特集 2007.1・2/vol.9-No.10・11

クリエイティブが変える新聞広告
 2007年最初のojoは、「新聞広告にもっとクリエイティビティーを」という提案です。第一線のクリエイティブディレクター、アートディレクターに、新聞広告をもっと魅力的にしていくためのアイデアをいただきました。「もっとエンターテインメントを」「ジャーナリズムの視点を」「おもしろくなければ記事も新聞広告も読まれない」「いいクリエイターを使おう」「シリーズ広告の活用を」……参考になる話(少し耳の痛い話)満載です。

新聞広告に一流のクリエイティブを
●1954年生まれ。慶應義塾大学法学部卒。77年電通入社。28歳でクリエーティブ局へ転局。クリエーティブ局長クリエーティブディレクターを経て、2003年7月「シンガタ」設立。SUNTORY BOSS 、ANA「ニューヨークへ、行こう。」、「LIVE/中国/ANA」、TOYOTA-ECO-PROJECT、JR東海「そうだ、京都 行こう。」、三井不動産 芝浦アイランド島開発などを担当。カンヌ国際広告祭 金賞、TCC賞、ADC賞、ACC賞のグランプリほか多数受賞。

 これまで数々のメジャーな広告キャンペーンを手がけてきたシンガタの佐々木宏氏。芝浦アイランドやANAなど、シンプルで強く印象に残る新聞広告を数多くディレクションしてきた佐々木氏に、新聞広告を活性化する視点について聞いた。

――新聞広告活性化というテーマでお話をうかがいたいのですが、新聞広告はどうすればおもしろくなると思いますか。
 「新聞広告はどうしたら元気が出るか」という話が最近よく聞かれますが、その議論で欠落しているのはクリエイティブの視点だと思います。新聞広告を評価する軸に、おもしろいものを見つけようという視点がない気がするんです。
 例えば、アイドルタレントが出てカワイイというだけで、広告は注目される。やはり、あるターゲットには刺さるわけです。でも、新聞広告はそれを許さないところがあって、国会議員や学校の先生が集まって広告を評価しているような硬い感じがするんですね。

――広告が受ける、受けないという視点が、新聞広告には欠落している?
 一概に言えませんが、受ける、受けないは新聞広告にとっても重要です。広告は、通りすがりに見るものです。広告を見ようと思って新聞を買う人も、CMを見ようと思ってテレビを見ている人もあまりいない。きつい言い方をすれば、その中で存在感のない広告はゴミと一緒だと思うんですよ。いくら「私たちの主張を聞いてください」と言っても、新聞広告は次々とめくられたら終わりなんです。
 新聞広告は話題にならないかと言うとそんなことはなくて、過去を振り返れば、佐藤可士和さんのSMAPの広告や大貫卓也さんの豊島園の「史上最低の遊園地」、さらには、宮沢りえちゃんのヌード広告など、つまらないコマーシャルを何千GRP打つよりはるかに大きい効果を、たった1回の掲載で生んだ新聞広告があるわけです。そういう型を破った新聞広告を見つける評価軸を持たないといけないと思うんですね。
 広告をつくる側はテレビCMも新聞広告も同じ人間がディレクションしているのに、評価される軸がテレビ界と新聞界では全然違う。新聞はあまりふざけるとコードに引っ掛かりそうだからまじめにいこうか、となってしまう。硬いのが新聞、地味なのが新聞広告というのでは、今どきの広告には合わない気がするんですね。その辺が、実は新聞広告の抱えている根本問題だと思うんです。

15段広告は15秒コマーシャル

2006年3月3日 朝刊
――昨年3月のANAの「第1ターミナルへおひっこし!」ですが、佐々木さんの作られた広告ですね。
 この時は、新聞広告やテレビCMだけでなく、引っ越し用のガムテープや日清食品さんにお願いしてカップめんの引っ越しそばも作ったんです。

