特集 2007.1・2/vol.9-No.10・11

Googleと広告のこれから
Googleが広告で目指しているものは何か

 Googleのトップページには、広告が掲載されていない。それがGoogleの広告に対する考え方を象徴しているように思える。
 検索サイトとして、日本国内の利用者数ではヤフーに次ぐものの、世界全体ではユーザーから圧倒的な支持を得ているGoogleは、ロングテールと呼ばれる新しい広告市場を開拓、業績を伸ばしている。アメリカでは、新聞広告仲介サービスの実験も進行中だ。
 「Googleが、広告のこれからに与える影響は何か」という視点から探った。


 Googleはインターネット検索で世界最大の企業だ。2006年の売上高は前年同期比1.7倍の約1兆2800億円。その99%は広告収入によると言われている。「アドワーズ」と呼ばれるGoogleの広告とはどのようなもので、何を目指しているのか。執行役員 営業本部長の佐藤康夫氏に聞いた。

――Googleの日本オフィスが開設したのは?
 Googleは、ラリー・ページとサーゲイ・ブリンがインターネットの検索サービスを提供することを目的として、1998年9月カリフォルニア州メンロパークに作った会社です。
 日本語のサービスを始めたのは2000年8月で、日本からのアクセスが多いことから、広告セールスがビジネスになるのではないかということで小さなオフィスを開設した。それが、2001年8月です。
 Googleは何でもそうですが、最初は割と小さく始めて、トライアル&エラーで様子を見ながら大きく育てていくやり方をします。
 広告セールスを行う海外オフィスは日本以外にもヨーロッパなど世界数十か国ありますが、そのほかに、エンジニアオフィスが世界各地にあります。Googleのミッションは、「世界中の情報をオーガナイズして、世界中の人たちに使っていただく」という非常にシンプルなものです。そのミッションを実現するためにはタレント、才能のある人たちに働いてもらう必要があります。才能ある人たちは、アメリカに限らず世界各地にいるわけで、そういった人たちに働いてもらうためにオフィスを世界各地に今、作っている最中なんです。

グーグルは情報を探すツール

検索窓しかないシンプルなGoogleのTOPページ
――世界中の情報をオーガナイズする、とは具体的にどういうことですか。
 もともとGoogleは、オンライン上にあるテキスト情報をできるだけすばやく探せるようにしようということで始まった会社ですが、情報にはいろいろな形があります。
 同じテキスト情報でも、ニュースサイトのように鮮度が大事な情報もあれば、学術論文もある。静止画も動画もあります。しかも、新しい形式の情報も、その量もどんどん増えています。大企業から個人のサイトまで、オンライン上にはコンテンツは無数にあるわけです。また、オンラインだけでなく、例えばアメリカのNASAが持っている宇宙関連の情報や世界中の図書館が持っている蔵書などオフラインの情報もたくさんあります。これらも、Googleのオーガナイズの対象です。
 こうした情報をできるだけ早くユーザーが探せる“ツール”をいろいろ作っていきましょうというのが、Googleがしようとしていることです。それが例えば、ウェブ検索であり、メール検索であり、Googleマップと言われる地図検索ツールでありということです。アドワーズも、その一つです。

――アドワーズというのは検索連動型広告のことですね?
 検索連動型広告に限りません。誤解されることが多いのですが、アドワーズはGoogleの広告主向けプログラムの総称です。ちなみに、自分のサイトに広告を載せて収益を上げたい企業や個人向けのプログラムがアドセンスです。
 アドワーズには一般に検索連動型広告と呼ばれているものもあれば、企業や個人のサイトのコンテンツの内容に合わせて表示されるものもあります。

――そのアドワーズがツールというのは、どういう意味ですか。
 それについては、順に説明した方が理解しやすいと思います。まずGoogle自身では、発信する情報やコンテンツは基本的に所有しません。そこがヤフーなど「ポータルサイト」と大きく違うところです。
 Googleとポータルサイトでは、広告のビジネスモデルが違います。ポータルサイトのように自分でコンテンツを作り人を集めるのは、どちらかというと新聞やテレビ、雑誌と同じビジネスモデルだと思います。「このページは何人ぐらい見ているから、広告を何日掲載していくらです」というのが、例えばポータルサイトのバナー広告で、基本は従来の広告と同じです。
 ところがGoogleの場合は、ウェブ検索もユーザーが、あるキーワードで検索して初めてページができる。その検索結果と同じページに、そのキーワードで登録された広告主の情報を表示するのがGoogleの広告です。
 例えば、「ハワイ旅行」「格安ハワイ旅行」などのキーワードでウェブ検索する人は、ハワイ旅行を探している人がほとんどのはずです。そういう人には、検索結果を見てもらうよりも、「ハワイ旅行3万円」と出ているほうが情報を早く提供できます。ユーザーにも役に立つし、広告主にも役に立つ情報を提供しようというのが、Googleの広告、つまりアドワーズの基本です。
 Googleがしようとしていることは、情報とユーザーをできるだけ早く簡単に正確に結びつける方法を提供することです。その広告サービスであるアドワーズも同じで、ある情報を探しているユーザーとその情報を提供したい広告主を結びつける仕組み、ツールなんです。

