特集 2006.10/vol.9-No.7

Web2.0時代に生きる新聞広告
 Webサイトを中心に組み立てられる広告キャンペーンも多くなった。そこでは、マス広告からリスティング広告、キャンペーンサイトへという展開が一般化しつつある。人々の情報行動、購買プロセスが変わる中で、インターネットとマスメディア双方の特性を生かした新しい広告キャンペーンのあり方が求められている。その中で、新聞広告の効果的な使い方とは何か。事例と最新調査から探った。

リスティング広告と新聞広告の相性

 最近の広告キャンペーンは、マス広告からリスティング広告、そこからキャンペーンサイトへ、という形が一般的になりつつある。KDDIと東京電力が6月からスタートさせた「ひかりone」キャンペーンでは、リスティング広告(注)への誘導に新聞広告が本格的に使われた。その結果は、どのようなものだったのだろうか。リスティング誘導における新聞広告の特長と最近のキャンペーンのあり方について、KDDIマーケティング本部宣伝部長の村山直樹氏に聞いた。

(注)リスティング広告:決まった検索キーワードを入力したときのみ表示され、ユーザーがクリックした時にだけ課金される広告のこと。的確なキーワードを設定することにより、サイトへのアクセス数を増やすことができる。1つのキーワードに複数の会社が登録した場合には、掲載スペースがオークション形式で売買される。

――今回の「ひかりone」キャンペーンでは、リスティング広告が使われていますね。
 そういう形が、今は当たり前になりつつありますね。我々もリスティング広告を利用したキャンペーンには、かなり力を入れています。ただ、従来はテレビスポットからがほとんどでした。今回のように、新聞広告を本格的に使ってリスティング広告への誘導を図ったキャンペーンは初めてです。

掲載日当日にアクセス増大


「ひかりone」キャンペーンサイトのトップページ
「ひかりone」キャンペーンサイトのトップページ
どっちを主人公にしたらいい? キャラクターへの人気投票を呼びかけ
どっちを主人公にしたらいい?
キャラクターへの人気投票を呼びかけ
検索窓に「ひかりone」と入力すると、関連サイトが上位に表示される
検索窓に「ひかりone」と入力すると、
関連サイトが上位に表示される
――実際の効果はどうだったのですか。
 今回は、新聞広告やテレビスポットで興味を持ってもらって、サービスの名称でもある「ひかりone」という言葉をポータルサイトで検索してもらうという形を取ったのですが、実際にやってみてわかったのは、新聞広告は出稿したその日にリスティング広告への誘導数が大きく跳ね上がることです。テレビのスポットでは、そんなに極端にアクセス数は増えません。スポットを流している期間は、アクセスが多い状態がある程度続いていますが、そこに新聞広告を出稿すると、アクセスが大きく増える。

――それは、新聞広告に特有のことなのでしょうか。
 今回のキャンペーンでは使っていませんが、たとえば、携帯のワンセグからのサイト誘導はしやすいと言われています。しかし、実際にやってみると、まだ誘導の手法が工夫されてないこともあると思いますが、ワンセグを見て興味を持ったからサイトを見に行くという人は思ったほどいません。それよりは、今回のキャンペーンのようにシンプルに興味を持ってもらって、サイトに来てもらう形の方が効果あるというのが実感です。
 また、雑誌も別のキャンペーンで、携帯版のショッピングモールへの誘導をQRコードを掲載して行っています。広告の情報量は極力少なめにして、興味を持ってくれた人にモールに来てもらうという形ですが、雑誌は回読率が高いメディアなので、発売日にアクセスが集中することはないですね。
 ところが、デイリーデリバリーで、部数も多い新聞は、出稿したその日にアクセスがポンと跳ね上がる。そこが他のメディアとの大きな違いです。1度アクセスした人がまたアクセスするリピートも含めて、かなり期待できると思います。