――そういう発想は、どこから出てくるのでしょう。
 ANAの成田の発着ターミナルが、これまでの第2ターミナルから第1ターミナルに変わる。でも、それを「未来への空港ができました」とやったら、広告としてチャーミングじゃないし、ANAらしくないですよね。

――引っ越しと言った方が、人の興味を引く?
 広告を大げさに考えるな、ということなんです。それは、広告を見る人の気持ちを考えればわかると思います。
 新聞は、朝、テーブルにみそ汁があって、その横に納豆があって、食べながらめくって読むものですよね。「この会社の社運がかかっている広告だから」という気持ちでは、だれも見ていない。
 「松坂が」「安倍さんの支持率が」という記事の中に、「私たちはお話ししたい」というような額縁に入った新聞広告が出てきてもあまり読まれないと思うんです。それよりは、ポスターに近い広告の方が目を引く。ぼくは、「15段広告は15秒コマーシャル」と以前から言っているのですが、15秒も新聞広告を読まれたら大したものだと思っています。新聞広告は、パッと見て、「あ、ANAか、なんだ、こりゃ……」で15秒、みたいな見られ方をしてもらえればいいかなと思っているんですね。だから、この広告で言えば、最低限、ANAがターミナル2から1に引っ越しすることだけはわかってほしいということです。
 それは、レベルを低くするということではありません。だれも、人の会社の広告を長い時間かけて読まないということなんです。読み手のことを考えずに、あれもこれもと詰め込んでいくと、平凡な自己陶酔型の広告にどんどんなっていくんですね。

新聞広告はキャンペーンの扉


――新聞広告の特性も広告を作る時には意識しますか?
2002年1月1日 朝刊
 「いい新聞広告とは何か」ということで言うなら、新聞というメディアに入ることを意識して作られた広告かどうかだと思います。新聞の場合は、特に世の中の動き、 時代の空気や場を読むことが大事です。でもそれは、言うほど簡単ではないことなんですけどね(笑)。ぼく自身も、謙遜でもなんでもなく、このごろはちゃんとしたいい新聞広告を作っていないと思っています。
 ぼくのつくった新聞広告の中で新聞ならではというものを挙げるなら、少し前の例になりますけど、ANAの、「ニューヨークへ、行こう。」ですね。9.11同時テロの後で、海外旅行は危険だ、ましてニューヨークは、という空気が流れていたころの広告です。
 これは、広告がジャーナリスティックな視点を持つことで、その日の記事といい意味でタメを張っているというか、存在を主張しているものになったと思うんです。ただ、こういう広告はタイミングもあって、そういつもできるわけではないですね。

――「LIVE/中国/ANA」のキャンペーンにも、ジャーナリスティックな発想を感じたのですが。

2005年3月26日 朝刊
 この新聞広告は、「テレビCMを見てください」というお知らせです。キャンペーンがスタートしたときは、予算が少なかったんですね。新聞広告をやるならテレビCMが1本になるという微妙な予算だったんです。
 それで、タレントに安いギャラで出演してもらい、制作費をかけないテレビCMは作れないかと考えたんです。思いついたのが、CMはタレントに撮ってきてもらう、スタッフはだれも付いていかないという仕組みです(笑)。テレビコマーシャル的な作りは一切しないで、投稿ビデオみたいな感じで、ただし、ちょっと有名な人に中国をビデオで撮影してもらってきて、それをテレビでオンエアし、ウェブでも流す。幸いこの企画に共鳴してくれるタレントが集まり、何本か作れたんですね。
 ただ、この時は中国の広告をやること自体が疑問視されるほど日中関係が最悪の時期でした。ぼくもかなり思い詰めて、当時の小泉首相や中国の駐日大使に、日中関係をこの広告で良くしたいので応援してほしいと本気で言いに行こうと思ったぐらいです。
 でも、確かにテレビを見ていると、毎日、投石騒ぎなんですけど、実際に中国に行ってみると、そうでもない。タレントの中には、楽しそうに買い物を楽しむビデオを撮って来てくれた人もいました。
 このキャンペーンの目的は、「本当の中国はどうなのか」を知らせることだったので、信頼性がすごく大事だったわけです。タレント自身が撮ったビデオと声を、その証拠として見せたかったんですね。それをお知らせするのは、もう絶対新聞しかないわけですよ。
 この場合、新聞広告は「テレビCMを見てね」という目的で使ったものです。当たり前すぎて日ごろは意識しないですが、新聞のテレビ面を見て、番組を見るという行為はつながっているわけです。雑誌やネットを見て、テレビを見る人は少数派です。新聞広告とテレビのつながりは、広告にも、もっと利用されていいと思いますね。
 もちろん同時に、新聞広告はキャンペーンの扉でもあり、全体が説明できる設計図にもなっているんです。

