マーケティングの新レシピ

2010.2・3/vol.12-No.11・12

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「消費冬眠」は終わりますか?

 春を告げる暦の節目は立春であるが、実際には寒さのピークであり、なかなか春を感じることはない。
 むしろ、およそ1か月後の「啓蟄」の頃の方が春を感じるにはふさわしいかもしれない。
 啓蟄というのは二十四節気の一つ。冬籠りをしていた虫が地上に這い出してくる、という意味合いである。今年は3月6日だ。
 虫に限らず、季節が暖かくなれば活動が始まる。ところが、天候が不順になれば狂いが生じてくるだろう。
 ここ1年あまりの国内消費の活動を見ていると、「長すぎた冬眠」が続いてきたように思える。急速な経済後退で萎縮した心理は一気に低価格志向に走り、不要不急な消費はすべて「ムダ」ということになってしまった。
 さて、この「消費冬眠」はいつまで続くのか?啓蟄の頃には、動き始めるのだろうか?

ヒシヒシと感じる節約感覚

 不景気の証左はデータ的には山ほどあるけれど、「ああこんなところも」という実感を探っていくと意外な兆候が見えることもある。
 今回は身近なスポーツをテーマに考えてみよう。
 私が気になったのは昨春頃から近所のフィットネスクラブが、なんとなく空いてきたことだった。
 関東を中心にいくつもの店舗を展開している大手なのだが、特に平日の昼間に来る客が減少しているように感じた。とりわけ高齢の男性を見る機会が減ったのだ。
 月あたり数千円から1万円を超える出費である。生活不安を感じた人々が節約に動いたのだろう。街をウオーキングすればいいではないか。そう思うのも無理はない。
 そのうち入会キャンペーンなどをいつになく派手に始めたのだが、昨秋、小さな張り紙が目に留まった。ランニングマシーンなどに設置されているテレビモニターのチャンネルが減るというのである。MTVやスポーツチャンネルがなくなったのだ。
 有料チャンネルを減らせば経費節減にはなるけれど、サービス低下は否めない。それでもそうした決定をしたことは「かなり厳しい」ことが想像できる。
 しかし、こうした現象はあくまでもミクロの観察結果である。私の近所だけの事情かもしれない。
 何か客観的なデータはあるのだろうか。

そろそろスタンバイの時期?

 経済産業省が調査・発表している「特定サービス産業動態統計調査」というデータがある。これは、文字通り特定のサービス産業の売上高などを月次で調べており、経済政策立案に反映させることを目的にしている。
 この調査は毎月行われているだけでなく、たいそう業種も広い。サービス業なので消費マインドの状態の「ブレ」を把握するためにも貴重なデータである。執筆時の最新データは昨年10月で少々古いが傾向を見るには十分である。
 調査データの「フィットネスクラブ」の売上高推移を見てみよう。4月からマイナスに転じたままで浮上の気配が見えない。新生活の節目で得た入会者を上回る退会者がいたということだろう。
 これでは経費節減を迫られるのも分かる。実感は正しかったのだ。
 さて、それでは他のサービス産業はどうだろうか。概して厳しい数字が並んでいるが、ふと気になるデータがあった。
 まず、ゴルフ場である。
 想像通り、厳しい数字が並んでいる。ゴルフが「贅沢なスポーツ」というイメージは薄れてきてはいるが、それ相応のコストがかかることはたしかだ。昨年の経済状況を考えれば致し方ないだろう。一部の月を除いて前年割れである。
 その一方で、「アレッ?」と思った数字がある。
 ゴルフ練習場の売上高推移だ。
 こちらの方も年の前半はやはり厳しい。しかし、7月辺りからは対前年比でプラス基調に転じている。
 これをどう捉えれば、いいのだろうか。
 仮説は幾つか立てられる。まず、昨年前半は「練習場に行く気もしない」ほどマインドが冷え込んでいたということだ。それに比べると「ボチボチ練習には行ってみようか」という気になっているのかもしれない。
 また、石川遼に代表される若手選手の活躍も影響している可能性がある。親が子どもを練習場に連れて行くようなケースも増えているのではないだろうか。
 いずれにせよ、「ゴルフ練習場」に人が増えていることは「その次」につながる可能性がある。もう少しすれば「そろそろコースに出ようか」という人も増えるかもしれない。また、自分の子どもに用具を買おうという人も出てくるだろう。
 消費冬眠を抜け出して、いわば「アイドリング」に入っているような兆候はほかにもありそうだ。「外はそろそろ暖かいよ」というメッセージを送ることが大切な時期に来ている。それもまたマーケティング・コミュニケーションの重要な役目だろう。

図 各施設の売り上げ推移(対前年比)
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