安心感と信頼感の醸成のために


――新聞広告を使うのは、最初の段階から計画されていた?
 そうです。1つは今回のクリエイティブディレクターをお願いした永井一史さんの新聞への思いがありましたし、「ひかりone」という新しいブランドの世界観を作るのに、新聞広告がどうしても必要だったということがあります。
 「ひかりone」の競合は「NTTフレッツ」ですが、インターネット接続サービスは目に見えないものですし、お客様もその差がよくわからない。差別化がむずかしい商品です。それを目に見える形で、どうやってイメージ付けするか、目から飛び込む強さが今回のキャンペーンには必要だったんですね。それが永井さんという世界観作りがうまい方をクリエイティブディレクターに指名させていただいた理由でもあるのです。

――単にイメージを伝えるということなら、テレビCMの方が向いていると思うのですが。
 今回の商品の世界観づくりになぜ新聞が必要かと言えば、圧倒的な信頼力、安心感を持っている「NTTフレッツ」に対抗しなければいけなかったからです。我々もそれに対抗しうる信頼感、安心感のある世界観を醸成しなければならなかった。その1つが、東京電力とKDDIというダブルブランドです。それと新聞という信頼感のあるメディアとの掛け算によって、NTTフレッツに対抗できるだけのブランディングが可能になると考えました。信頼感、安心感というのは、「ひかりone」というサービスの世界観をつくる大きな要素です。
 また、新聞広告を使ったもう1つの理由は、「ひかりone」のターゲットです。ブロードバンドの意思決定者は、家庭では30代、40代の男性が中心ですから、彼らがよく接する媒体は新聞だということもありました。

――木梨憲武、木村カエラのふたりを起用したのも、世界観づくりのキーになっていると思うのですが。
 信頼感、安心感の醸成だけでは「NTTフレッツ」の後追いになってしまいます。同じようなサービスかもしれないけれども、「ひかりoneって面白いよね」「楽しくなりそうだ」という評価をいただくことも「ひかりone」の世界観にとって重要な要素です。そのための起用です。

――キャンペーンでは、特設サイトを中心にふたりが協力して絵本を作る過程をリアルタイムで追っていますね。
 事前にシナリオがあるわけではなく、完全に同時進行です。サイトに行くと、2人の絵本づくりの過程が動画やブログで見られます。広告のキャラクターとして単にタレントふたりが並んでいるだけだったら、これほどサイトに誘導できなかったと思います。絵本を作る過程をキャンペーン化することで、サイトへの興味喚起も継続するし、アクセス数も増えたと思います。

6月8日 朝刊
8月28日 朝刊 16面(KDDI) 18面(東京電力)


楽しさの競争に限界はない

――新聞広告は立ち上がりは見開き30段、それ以降は「ページ送り」という形で掲載していますね。
 最初の30段の広告は、「ひかりone」という新しいサービスを提供するに当たっての我々の志を書かせていただいたものです。世の中に対して、我々がどういうサービスを提供しようとしているのか宣言する。それも、新聞広告の大事な役割だと思います。
 ただ、これを読者が見ても、楽しさまでは伝わらない。何か楽しそうなことを期待させてくれるのも「ひかりone」の世界観にとって重要な要素だと言いましたが、その世界観を伝えるのが「ページ送り」で掲載した新聞広告の役割です。「ふたりで何か楽しそうなことやってるな」と興味を持ってもらって、「ひかりone」とサイトを検索してもらう。そこに特化しています。
 そこで「ページ送り」という形式を選んだ理由の1つは、東京電力とKDDIのダブルブランドでサービスを提供するということを効果的に表現するためです。また、新聞は朝刊で40ページありますから、「ページ送り」にすると、目に留まりやすくなるということもあります。新聞広告の掲載時にはテレビスポットを流しますから、「そういえばテレビに出ていた。ちょっと検索してみよう」という気になる。また、東京電力さんのページには若干サービスの説明が入っていますが、全体にサービスの説明は極力省いています。

――今までのインターネット接続サービスは、スピードや接続料を強調するものが多かったと思うのですが、それを楽しさの訴求とサイト誘導に絞った理由は何ですか。
 先ほどの「ひかりone」の世界観、ブランディングとも関係するのですが、速さの競争や安さだけの競争には限度があるからです。数値化できるものというのは疲弊しますよね。でも、楽しいことの競争には限度がない。そこをどうやって表現するかだと思います。
 従来、プリントメディアは商品を説明するメディアという役割がありましたが、逆に説明を省いて、アテンションに特化するほうがサイト誘導の効果は大きくなる。広告に説明を加えすぎると、たぶんそこで完結してしまって、サイト誘導の効果が弱まり、ただの広告になってしまうと思うんですね。この新聞広告は、少し遊びの要素が入っている。サイト誘導には、それが必要だと思うんです。