広告のビジネスモデルの違い

――ポータルサイトとGoogleの広告の本質的な違いはどこにあるのでしょうか。
 ポータルサイトは、ユーザーをたくさん集めて、かつ滞在時間を増やして、広告を見せるというビジネスモデルです。だから、広告料金の基本は広告の表示回数、インプレッションになっています。
 ところが、Googleの場合、ユーザーは目的を持って訪れる人がほとんどです。ユーザーに早く情報を見つけてもらって、できるだけ早くそのサイトに行ってもらうことがGoogleの役割です。ですから、Googleの広告はクリック課金が原則で、広告が表示されただけで課金されるケースはほとんどありません。
 Googleの滞在時間が長いということは、Googleにとってハッピーなことではありません。Googleでは、0.5秒以内にサイトを出ていってくれたら、それはGoogleがすばらしいサービスを提供していることだと、よく言われています。要するに、一発で「これだ」という検索結果を出して、そのサイトに行ってもらうのが、Googleのサービスの本質です。
 しかも、ある目的を持って情報を探している人だけにしか広告が表示されないので、費用対効果、広告効果が高い。既存のビジネスモデルでは電話帳広告に一番近いと思います。例えば、引っ越しの時に「2トントラックいくら」という広告を見て電話をしますが、アドワーズもそれとよく似た使われ方をします。
 Googleの検索結果画面の1ページにアドワーズは8件表示できるのですが、その最初の1ページが全部埋まったのは、02年の秋でした。また、その記念すべきキーワードが、実は印鑑、ハンコです。
 印鑑は、急にそれが必要になった人以外、あまり検索しません。そういう人にとっては、検索結果を見ていくよりも、「即日配達OK」「チタン製」「創業200年」というアドワーズの情報のほうが利用されるケースが多いと思うんですね。
 通常の広告の場合は、だれにメッセージを届けるかが先にあってメディアを選ぶ形だと思いますが、ぼくらは「ユーザーの求める情報と広告主が出したい広告情報をうまくマッチングさせること」を広告事業としてとらえているのです。

広告の枠を広げるアドワーズ

――Googleの広告は、よく個人のブログにも表示されていますね。
 先ほども少し触れましたが、Googleは、広告事業をGoogle単独ではなく、個人や企業のサイトにまで広げています。これを「Google・アドネットワーク」と言っているのですが、個人のブログサイトから新聞社のような大きなサイトまで網羅しているところも、Googleの広告の特徴だと思います。
 サイトに表示される広告は、広告主にいくつかのキーワードをあらかじめアドワーズに登録してもらっています。コンテンツに表示されるアドワーズは、その登録したキーワードに関連した事柄が起きたというチャンスを的確にとらえて広告を出せる仕組みです。
 しかも、アドワーズ全体に言えることですが、申し込み後もオンタイムで広告の内容やキーワードを変更できる。今までの広告の出し方とはだいぶ違うんですね。

――モバイルにも広告が出せるようになった?
 モバイル広告は、日本から始まったサービスです。3社のキャリアーに対応する検索サービス自体は以前からできていたのですが、06年7月から検索結果の画面に広告を表示しています。
 02年にGoogleがアドワーズを始めたときは、検索をするサイトはポータルサイトが基本で、インターネットの中で非常に限られた数しかありませんでした。Googleのアドワーズも、自社サイトの検索結果に表示されるテキスト広告からスタートしました。
 それが、「コンテンツ向け」が出来たことで、その枠が広がったわけです。アドワーズが表示できる場所が、インターネット上のほとんどすべてのページになり、さらに最近は携帯電話などモバイルも対象になってきた。アドワーズの対象、表示するところがどんどん増えているというのが現状です。

――アメリカで始まった新聞広告の仲介サービスの実験も、その延長線にある?
 今は、導入に当たって段階を踏んで慎重にテストしているところです。
 従来の広告ビジネスが成り立っている中にGoogleが入ることは、媒体社や広告主、広告会社にとってメリットがあるのか、あるいはユーザーにどういうメリットが生まれるのかを、例えばシカゴの不動産新聞やマニア向けのパソコン紙などを使って、まずテストしました。その結果、だれにとってもメリットがあることがわかってきたので、今度は、もうちょっと大きい新聞でテストしてみましょうというのが、今の段階です。
→ojo 2006年12月号From Overseas NewYorkを参照

――否定的な受け止め方もされている?
 これまでの新聞広告の取引とは考え方が違うので、それはありますね。ただ、アドセンスの「コンテンツ向け」が出てきたときにも、最初は同じような受け止められ方をしました。しかし、実際に使われる中で、そのメリットが理解されて来たと思います。
 サイトの場合、トップページの広告スペースに一番高い価値があると考えられていて、そこから売れていくのが一般的です。そうすると、下の階層の広告スペースはなかなか埋まらないことが実際は多いんですね。
 だから、言い方を変えると、「コンテンツ向け」のアドセンスは、「売れない広告スペースを金と手間をかけてセールスするぐらいなら、そこはGoogleにください。ページの内容に合った広告をぼくらが見つけます。その収益は分け合いましょう」ということなんです。「レベニューシェア」という考え方です。それがサイト運営者からも評価されて、「Google・アドネットワーク」がどんどん大きくなっているというのが現状です。
 新聞広告の仲介も同じ考え方です。新聞広告の中で、売れ残ってしまう広告スペースがあるのなら、それをGoogleの仕組みを使って売り、「レベニューシェア」しましょうということなんです。

