Creativeが生まれる場所 2006.10/vol.9-No.7

自慢話も友だちの話なら読んでもらえる
中村 禎 氏  クリエーティブディレクターの肩書だが、中村禎氏は根っからのコピーライターだ。2001年のKDDIの広告ではTCC最高賞を受賞しているが、そのころの本誌のインタビューで、「あのコピーを作った人ね」という代表作がないとこぼしていた。それは、プロのコピーライターの裏返しであるような気がする。今回のダイワハウスの広告でも、見開き30段、1500字を超えるボディーコピーを一気に読ませてくれる。

――7月の2連版広告はインパクトがありました。
 当初は15段の予定だったんですよ。ダイワハウスさんが民間企業として初めて実施した大規模震動実験の結果を新聞1ページで報告する予定だったのですが、その時撮影した写真を見ていたらどうしてもヨコイチで使いたくなって、それで勝手に30段でもプレゼンしたところ、やはり断然良いわけですよ。
 そこで、ダイワハウスさんも、「こっちのほうが全然いいじゃない」ということで、30段で(新聞掲載の)場所を取ろうと急きょなったんです。

動画より静止画の緊張感

――新聞広告だけの展開だったのですか。

 雑誌も1誌だけやりましたが、テレビCMは考えませんでした。建物が揺れている動画を見せられても、視聴者は別にフーンで終わってしまう。それよりも、このシーンとした緊張感のある静止画のほうが「何やってるんだろう」と思われるんですよね。周りの空間もすごく効いています。だから、この広告は30段で正解だったと思います。

――コピーもしっかりと読ませるものですね。

 これ、数えてみたら1500〜600字もあるんで、ちょっと長すぎたかもしれません。 基本的に僕、広告は読まれるものだとは思ってないんですよね。もちろん、読んでくれた人には「得したな」「良かったな」と思ってもらえるように一生懸命書きます。でも忙しい人は絶対読まないという前提で作っていて、読まなくても「ダイワハウスが大規模な実験をしたんだな」ということと「ちゃんと実験したから安心なんだな」ということが最低限分かるように作っています。「全部読んで初めて分かりました」ではダメ。全員が全員読むとは限らない。読んだ人にはもっと「すげぇー」と思ってもらえるように作っています。

――最後まで一気に読めるやさしい文体ですね。

 知らない人の自慢話を読んでも面白くもなんともないんですが、友だちの自慢なら読んでもらえますよね。
 ダイワハウスの研究所に濱さんという所長がいらっしゃるのですが、「濱さんが研究してこの家を作っているんだ」ということが分かってもらえたら、親近感を持って広告を読んでもらえるはずです。だから、今回のコピーも濱さんが照れながら自己紹介しているイメージで書きました。
 40年の長期修繕計画をテーマにしたマンションの新聞広告でも、バレリーナの小山さんとコピーライターが会話しているようなコピーにしています。
 やはり、誰がしゃべっているかが分からない文章って、読んでいても感情移入できないんですよ。だから、濱さんや小山さんが実際にしゃべっているように、途中ユーモアを入れたり、例え話にするなど工夫した結果、少しは最後まで読んでもらえるようになったかな、と思います。

――キャッチフレーズもボディーコピーも、赤ですね。

 ダイワハウスの広告の特徴を出そうと思って。この広告もシリーズ広告とは違うけど、せっかく新聞15段、30段を出すのだったら同じトーンでやっていけば、見る人は共通したイメージで、たぶん見てくれる。最近、ダイワハウスが赤い字でいろいろなこと言ってる、だけでもだいぶ違うと思うんですよ。

対象は日本語を読める人

――家を建てたい人向けに制作した広告なのですか。
 日本語を読めるすべての人々を対象に作っています。 世の中の人々は、家を建てようとしている人と、家を建てる予定のない人の2種類しかいないんですよ。どちらが多いかは自明ですよね。
 テレビ視聴者を対象とした調査データを見てみたら、家を建てるつもりのない人々の割合は90%以上だったんです。家を建てようかなって、本当に思ってる人々は3%から、多くても4%程度しかいないんです。その少ない人々のためだけにCMを打つ意味が本当にありますか?ということですね。
 逆に、そうではない人々が大勢いることを踏まえた上で広告を作る、ということの重要性は新聞広告でも同じです。住宅を建てようと思って「どこのメーカーにしようかな」と思っている人は百人のうち3人しかいない。家を建てる予定がないという残りの97人がこの新聞広告を見て、「ダイワハウスってまじめそうだな」と思えば、将来家を建てようと思った時や、友だちが建てる時に「ダイワハウスが良いみたいよ」となれば広告を出す意味が出てきます。そこを考えながら作っていかないと、失敗しちゃうのではないかな、と思いますね。
 それ以外にも、たとえば、まだ若い学生さんがこれを読んで、「ダイワハウスは良さそうな会社だから、就職するんだったらここがいいかな」と思うだけでもいいし、もしかしたら「ここは将来性のある会社だから株を買っておこう」ということで、ダイワハウスの株価が上がることもあるかもしれませんよね。

掲載日が楽しみな仕事

――中村さんにとって新聞広告とは何ですか。
 この間、一緒に仕事をしたデザイナーと「久々に掲載日が楽しみな仕事になったね」という話になったんですよ。そう言われてみれば確かにそうだなと思って。やはり作ったクライアントや、制作者たちが広告掲載日を楽しみにできる新聞広告の仕事はやっぱり良いものですよ。本当はどんな仕事でもそうあるべきなんだろうけど(笑)。
 今回の仕事は、なんかほんと初めて新聞広告を作った新人のころみたいな感じがして、自分でも幸せな仕事やってるな、と思いましたね。自分の家で新聞を1枚1枚めくって、ドキドキしながら「おお、出てた」って。会社で掲載紙やゲラで見るのではなく、家で見ることができるということも新聞広告の良いところですよね。

1月4日 朝刊 1月4日 朝刊
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