは、様々な角度からデータを切り取り、特徴をつかんでいく方法だ。これには、時系列分析、ヒストグラム分析、相関分析などの概念が含まれる。
  まず全体を一つの数字に集約する方法。これは、最もよく使われる分析方法の一つで平均値や分散を見るのだ。このようなデータの集合を一つの数字で代替して表現する数字を「代表値」というが、代表値は、その意味を考えると実は色々な意味で悩ましい。例えば、単純に、データを合計してデータ数で割り算をする単純平均の場合、個別のデータの重要性は全て等しいという前提に基づいていることをしっかり理解しているだろうか。喫茶店を経営していることをイメージしてみてほしい。単価500円のオレンジジュース、単価300円のコーヒー、単価600円のココアを販売している場合、商品の単純平均単価は、(500+300+600)÷3=467円となる。一方で、それぞれ、一日に10杯、20杯、5杯売れたとすると、客単価(販売数を加味した加重平均)は529円となり、全く違う意味の数字となる。
  何のための分析なのかという分析の目的をしっかり押さえておくことが何よりも重要なことは言うまでもない。また、平均で見るというのは個別データの個性は「全て無視」しようとしている営みであることから、今からやろうとしている分析は、代表値に語らせるべき話なのかどうかをそもそも吟味しなければならない。

数字を様々な角度で切り取る

  次に、様々な角度からデータを切り取り、特徴をつかんでいく方法を見ていこう。
  この方法は、大きく三つに分けることができる。一つ目は「並べて見る」。二つ目は「ばらつきを見る」。三つ目は「構成比を見る」だ。並べて見ることの代表例である時系列データについて考えてみよう。二つの図を見てほしい(図1)。おそらく、この図が同じデータを元に作られたものだとは思わない人が多いのではないだろうか。実はこの二つのグラフは横軸の縮尺を違えただけなのだ。一つは1981年から2011年まで、一つは2007年から2011年までの数字をグラフにしている。縦軸の数字は国内で生産された普通乗用車の数を示している。ここにデータを見る、分析する際の怖さがある。横軸の取り方で全く別の景色が見えてきてしまう。
  分析の最終段階は、その分析したデータから「解釈」し、意味のあるメッセージを出すことだ。日々仕事をする中で、会議に参加した際、配られた資料がそのまま読まれているという場面に遭遇することが、度々あるのではないだろうか。例えば、プレゼンテーションの資料に、グラフと共に「対昨年比で5%成長」と書かれているものを、「昨年に比べると今年は5%の成長を実現しました」とそのまま読んでいるような状況だ。書かれたものは目で追うほうが早いし、音にしただけでは付加価値は生まれず、「見ればわかるよ」という感覚だけを参加者に残してしまうことになる。

  例えば、あなたが勤務する会社と競合しているファストフード店が、図2のような出店ペースで店を増やしていたとしよう。
  この数字から何を読み解く=解釈するだろうか。「4年間で店の数が600店舗増えた」というかもしれない。しかしこれは単に引き算をしただけだ。「1年間に150店舗の店、つまり2~3日で1店舗をオープンしている」というかもしれない。これは引き算の後に割り算をした結果出てきただけで、事実の域を出ていない。何かほかに考えられることはないだろうか。
  出店するとはどんな営みだろう。店を出すためには、概ねどのあたりの地域に出すのかのアタリをつけ、地域の交通量(歩行者の数など)の調査をし、具体的な不動産を探し、その上で契約、内装工事、外装工事、什器設置、従業員トレーニングなどをしなければならない。これをコンスタントに超高速に展開するために不可欠な要素はなんだろう。そう、「高速店舗展開ノウハウ」、「キャッシュ」、「実行する人」、この三つの要素は不可欠だ。つまりこの競合は高い確率でそれらを具備しているであろうことが解釈できてくる。自社の状況と比較しつつ、こんな競合があなたの店の近くに出店してきたらどうやって戦うのか。こんなプロセスを踏みながら、段階的に考えを深めていくのが真の解釈だ。繰り返しになるが、解釈こそが付加価値を生むのだ。

数字を解釈する際の注意点

  実際に数字を解釈する際には、1. 差に着目する、2. 異常値や変曲点に注目する、3. 矛盾や第三因子を考える、4. 定性情報にも気を配る、などに注意するとよい。

1. 差に着目する

  まず着目すべきは、「差」である。目標値との差、ベンチマークとの差、過去との差など現状を深く理解するために、何らかの差を発見し、そこから考える癖をつけるのだ。自分自身が深く理解しているビジネスに関する数字をいくつか覚えているだけでも、その数字との差を見ることから、理解が深まったり、逆に違和感を覚えたりし、深い解釈が生まれる可能性がある。

2. 異常値や変曲点に注目する

  データ分析をしている中で、直感的に理解しがたいグラフ上のある場所にデータがプロットされると、異常値として棄却してしまう人が多い。しかし、そこを深掘りしてみることから深い解釈が生まれることもある。異常値と思われるデータを外して解釈するのと、外さないで解釈するのとでは何が違うのか、そんなことを是非考えてみてほしい。また、時系列のデータなどを見る場合には、変曲点、つまり上向きから下向きへ(またはその逆)に変化のトレンドが変わるタイミングに注目するのも解釈を深めるポイントだ(図3)。

3. 矛盾や第三因子を考える

  相関を計算すると、因果関係がないにも関わらず高い数値になることがある。ソフトクリームの販売とビールの販売の相関などの事例はその典型例だ。そこには気温や湿度という第三因子が介在しているが、そこに気がつかないで解釈をすると怖いことになる。例えば、自社製品の売り上げが落ちた理由として、競合製品の台頭が挙げられるなどのことは多いが、よくデータを見ると競合商品が発売される前から売り上げがダウントレンドになっており、少なくとも初期の売り上げ減少は競合製品では説明がつかないなどのことはよくある話だ。表面的に気がつく理由のほかに、何かないかという疑問を持ち続ける姿勢が大切だ。

4. 定性情報にも気を配る

  数字データを扱っていると、定性情報に目が届きにくくなりがちだ。まず自ら現場に行く、顧客の声を直接聞く習慣を何よりも大切にしてほしい。また、現場をよく知っている人の話を聞いてみることも、よい解釈のためには必須だ。自分の体験、そして詳しい人が感じていることと、数字から得られた解釈が整合するかどうかを確認するのだ。時に、定性データは主観、直感などと上司から言われ、重きを置かれない場合もあるが、自信をもって活用してほしい。

News & Report

〈2016年12月・2017年1月号 ojo interview〉

山根 哲也さん(ライトパブリシティ コピーライター)

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