――掲載料はオークションで決められる?
 アドワーズの普及も、オークションで広告料金が決められるようになったことが大きいと思います。取引がシステム化したことで、マーケットが大きく広がりました。もちろん、どの広告主を選ぶかは新聞社側に委ねられますが、新聞広告も掲載面によってはそういう形の方が新しいマーケットを開拓することにつながると思います。

――Googleが広告スペースを売ると言うより、仕組みを提供すると言った方が近いかもしれませんね。
 どちらかというと、ぼくらはメディアレップに近い役割を担っていると思います。メディアを束ねて、広告主に広告を使いやすくする機能を提供しているということです。
 一方、広告会社に対しては、Googleは新聞広告も使える広告取引の仕組みを整えますから、広告キャンペーンを考えるにあたって選択肢の一つとして新しく加えてくださいということなんです。新聞広告の取引の一部をシステムに委ねることで、これまで広告会社が広告キャンペーンでオーガナイズしていたメディアの使い方とは違う、新しい使い方が生まれると思うんです。実現には、まだまだ越えなければいけないハードルはあると思いますが。

グーグルの広告サービスの今後

――今後、Googleの広告サービスはどういう方向に向かうのでしょうか。
 アドワーズとアドセンスに、当面は集約されますね。このバリエーションをどんどん増やしていくという考え方です。
 それから、先ほど言いましたが、日本市場に特徴的なサービスとしては携帯、モバイル広告があります。今までは公式サイトだけの検索だったのが、去年の夏からいろいろな検索サイトを連動する動きが出て来ています。公式サイト、勝手サイト、PCサイトを含めた検索サイトが出てくると、携帯で検索する意味が今までとは変わって来ると思います。実際、携帯の検索も最近急激に増えて来ています。これまでの検索はパソコンユーザーでしたが、アドワーズを利用する人も明らかに若い人たちが増えると思います。
 Googleは、「オープンソース」という考え方が強い会社です。サーバーに使っているLinuxをはじめ、さまざまな技術はインターネット上で無償で公開されているオープンソースをベースにできている。だから、自分の作ったものは、コミュニティーに返すというのが、会社のルールになっています。技術者が始めた会社ということもあり、それが会社が大きくなっても変わらず残っているところです。おもしろい技術ができたとき、それがお金になるかならないかより、公表しないことで科学技術の進歩が止まってしまうことのほうがマイナスだと考える会社です。だから、私たちが開発したほとんどのサービスは無料で誰もが使うことができますし、無理に広告を入れるようなことはしていません。
 Googleがあるサービスに広告を設定する基準は、それによって、広告主、サイト運営者、ユーザーそれぞれにメリットがあるかどうかです。そこに一番のポイントを置いています。

■ アドワーズとアドセンス
アドワーズとアドセンス
 Googleの「アドワーズ」は、広告を出したい広告主向けのプログラムの総称、「アドセンス」はウェブサイト運営者向けのプログラムの総称で、アドワーズを自分のサイトに表示してウェブサイト運営者が広告収益を得るためのものだ。
 以下のように、Googleの広告はさまざまなところに表示されるが、広告主から見れば、どれも「アドワーズ」広告で、「検索結果に表示されるもの」と「コンテンツに表示されるもの」の2種類に大きく分かれる。
 まず、Googleの広告はGoogle自身のサイトの検索結果にテキスト広告として表示される。それだけでなく、「アドセンス」に参加したパートナーサイト(個人・企業問わず)にもGoogleの広告は表示される。さらに、パートナーサイトに表示される広告は「検索向け」「コンテンツ向け」の2種類がある。Googleの検索窓は自由に自分のサイトにも付けることができ、そのページからサイト内検索とGoogle検索ができる。この検索に広告を表示するのが「検索向け」だ。また、「コンテンツ向け」は、サイトのコンテンツ内容をGoogleの検索エンジンが解析し、内容に合った広告を表示する。「検索向け」はテキスト広告だけだが、「コンテンツ向け」には静止画や動画のイメージ広告もある。
 ちなみに、Googleサイト、パートナーサイトを問わず検索結果に表示されるテキスト広告が、一般に「検索連動型広告」と呼ばれているものだ。
 最近は携帯電話を利用してGoogle検索を行っているユーザー向けに表示される広告も加わっているが、これも広告主から見れば「アドワーズ」だ。



Googleのサービスは広告にどんな影響を及ぼしているか
ADKインタラクティブ COO 横山隆治 氏
× Google 広告プランニングシニアマネージャー 高広伯彦 氏→


[寄稿] 大変革の象徴としてのGoogle
ADKインタラクティブ COO 横山隆治→
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