――30段の広告にも特設サイトのURLが入っていますが、ページ送りとのアクセス数に違いはありましたか。
 最初の30段の広告よりは、はるかにふたりが登場したページ送りの方が多いですね。やはり、目的に合った表現や仕組みだと思います。そういう意味では、本当にクリエイターのかたの力量が出やすいキャンペーンだと思います。

新聞広告からリスティングへ

――今回のキャンペーンは、信頼感や楽しさを全体で醸成しつつ、サイトに行けば当然、「ひかりone」サービスの申し込みができるようになっている。広告とプロモーションの垣根がなくなってきているような気がするのですが。
 それだけでなく、最近の広告キャンペーンはパブリシティ戦略も一体化していますね。それでマスをどう打って、SP、店頭はどうするか、というように、トータルデザインが当たり前になりつつあります。

――広告のクリエイターにも、トータルなプランニングの資質が求められている?
 それぞれ別の専門家のアイデアの足し算では、今のキャンペーンは作れないと思います。ただのメディアミックスだけではだめで、クリエイティブのミックス、掛け算になっていないといけない。逆に言えば、基本をシンプルにやっていこうということです。その方が、全体の連携が強くなる。そのためにも、シンプルで強い商品やサービスの世界観を作れるクリエイターが必要になってきているのだと思います。
 たとえば、SPとの連動で言えば、我々の流通の前線でも競争が激しくなっています。家電量販店の店頭でいかに目立つか、いかに面積を取るかが重要になっています。そのときに、ブランドカラーで、目立ち具合も変わってきます。「ひかりone」を暖色系にした理由も、そこにあります。スピード感や先進性を強調したいということで、ひかりサービスは寒色系がよく使われてきました。そこに暖色系を使えば、店頭でも目立つ。新聞広告にも、テレビスポットにも、サイトにも、それは反映されています。

――ウェブの普及で広告キャンペーンの仕組みも変わってきた気がしますね。
 昔は最初にテーマとそのコピーがあって、次にメディアミックスで何をやるかというのがオーソドックスなやり方だったと思います。今は、ウェブで説明や申し込みをさせることを前提にキャンペーンが組み立てられるようになってきて、サイトに誘導するメディアをターゲットやエリアに合わせて選ぶことが重要になってきています。

――サイトに来てもらうことが、キャンペーンの前提になっている?
 前提ですね。これまでは新聞広告を出稿して、そこで説明して、たぶん届いただろう、たぶん来店してくれるだろうということでしたが、今はリアルタイムでアクセス数から申し込みまでわかる。我々のキャンペーンでは、必ずリスティング広告を活用し、キーワードを設定しますから、そのキーワードを媒体ごとに変えれば、媒体ごとの差もわかるわけです。

――逆にいえば、商品に関心を持ってもらい、リスティングに誘導させるためのマス広告は今後ますます必要になる?
 ポータルサイトのバナー広告は新聞社のライバルかもしれませんが、リスティング広告は仲良くすべき仲間です。これまで、インターネット広告という言葉でひとくくりにしてきたために、その使い方が見えないところがあったと思います。
 今回のキャンペーンでわかったのは、リスティングへの誘導力という点でも、新聞広告は今後も十分検討しなければいけないぐらい効果が出ていることです。リスティング誘導という視点から、メディアの位置づけ、価値を見直すべき時期に来ていると思います。




プラットフォーム化するWebとマス広告の役割
HAKUHODO DESIGN 代表取締役社長 永井一史氏→


住まいの購入パターンの変化と新聞広告
ミサワホームホールディングス 販売企画部 宣伝企画グループ マネージャー 原田 不二雄氏→

Webへのアクセスと新聞広告が果たす役割
ビデオリサーチ インタラクティブ 執行役員 営業企画本部本部長 五十嵐 達氏→


個人インフルエンサーが評価する情報源
ブルーカレント・ジャパン 取締役社長 本田哲也氏
バイスプレジデント 前川浩樹氏→
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