新聞広告はボディーブロー

――佐々木さんの芝浦アイランドの新聞広告は、不動産広告を変えたと思うのですが。
2005年2月25日 朝刊
 以前は不動産の資料請求といえば新聞広告でしたが、今はウェブになっている。このキャンペーンは、新聞とテレビの両方を使ってウェブへの誘導を試みたほぼ最初のキャンペーンだったと思います。
 新聞広告は6回やっています。従来の不動産広告のように、このマンションがいい、悪い、大手の物件だから安心とか、周りが水に囲まれていて眺望も抜群などと言う前に、今までの芝浦のイメージを変える必要があると思ったんです。成田からレインボーブリッジを渡って日本に初めてやってきたアメリカ人が、最初に「東京!」と思う場所みたいな。だから、これはマンションの広告ではなく、芝浦の広告なんですね。
 この新聞広告は、水色という色にポイントがあります。新聞広告で記憶に残るのは、「なんか水色の広告で、島って書いてあったな」「どこにできるんだ? 芝浦?」ぐらいで十分だと思うんです。

――新聞広告の効果はどうだったんですか。
 実際に購入を決めた方の話を聞くと、購入の決め手になったのはDMが最も多かったのですが、同時に新聞広告の認知率が非常に高かったんです。中には、広告紙面を取りおいている人もいた。ただ、ぼくがこのキャンペーンで新聞広告にこだわったのは、そういうダイレクトな反応ではなくて、新聞広告をやることで芝浦アイランドの本来の価値をきちんと認識してもらうことが、この物件の将来にとって大事だと思ったからです。ただ、それが浸透するには時間がかかる。そこは、我慢なんですね。
 結果的には、徐々に成約率も上がり、2棟目の発売では何百倍という倍率の部屋が出るほどの人気物件になった。新聞広告がボディーブローのように効いてきたと思うんです。
 日本人は、やっぱり新聞好きなんだと思うんですね。ほかのメディアは参考にしても、家族で何かを決める時には新聞に出ていたことが重要になる。テレビCMも「SMAPが出ていた、あれね」と話題になっても、買う、買わないの基準にはならないんです。

プレゼンの悪循環


――先ほど、新聞広告がキャンペーンの設計図になるとおっしゃいましたが。
 新聞広告から考えた方が、広告キャンペーンは考えやすいんですね。かなり前から広告キャンペーンはテレビ中心になっていましたが、少なくともプレゼンテーションは、少し前まではマーケティングの説明の後に、新聞広告の説明があって、そこで8割がたキャンペーンが決まっていたんです。その後テレビはタレントが出てきてこうです、みたいな決まり方をしていた。それが、次第にプレゼンもテレビCM中心になっていったんです。
 でも、テレビCMのコンテでキャンペーンを説明するのは難しい。例えば、ヤマサの「こんぶこんぶこんぶつゆ こんぶをぎょうさん使こてるの ヤマサ」というCMがありますね。でも、これが15秒で伝えられる内容の限界なんです。テレビCMは、人の情緒に訴えるという別の側面を持っていますが、伝えられる内容は意外と少ない。「うちの大切な商品なのにこんなところだけしか言えないの」みたいなことになってしまいがちなんです。
 新聞広告とテレビCMの両方があるとキャンペーンが成立するんだ、と感じさせることが以前はプレゼンの基本形でしたが、近ごろはオリエンテーションの段階から、予算の関係でプレゼンはとりあえずテレビの提案のみでお願いします、ということになってきたんですね。
 そういう中で、クリエイターも新聞広告を提案しても採用されないだろうという意識になり、クライアントもしっかりした提案がないから新聞広告をやる気が起きないという悪循環が起きている気がするんですね。

効き目のある新聞広告に

――その悪循環を断ち切るには、どうしたらいいのでしょうか?
 もちろん、世の中全体ではテレビの接触率が高いのは間違いないのですが、広告に効果を本気で求めるなら、その中身をもう一度見直してみるべきだと思います。
 ぼく自身は、テレビはマスメディアではないという意識があるんです。忙しいから自分があまりテレビを見られないこともありますし、企業で働いている人にも、そういう人は多い。テレビCMには、例えて言えば、ものすごく人がたくさんいるところで選挙演説をしたから、きっと私に票が入るに違いないと思うのと似たところがあると思います。ターゲットではない人たちもいっぱい見ている。効果を期待して間違いなく伝えるという意味では、テレビは非常にとらえどころのないメディアです。
 それに比べ新聞は、同じマスメディアといっても、もう少しセグメントされていて、ターゲットに広告が届く確度が高いメディアです。購読していれば1日1回は短時間でも見る。
 だからこそ、新聞広告にはクリエイティブが大事なんです。新聞は地味なメディアだからこそ、ピンクが目立つし、タレントの顔がアップだと目立つんです。そこに気づくべきだと思いますね。ファッション雑誌の広告をどんなに派手にしても、どこが広告なのかわかりませんが、新聞なら効果があるんです。

――タレントを使うことは安易だという人もいますね。
 でも、そのタレントがものすごく効き目があれば、もっと上手に使うべきだと思いますね。1999年の3月に各紙で展開した「ニッポンをほめよう。」というキャンペーンで、かなりの大物タレントに、広告の趣旨を話して出てもらったことがあります。
 テーマはお堅いし、60社による連合スタイルの「ザ・新聞広告」だったのですが、第1回の吉田茂元首相(孫の麻生太郎氏=現外務大臣にお願いに行きました)をはじめ、矢沢永吉さん、長嶋監督、爆笑問題、普通なら新聞オンリーの出演は難しい方たちが、ほとんどボランティアで出てくださいました。
 タレントではなく、キャラクターでも、色でも、エンターテインメントを新聞広告にもっと入れていくことでもいいんです。そのとき大事なのは、クリエイティブに一流の人を使うことです。
 最近の新聞広告は、キチンとしたレベルのクリエイターが作っていないのでは?という感じすらしています。または、宣伝部のオリエンテーション通りに「はい、コピー書きました」「はい、レイアウトしました」という感じのものが多すぎる。自分の仕事も含めて、長いこと、新聞広告で驚かされることがありません。新聞広告は決して安い媒体ではないのですから、新聞広告だけの専門のプレゼンテーションを求めるくらいでもいいと思うのです。
 いい新聞広告を作りたいと切望しているコピーライター、アートディレクターはたくさんいます。どうせ競合プレゼンをやるなら、テレビCMチームVS新聞広告チームでやってみるといいのではないでしょうか。場合によっては、CMプランナーが考えた新聞広告が秀逸になるかもしれませんし。
 ちょっと偉そうですが、新聞社自身も、新聞広告のエンターテインメント化、ジャーナリスティック化、クオリティーアップ化などさまざまな視点から、自ら、レベルの高い一流の制作者を抱えたり、提供したりしていくときではないかと思います。


コンテンツとしての新聞広告
TUGBOAT クリエイティブディレクター 岡 康道 氏
アートディレクター 川口 清勝 氏→


企業ブランドをつくる新聞広告
博報堂C&D 代表取締役社長/クリエイティブディレクター 柴田常文 氏→
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